日本最大のプロテスタント教団である日本基督教団は、1963年に定めた同教団の「宣教基礎理論」の改訂に向け、同理論の改訂第二次草案を公開した。同教団では、1970年の大阪万博開催を機に「教会派」と「社会派」に別れる内部闘争が発生した。今回の改訂では、この万博闘争以来の教団内部の混乱について、「『神との和解』という垂直的次元への言及が欠落していたから」と指摘。これまでの「宣教基礎理論」の二本柱の一つである「教会の体質改善」については、教会形成や伝道ではなく、社会改革に力点を置き過ぎたもので、「相当に大きな神学的問題がありました」「『教会派』と『社会派』との対立と相互不信を生み出す結果となり、教勢の低下を来しました」と、改訂の必要性を訴えている。
戦後、日本のキリスト教会には外国からの莫大な資金的支援があり、さらに戦後のキリスト教ブームにより受洗者が増加した。しかし、プロテスタント・カトリックを合わせても国内のキリスト教人口は1%にとどまった。こうした中、プロテスタント宣教100周年を機に、伝道不振解決のための研究が教団内でスタート。1961年には「宣教基本方策」を定め、それに基づく「宣教基礎理論」を63年に制定した。
この「宣教基本方策」と「宣教基礎理論」では、これまでの教会の「内向き」体質を批判し、激変する社会に対応する「外向き」の教会を重視した。だが、この「外向き」という主張は、「教会形成や伝道がその主要な内容ではなく、むしろ、社会や歴史への直接的な関わりや社会変革に力点があったため、やがて『教会派』と『社会派』との対立と相互不信を生み出す結果となり、教勢の低下を来しました」という。
改訂第二次草案では、「たしかに、『内向き』となる傾向は避けなければならないでありましょう。しかし、キリストの体としての教会にとっては、内向きや外向きである以前に、神との垂直的関係において教会が教会であるかどうかが、常に優先されるべきです」と指摘している。
日本基督教団は1998年の総会で、長期にわたって伝道をなおざりにしてきたとして、「21世紀の伝道に全力を注ぐ決意表明」を決議した。この反省と決意を踏まえ、「『宣教基礎理論』を改訂し、宣教200年を主の祝福と喜びの内に迎え得る伝道実践の展開を、主から求められています」としている。
「宣教基礎理論」の改訂についての議論はすでに数年前からあり、2011年の東京信徒会では改訂を主題にした講演会も行われた。
一方、「宣教基礎理論」の改訂作業は、16世紀のヨーロッパで起った宗教改革の三大原理である「信仰のみによって」「聖書のみによって」「全信徒祭司」に立ち返って行われているという。「この三大原理が共に活かされるように、説教の向上のための共同研鑽と、信徒が週日にも聖書を読む『聖書日課』とが、日本の教会の起死回生のための生命線だと考えております」という。
改訂第二次草案は、▼三位一体の神の招き、▼宣教の主体であられる神、▼宣教の内容、▼宣教の対象、▼宣教の方法、▼宣教の目標、の6大項目からなり、さらにそれぞれの大項目に小項目が続いている。