教会に出席し、最低週3回聖書を読むクリスチャンは、その習慣がない人たちに比べ、婚外性行為に陥る可能性が少ない。
米国福音同盟(NAE)と米統計調査会社「Grey Matter Research(GMR)」は2012年、最低でも月1回礼拝に出席する若者を対象にした調査を実施した。この調査結果によると、1007人の18~29歳の福音派の未婚者の内、性行為の経験があると答えた人は44%だった。
これに対して、クリスチャン専用出会い系サイト「Christian Mingle」が今年1月に出した調査結果では、最低月1回礼拝に出ていると答えた人は、女性は全体の50%で、男性は39%。回答者716人の内、婚外性行為をしてもよいと答えた人は90%に上り、楽しみだけのためにセックスをしてもよいと答えた人は61%にも及んだ。
聖書をどれだけ読んでいるかも、性行為の可能性に影響する。NAEとGMRの調査では、週に3回以上聖書を読むと回答した人の内、最近3カ月内に性行為をした人は20%で、一度も性行為をしたことがないと答えた人は60%に及んだ。聖書を読む頻度が少ない回答者では、最近性行為をしたことがある人は34%に上昇、性行為経験がない人は49%に減少した。
米テキサス州テキサス大学オースティン校社会学准教授、マーク・レグネラス氏は、この調査結果と同じ結論を出している。
レグネラス氏は「より多くの信仰習慣があるほど、キリスト教正統派社会が持つ性に関する基準への認識度が高まり、それに従おうとする意志も強くなる」と述べている。また、婚外性行為の数が多い理由として、性の節制に関する倫理観を強化する教会組織が少ないことを挙げる。
レグネラス氏は、「クリスチャンの性に関する理念を強化する教会組織が殆どない(皆無とも言える)ため、性に関する問題(態度や行動)で未婚のクリスチャン成人が危険にさらされる可能性が高いことは確かである。未婚のクリスチャン成人の数も増えている。性に関する意見の衝突が起きる条件が、そろっているのだ」としている。
神が創造された通りの性や恋愛関係を発見し、それを実践できるよう援助するための団体「The Brushfires Foundation」の設立者で代表のダニエル・ワイス氏は、教会が若者の性の倫理観に影響を与えることが出来ていないことを自覚するべきだと主張する。
ワイス氏は、性に対する考え方を劇的に変えた大きな要素としてポルノを挙げる。「クリスチャン社会は、ポルノの影響に何も対処してこなかった。(ポルノは)前世代から今世代にかけて受け入れられ、その利用数は爆発的に増大した。我々の社会は、優位を占める性の価値観が1つだけと言ってもいい。教会はもう1つの価値観を提示しておらず、それが『Christian Mingle』の調査にも表れていると考えられる。教会の若い独身者は徹底的に社会に影響を受け、教会からそれほど影響を受けていない。教会のリーダーたちは、クリスチャンの性的行動を変える手段として、この宗教習慣が良い、この宗教習慣が悪いという議論をするのではなく、もっとポルノについて話し合い、そして独身者であることがどういうことなのかを吟味しなければならない。(教会のリーダーたちは)性について全く何も語らない。ゆえにクリスチャンは信仰生活と性をどう調和させて良いのか分からない。世間では、どこでも性のことを取り上げるのに、性について語らないのは教会だけだ」と説明する。
ラテン系米国人やラテンアメリカ諸国への神学的影響について著した幾つかの著書がある米マイアミ大学宗教学准教授のミッシェル・ゴンザレス・マルドナド氏は、優位を占める社会の価値観が、性の倫理観を形作る上で大いに影響を与える事実を指摘している。
ゴンザレス氏は、ラテン系米国人の家族が信心深いにも関わらず(プロテスタント教徒、あるいはカトリック教徒であるラテン系米国人は1420万人に上る)、米国の文化に同化するにつれ、米国で生まれ育った子ども達は、「伝統的な、圧倒的にカトリック的な性に対する教え」ではなく、主流である米国社会の価値観を受け入れるようになったと指摘する。「家庭の中では、(そのカトリック的な教え)を今でも聞いているとは思うのですが、教会自体は、それほど大きな役割を果たしていないようです」と言う。
米アッセンブリー・オブ・ゴッド教団の独身成人向けミニストリーの全米理事長であるデニス・フランク氏は、「教会が(性に関する)もう1つの価値観を提供できるようになる鍵は、つながりの強いコミュニティを築くことだ。教会の約8割は、(独身者たちが)お互いにかまい合い、信頼関係を築ける独身成人グループを持っていない」と指摘する。
フランク氏は、自身のミニストリー内で多くの独身者たちがお互いに時間をかけて相手のことを気に掛けている様子を見ている。「(グループミーティングの後で、独身者の問題について)お互いのことを気に掛け、声を掛け合う人たちもいた。幾人かは、日ごろの友人の様子を見ていて『君のことが心配だよ。話してみない?』と声を掛けていた。独身の男女はこれをお互いにするべきだと思う。それにはリスクも伴うが、本物の友人は真実をお互いに話すものだと思う」と語っている。(続く:「(4)デートの現場で婚外性行為を求められて苦労する女性たち」へ)