リベリアで活動中にエボラウイルスに感染した2人のクリスチャン宣教師の内の1人、ケント・ブラントリー医師が、ジョージア州アトランタ市にあるエモリー大学病院の隔離室から手紙を送り、自分の回復と、そして何より自分の信仰のため神に祈ってほしいと書いた。その手紙には、アフリカで死んでいく患者たちへの彼の奉仕についても書かれている。
「私はエモリー大学病院の隔離室でこの手紙を書いています。ここでは医師と看護師たちが最高のケアを提供してくれています」と、ブラントリー医師は書いている。彼は米キリスト教団体「サマリタンズ・パース」の宣教師で、2日にリベリアからアトランタ市のこの病院に送られた。
日に日に回復しつつあると報告しながら、ブラントリー医師は「ナンシーと私の回復のために祈ってくれた全ての人々に深く心から感謝している」と書いている。
キリスト教援助団体「サービング・イン・ミッション(SIM)」で活動しているナンシー・ライトボルさんも、エボラウイルスに感染した一人だ。彼女は、リベリアのモンロビア市にあるケース・マネジメント・センターでエボラ患者を治療するSIMとサマリタンズ・パースの合同チームの一人だった。彼女もまた、米疾病管理予防センター(CDC)と提携してエモリー大学病院に設置された特別チームのもとで治療を受けている。
「私の妻アンバーと私が2人の子どもたちと共にリベリアに渡ったのは、エボラウイルスと戦うためではありませんでした」と、ブラントリー医師。「私たちがリベリアに行ったのは、ELWA病院で神様に奉仕するようにと、神様が私たちを召命なさったと思ったからです」
ブラントリー医師は、神に従うと、しばしば予期せぬ場所に導かれることを学んだと語る。「エボラがリベリアで広がると、病院での私の通常の仕事は、増えていくエボラ患者の治療にますます傾いていきました。この恐ろしい病気のために命を落としていく何人もの人々の手を私は握りました。直接この恐怖を目の当たりにしました。今でも一人ひとりの顔と名前を覚えています」
ブラントリー医師の具合が悪くなったのは7月下旬で、その3日後、検査の結果自分の診断が確認されると、彼は直ちに自らを隔離した。「結果が陽性と出たとき、私はあらゆる理解を超える深い心の平安を感じたことを覚えています。神様が私に何年も前にお教えになったことを思い出させて下さいました。信仰のために必要なものは神が全て与えて下さると」
そして今、彼は全く違う場所で次のようにしたためた。「しかし、私の関心は今も同じです――神に従うことです」
ブラントリー医師は彼自身とナンシーさんの回復のため祈ってほしいと言い、さらに「それよりも重要なことだが、このような新しい状況にあっても、私たちが神の呼び掛けに忠実に応えられるよう祈ってほしい」と書いている。
ブラントリー医師はまだリベリアにいたころ、実験用の血清の投与を断っていた。「実験用の血清がリベリアに届いたのですが、一人分しかなかったのです。ブラントリー医師はそれをナンシー・ライトボルさんに与えるようにと言いました」と、サマリタンズ・パースのフランクリン・グラハム総裁は語っている。その後、ブラントリー医師にも血清が投与された。
またブラントリー医師は、彼自身のケアのおかげでエボラ熱から生き延びた14歳の少年から輸血も受けた。
一方、米国でエボラウイルスによる第2次感染が起きないよう、全ての予防対策が取られていると、エモリー大学病院隔離病棟の感染症専門医ブルース・リブナー医師が最近発言したとされている。ブラントリー医師がエモリー大学病院に送られてくることについて、リブナー医師は「重要なことは、この患者に関しては過剰な程の安全対策を取っているということです」と語った。
しかしながら、著名な神経外科医で2016年大統領選挙の候補にも挙げられているベン・カーソン医師は、ブラントリー医師とライトボルさんを治療のためにアメリカに移したことについてCDCを非難している。
「なぜエボラをわが国に持ち込むのか?問題が起こりえるし、また実際起こったことがすでに分かっているのに、なぜ自分たちを危険にさらすのか? 」と、ジョンズ・ホプキンズ大学病院小児神経外科の前部長でもあったカーソン医師は、ニュースマックスTVのインタビューで述べた。「エボラは恐ろしい病気です。治療しなければ、約90パーセントの人々が死に至ります」
米ビジネス・ウィーク誌によれば、エボラに治療法はないが、ブラントリー医師とライトボルさんに投与された実験薬「ZMapp」を開発したサンディエゴに拠点を置く会社マップ・バイオ医薬品(Mapp Biopharaceutical)などのいくつかの会社が、薬を開発して動物で実験を行っているという。
AP通信によれば、米政府と米軍が行った長期研究プログラムの結果として、ZMappは今年に入って早々、治療薬として候補に挙がったという。
ZMappは、エボラウイルスの一部にさらした実験動物から抽出した抗体が基になっており、エボラに対抗する免疫システム力を増進する効果がある。AP通信によれば、同社広報担当のデビッド・ハワード氏は、タバコの葉を使ってZMappを生産していると発表したという。ハワード氏は「タバコの葉がコピー機の役割を果たしている」と語り、ZMappはそのように抽出されているということだ。