香港の前司教が、増大する中国の影響力について警告し、民主主義のための「闘い」で団結するようキリスト教徒に強く求めた。
携帯電話をライト代わりにし灯す最近の街頭抗議で、「中環占拠(オキュパイ・セントラル)」運動では82歳と最年長の運動家の一人であるヨセフ陳日君枢機卿は、中国の影響力が日ごとに増大していると警告した。陳枢機卿は、もしこの英国の旧植民地における信教の自由が過去のものとならないようにするのであれば、キリスト教徒は自らの信仰のために闘う備えをしなければならないと語った。
2002年から2009年まで香港の司教を務め、何十年も民主派運動で活動してきた陳枢機卿は、「北京政府は香港に対する統制をますます強めており、憲法の約束について後退しつつあります」と述べた。
「危険を伴い犠牲を払う覚悟を決めるというこれらの努力、この勇気は全て、私たちがとても大切なことのために闘っているからなのです。もし(香港の指導者が中国政府によって選ばれるのであれば)・・・、その時、その人はきっと中央当局が命令することなら何でもやるに違いないのです」。陳枢機卿は「共産党は自分たち自身の権力以外に興味がなく、人民をみな奴隷にしてしまったのです」と付け加えた。
香港では、1人1票による開かれた普通選挙が2017年に行われることが予定されていたが、中国の全国人民代表大会(全人代)は8月、これに反する動議を承認した。香港の多くの人々は、この決定はいつの日か香港に普通選挙を認めるという北京政府の約束と矛盾すると考えている。
陳枢機卿は、何日にもわたって多くの学生らを含む群衆に演説をし、香港市民の声が聞こえるようにしたいという希望をもって街頭で夜を過ごした。
「それに(中国共産党は)腐敗もしているのです。賄賂という意味だけではなく、文化、生活様式を腐敗させてもいるのです。人々は物質主義的になり、利己的になり、不正直になって、奴隷であることを受け入れてもいいというようになってしまうのです」
「誰もが各自の分野で絶望的になるのです。このひどい文化は、ここ香港での教育や学校で私たちが徐々に教え込んできたことに反します。そして結局は、遅かれ早かれ、あるいはとても早く、私たちは中国のようになってしまうでしょうし、それはひどいものです」
上海生まれでありながら1949年の中国共産党設立を前に香港へ移った陳枢機卿は、民主主義と自由のために声を大にすることが、自らの指導的な立場と共に、自らのカトリック信仰において、不可欠な部分であると信じている。
「これは教会の教説にもあります。社会教説には、人々の参加が大切だと述べられています」と陳枢機卿は言う。
「私たちは人間の尊厳を大切にしているがゆえに、私たちは神の子たちなのであり、私たちが奴隷にされてしまうことがあってはならないのです。それが私たちが闘わなければならない理由なのです」
現在も残っている抗議活動家たちは、そのほとんどが学生たちだが、今はわずか200人〜300人と、今週になって中環占拠運動が衰えかけているように見える。しかし、陳枢機卿はまだデモをしている人々に帰宅するよう呼び掛けつつも、諦めてはいけないと語る。「今の時点では、学生たちは退却すべきでしょう。なぜなら退却することは大義名分を放棄することを意味しないのですから」
「私たちは自らの主張が正しいことを示しましたし、そしてなおも自らの要求をするかもしれませんが、少し休まなければ、まったく理不尽な人たちに対して理屈を通すことはできません。私たちは集まって次の歩みについて考えなければなりません。私は、今の時点で一つ重要なことは、この運動がもはや学生のものでもなければ、中環占拠運動の推進者たちのものでもなく、(香港の)全ての市民のものだということを理解しなければならないということです」
「もっと幅広い協議会や委員会があるべきでしょうし、そうすれば私たちの声はより強いものになり、そして私たちは計画を立てることができるようになるでしょう」「当面、この闘いは長期戦になるでしょうから、私たちは賢くならなければなりません」
陳枢機卿の主な関心は依然として香港における信教の自由であるが、それは中国政府が権力の要求を明らかにするにつれて、不安定な状態にある。
「今の時点で、中国政府はすでに教会から学校を経営する権利を奪い去ってしまいました。次の段階は、恐らく教会に重い税金を要求することでしょうし、そうすればそれは中国と同じことになってしまいます。それはあり得ないことでは全くありませんし、手遅れになる前に私たちは今こそ闘わなければならないのです」と陳枢機卿は語った。
「とても危険なのは、毎日、北京政府がその影響力を増していることです。もしかしたらもう手遅れなのかもしれませんが、でも少なくとも今はやっと市民が目覚めましたから。全市民が私たちと共にいるのです」