米オレゴン州グレシャムにあるクリスチャンの夫婦が経営するケーキ店は、彼らの宗教観を理由にレズビアンの結婚式用のケーキを焼くことを拒否したことで反感を買い、2013年に閉店を余儀なくされた。今月2日には、このケーキ店のオーナー夫婦は差別行為で有罪判決を受け、レズビアンのカップルに最高で罰金15万ドル(約1760万円)を支払う可能性が出ている。
訴えられたのは、同州にあるケーキ店「スイートケークス・バイ・メリッサ」で、同州労働産業局は、ケーキ店のオーナー、アーロン・クラインさんとメリッサ・クラインさんが、レズビアンのカップルに罰金を支払うことになると発表した。チャーリー・バー労働産業局長はUSAトゥデイ紙に対し、最高で15万ドルとなる罰金を支払うかどうかは、3月10日の公判で決定すると明かした。
2013年1月、ローレル・ボウマンさんは、自身と婚約者とのじき行われる結婚式のためのケーキを作ることを、スイートケークス・バイ・メリッサから断られ、またアーロンさんが、ローレルさんたちのことを「主に対し忌むべき関係」と言ったとされている。
この件があってから同年、ローレルさんは労働産業局に、この行為が2007年に制定されたオレゴン州平等法に違反していると訴えた。バー局長は、スイートケークス・バイ・メリッサのオーナー夫妻は信心深いが、ケーキ店自体は法的には宗教的な機関として認識されないと言及している。
「オレゴン州民は、性的指向や性的アイデンティティーに基づいて、何らかのサービスを拒否されることはありません。この法律(平等法)は、宗教的な団体や学校などにおいては例外が認められていますが、民間事業者が性的指向に基づいて差別をすることを許していません」とバー局長は言う。
アーロンさんは昨年秋、ワシントンDCで行われた有権者サミットのパネルディスカッションに出席した。この席でアーロンさんは、自分たち夫婦のキリスト教信仰や、過去にゲイの活動家たちが、スイートケークス・バイ・メリッサの顧客ら対し、もう彼らとは取引をしたくないと思うところまで攻撃的に嫌がらせを行い、閉店にまで追いやったこと、またこのケーキ店がメリッサさんにとってどんな存在であったかを語った。
「ボイコットや嫌がらせというのは、かなり率直に言うと、彼らが嫌がらせをしたのは私たちだけではなく、私たちと取引のあった他の結婚式関連の業者に対しても行っていたのです」とアーロンさんは聴衆たちに語った。「このために、私たちはもう取引できる相手を失ってしまい、閉店せざるを得ませんでした。このような状況の中にありながら、15万ドルという度を越した賠償金額を要求されるという危機に直面しています。今は、ただ私の基本的人権という立場で闘おうとしています。私の弁護士の言葉を借りて言えば、これは経済的なテロだと言えるでしょう」
「おまえたちは愚かな聖書バカで偽善者だ。おまえたちの子どもが病にかかり、ビジネスが廃業するよう、本当に本当に願っている」。これは、2014年6月に届いたある嫌がらせメールの内容を夫婦が読んだものだ。
アーロンさんは続けて、「まとめると、(私の妻は)2人の人が一つになることを祝うための芸術作品を生み出すことを、神様からの賜物として預かっています。そしてそれを使うことは、言わば、聖書がこうあるべきと言っていることのために使われるべきで、私は自分の良心として、そのこと(レズビアンの結婚式のためにケーキを作ること)に同意することができなかったというだけなのです」と語った。
2013年にこの夫婦が廃業を余儀なくされたすぐ後、アーロンさんは、彼がレズビアンカップルの時間を無駄にしてしまったことを謝罪し、また自身の宗教観から彼らが同性婚の結婚には関与しないことを説明した。「率直に言って、誰かを傷つけようとも、怒らせようとしたわけでもありません。これは、私がとても強く信じていることなのです」