熊本市の熊本ルーテル学園神水(くわみず)幼稚園園舎が、16日の文化審議会で国の登録有形文化財答申に載せられた。
1929年に同園初代園長のエーネ・パウラス宣教師が設計して建設された洋風木造平屋建ての園舎は、現在でも教室や職員室、園長室として使用されている。天井を高くし開口部を広く取ったつくりは、夏でもクーラーを必要としないほど快適に過ごせる。
パウラス宣教師は、1919年ルーテル教会の宣教師としてアメリカより来日した。来日後すぐに関東大震災の被災者救済にあたり、東京本所柳原町に母子寮と乳幼児保護施設を開設。佐賀県や熊本県では、姉のモード・パウラス宣教師と共に幼児たちのために奉仕した。その後、千葉県でも乳児院など児童養護施設を開設し、生涯を通じて幼児たちへの献身的な奉仕へとささげた。
大学で社会事業を専攻していたパウラス宣教師。そこで学んだ家庭主義の小舎制養護の理論から、子供はあくまでも家庭的に養育すべきとの理念を掲げた。神水幼稚園でもその理念は随所にみられ、園児たちは温かみがあり開放的な教育を受けている。さらに、キリスト教主義にもとづいた同園の教育では、礼拝や聖書の話を通し園児たちの感受性を養っている。園舎は、そのような歴史の中でも温かみのある教育を行う貴重な場として、今回の登録にもつながった。