自分自身と群れの全体に
使徒の働き20章25節~31節
[1]序
今回もパウロがエペソ教会の長老たちに語りかけた宣教のことばを味わい続けます。
18~25節、かつてエペソでどのように福音宣教に励み、教会形成に集中したかを再確認。
22~24節では、今どのような状態でエルサレムに向かうかを明らかに。
25節の「皆さん」と呼びかけのことばで始まる25~31節では、今後エペソ教会が直面する事態を予告、それに十分備えよと勧め命じています。
28節の「あなたがたは自分自身と群れの全体とに気を配りなさい」、31節の「ですから、目をさましていなさい」との命令こそ、その中心。
どのような理由・根拠でパウロはこれらの命令を与えているかを注意し、私たちも教会の過去と現在の歩みを、主なる神の御前に省み、今後の歩みに備えることができますように。
[2]自分自身と群れの全体に気を配りなさい
「私は、神のご計画の全体を、余すところなくあなたがたに知らせておいた」(27節)は、パウロの宣教姿勢を示す大切な節。
パウロは自らも、エペソ教会のため全力を注いで働き労し続けた者として、28節以下で、エペソ教会の長老たちに直接勧めをなしています。
(1)自分自身
参照Ⅰテモテ4章16節、「自分自身にも、教える事にも、よく気をつけなさい。あくまでそれを続けなさい。そうすれば、自分自身をも、またあなたの教えを聞く人たちをも救うことになります」。エペソ教会で励んでいるテモテに対するパウロの手紙の勧め。参照Ⅰコリント9章27節、「私は自分のからだを打ちたたいて従わせます。それは、私がほかの人に宣べ伝えておきながら、自分自身が失格者になるようなことのないためです」。
パウロ自身が、まず一キリスト者として自らについて。
(2)群れ全体
19~21節に見るパウロのエペソ宣教は、群れ全体に気を配る模範。
[3]なぜなら
(1)聖霊ご自身による任命の故に
群れからの何等かの方法による選出と使徒(この場合パウロ)の承認という人々による選出(参照使徒の働き6章)を十分認めながら、パウロはなお、「聖霊は……あなたがたを群れの監督にお立てになった」と明言。
主なる神がお立てになった人々が誰であるかを悟り、その人を選出する責任。
主なる神は、長老達を任命するにあたり、一見頼りなく見える人々による選出を通して、ご自身の御旨を実現。深い忍耐をもって。
(2)教会の尊さの故に
「神がご自身の血をもって買い取られた神の教会」。
教会の一人一人を軽んずるなら、そのために注がれた主イエスの血を軽んずることになる。主の教会のため、最善のときを、最善のものをささげる。残り物、余り物、使い古しではなく。
(3)迫り来る困難の故に
パウロの警告は現実に。問題は、教会の頭キリストご自身でなく、「弟子たちを自分のほうに引き込もうとする」(30節)こと。
[4]結び
教会が祈りの家として整えられるように(参照・マタイ21章12~17節)。教会でなしてならないことは商売。教会の特徴、すべての人(人間の築く差別を越えて)の祈りの家。
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宮村武夫(みやむら・たけお)
1939年東京生まれ。日本クリスチャン・カレッジ、ゴードン神学院、ハーバード大学(新約聖書学)、上智大学神学部修了(組織神学)。現在、日本センド派遣会総主事。
主な著訳書に、編著『存在の喜び―もみの木の十年』真文舎、『申命記 新聖書講解シリーズ旧約4』、『コリント人への手紙 第一 新聖書注解 新約2』、『テサロニケ人への手紙 第一、二 新聖書注解 新約3』、『ガラテヤ人への手紙 新実用聖書注解』以上いのちのことば社、F・F・ブルース『ヘブル人への手紙』聖書図書刊行会、他。