母の日は、一般的に、「日頃の母の苦労を労り、母への感謝を表す日」とされています。日本やアメリカでは5月の第2日曜日を祝いますが、スペインでは5月第1日曜日、スウェーデンでは5月の最後の日曜日に祝うそうです。
母の日は、アンナ・ジャービスが亡き母親を偲び、母が日曜学校の教師をしていた教会で記念会を持ち、そこで、白いカーネーションを贈ったことが起源とされています。アンナの母への想いに感動した人々が、母を覚え、母に感謝することの大切さを認識し、1908年5月10日に、教会に470人の子どもとその母親が集まり、最初の「母の日」が祝われました。そこで、アンナの亡き母が好きであった白いカーネーションを贈りました。
このことから、母親が故人である人は白いカーネーション、母親が健在な人は赤いカーネーションを胸に飾ることが習慣となりましたが、現在では、母親本人にカーネーションを贈る習慣へと変化してきました。この機会に母親を覚え、感謝する時がもてたら素晴らしいと思います。
聖書は、「あなたの父と母を敬え。あなたの神、主が与えようとしておられる地で、あなたの齢が長くなるためである」(出エジプト記20章12節)と語ります。一ヶ月後には父の日がやってきますが、聖書は、父親だけではなく、母親を敬うように教えます。それは、父母のためというより、父と母を敬えた人が幸せになり、長寿の祝福が与えられると聖書は語ります。
父母との関係は、一番最初の人間関係です。この人間関係がうまくいっているか、まずくいっているかで、他の人間関係に大きく影響します。父親とうまくいかない人は、父は権威を象徴しますので、自分の目上の人、力のある人、権威のある人に対するアレルギーを持ちやすくなります。
時々、牧師である私に、非常に嫌悪感を持つ人に会います。よく聞いてみると、お父さんとの関係がうまくいっていません。そして、男らしい男性をはじめ、公務員、警察官、政治家など、力や権威のある立場の人に対して嫌悪感を持ち、敵対しています。
ある日、父親との関係がうまくいかない男性にカウンセリングをしました。やがて、「父母を敬わないこと」が罪であるとわかり、父に対する憎しみを赦しに変え、悔い改めのお祈りをしました。祈りながら男性は、嗚咽しながら激しく泣きました。父親との人間関係が変わり、同時に、他の人間関係が改善され、トゲのない、謙遜で、明るく、ユーモアに満ちた方に変わりました。これが、この人本来の姿なのです。
これと同じように、母親とうまくいかない人も、人間関係に問題を抱えます。ある男性は、母親とうまくいきませんでした。その母親を通して満たされない愛を女性に求めたので、若い頃から、恋人がいない時期はなく、同棲生活もしました。やがて結婚をしますが、ほどなくして女性に逃げられてしまいます。現在では、3度の離婚歴があります。この方にもカウンセリングをしました。
母親を赦す祈りをするように促すと、「牧師先生、申し訳ないけれどそれだけはできないよ」と言うのです。しかし、最後は、渋々同意して、一緒にお祈りしてくれました。祈りながらその方を見ると、静かに涙を流していました。お祈りが終わると、あどけない少年のようなすがすがしい顔になっていました。
祈る前は、母親に虐待され、冷たくされ、見捨てられた思い出しかなく、母親を巨大な怪獣のように感じていたそうです。しかし、母親を赦し、悔い改めの祈りをしたら、急に母親が小さく感じるようになり、何で、この小さく弱い母親を憎んでいたのかを後悔し、「母親にあやまりたい。感謝を伝えたい。しかし、今さらそんなこと言えないよなあ」と、素直な気持ちを話してくれました。
聖書が、「父と母を敬いなさい」と語るのは、その本人の祝福のためにです。幸せで、長寿の祝福が与えられ、良い人間関係を築けるようになります。お母さんが健在なら、電話でもいいので、母親に対して感謝を伝えられたらいいですね。
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菅野直基(かんの・なおき)
1971年東京都生まれ。新宿福興教会牧師。子ども公園伝道、路傍伝道、ホームレス救済伝道、買売春レスキュー・ミッション等、地域に根ざした宣教活動や、海外や国内での巡回伝道、各種聖会での讃美リードや奏楽、日本の津々浦々での冠婚葬祭の司式等、幅広く奉仕している。日本民族総福音化運動協議会理事。
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