米ウェブサイト・ナショナルレビューオンラインは2日、「ゴードンカレッジへの迫害-伝統あるキリスト教教育が攻撃下にある」と題する記事を公開した。ゴードンカレッジは、米マサチューセッツ州にある1889年創立のキリスト教系大学で、宣教師によって建てられたという歴史的背景もあり、宗教色のかなり強い大学だ。
昨年7月1日、 ゴードンカレッジ学長のマイケル・リンジー氏は、カトリック慈善団体代表や米サドルバック教会の牧師として著名なリック・ウォレン氏らキリスト教関係者らとともに、オバマ大統領に個人的な手紙を送った。2013年11月に上院を通った「雇用における性的指向差別を禁ずる法律」のオバマ大統領による修正案第一稿に関係した内容の手紙で、連邦政府がキリスト教関係者に対しても性的指向による差別禁止を命令できるという項目の修正を願うものだった。
「雇用における性的指向差別を禁ずる法律」は、2013年11月に、エリザベス・ウォレン氏やマサチューセッツの若手上院議員ら左翼勢力の圧倒的な支持を得て上院を通過した。この段階では、宗教的免除がしっかりと明記されており、性的指向差別の適用範囲に宗教施設は含まれず、信仰心のある従業員を必要とする宗教的雇用主は幅広く保護されるという項目があった。しかし、それから8カ月の間に宗教施設に対しても性的差別禁止の行政命令を出すことができるように、宗教的免除の適用範囲が急激に狭められる提案がなされたのだ。
手紙の中で、リンジー氏は、すべての人が創造主である神の形に似せて造られ、尊敬し愛する対象であることを認め、この法律が意図するところの、性的指向による差別禁止には賛成していると書いた。計画されている行政命令を撤廃することを求めるのではなく、「宗教的免除」の付け足しをし、すべての立場が平等に扱われることを要求した。
多くの人々が支持する性的指向差別禁止が現在では最優先され、もはや信教の自由が認められなくなってしまったのではないかと、リンジー氏は懸念している。米国においてキリスト教高等教育を担ってきたゴードンカレッジは、このような反宗教的自由主義の波を受けて、その存在が脅かされつつある。
キリスト教のアイビーリーグのようなものがあるとすれば、ゴードンカレッジはイリノイ州にあるウィートンカレッジとともに、最上位に位置すると言われる評価を受けている大学である。福音主義的なキリスト教の風潮が強く、政治的偏りはほとんどないが、教授、学生ともにやや保守派。様々な点からして、改革派の攻撃の対象になりやすい。
特に、同大学が学生と従業員に対し、結婚を前提とする性的な行為は、ユダヤ教やキリスト教の伝統にのっとった1対1の男女関係に制限することを要求する方針を出していた点が指摘され、実質的に結婚外性交渉、同性愛行為を禁じているこの方針は現代社会にそぐわないとして、大学全体を攻撃している。
マサチューセッツ州セイラム市は、リンジー学長がオバマ大統領に手紙を送った8日後に、同市の所有するオールドタウンホール使用の長期契約を停止するという行動を取った。このことを皮切りに、翌月には、近くの学区の教育委員会が、ゴードンカレッジの学生を教育実習生として受け入れることを拒否。ゴードンカレッジの方針に同意しているしていないに関わらず、同大学に通う学生に例外は設けられていない。
さらには9月に、ニューイングランド学校大学協会(米国において、教育機関の質を認証する機関のひとつ)が、ゴードンカレッジの方針が同協会の公認基準に違反していないかを検討する会を開き、大学方針が差別的でないことを確かにするための1年の猶予を与えるという結論を出した。信仰に基づく方針を貫くか、公認であることを選ぶのか、選択が迫られている。
同協会公認でなければ、「大学」を名乗ることができなくなる。公認であるためには、多くの条件を満たす必要があるが、その中に性的な問題に関するキリスト教大学の宗教的方針に触れる項目はない。むしろ、同協会側が、キリスト教大学の担っている宗教的役割を尊重することが、教育省によって定められている。
もし、ゴードンカレッジが、リプスコム大学、ユニオン大学、リー大学、カベナントカレッジなど正統派的信仰を持つクリスチャンカレッジが多いテネシー州にあったとすれば、問題なく受け入れられたことだろうが、改革派勢力の強いマサチューセッツ州では、孤立状態にあり、一方的で理不尽な攻撃をされやすい珍しい状況にあると言える。
だが、「自由主義」という新しい改革派の流れが、保守的なキリスト教徒たちを追い詰める「宗教不寛容主義」に陥る可能性があるという問題のひとつの実例として、見過ごすことはできないのではないだろうか。