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哀歌講解説教

哀歌講解説教(7) 宮村武夫牧師

2013年9月24日15時27分
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関連タグ:宮村武夫
宮村武夫牧師+

私たちの手をも心をも
哀歌3章41~66節

「主は永遠の神、地の果てまで創造された方。疲れることなく、たゆむことなく、その英知は測りしれない。疲れた者には力を与え、精力のない者には活気をつける。若者も疲れ、たゆみ、若い男もつまずき倒れる。しかし、主を待ち望む者は新しく力を得、鷲のように翼をかって上ることができる。走ってもたゆまず、歩いても疲れない」(イザヤ40章28~31節)

[1]序

今回は、哀歌3章の最後、41~66節を味わいます。この箇所を、41節~54節と55~66節と、二つに分けて意を注ぎます。

[2]「私たちの手をも心をも」(3章41~54節)

40節から47節の箇所は、それ以前の39節まで、またそれ以後48節以下でと一つの点で違いがあります。39節まで、また48節以下では、「私」と詩人は、自分自身を主語として語っています。ところが、40~47節では、「私たち」とイスラエルの民全体が正面に出てきます。詩人は、信仰共同体の一員として言い表していることを強調しています。そしてこのことから、40~47節以外でも、同じくイスラエルの民全体と詩人の関係が密接であることを教えられるのです。

そうです、「私」と言っても、単なる個人と言うのではなく、イスラエルの共同体の一員、さらにその民を代表して語っている事実を心に留めたいのです。

(1)41節
40節の、「私たちの道を尋ね調べて、主のみもとに立ち返ろう」と同様に、悔い改めの思いをさらに強く言い表しています。

「私たちの手をも心をも天におられる神に向けて上げよう」と、目に見える手の方向をもって心を「天におられる神」に向けると、目に見えない心の深みにかかわる真実を指し示しています。それと共に、「手をも心をも」と重ねることにより、全身全霊をもっての祈りであることを重ねて強調しています。

(2)42~45節
詩人は、3章1節から18節に見たと同じく自分たちの状態を激しい表現で言い表しています。

42節、「私たちはそむいて逆らいました」と率直な告白をなしています。この罪の告白に基づき、詩人は祈りを続けます。

43~45節、「御怒りを身にまとい」(43節)、「雲を身にまとい」(44節)と重ね、「私たちを追い、容赦なく殺されました」とバビロン捕囚の経験に言及するだけでなく、「私たちの祈りをさえぎり」(44節)と続けます。

バビロン捕囚は、「私たちを国々の民の間で、あくたとし、いとわれる者とされました」(45節)と言われるように、イスラエルの民にとって屈辱的な経験の連続でした。しかしそれは、単にバビロン軍によるエルサレム陥落やその後のバビロン捕囚など軍事的、国際的な関係ばかりでなく、主なる神ご自身との関係が最も重要です。その主なる神との関係で、「私たちの祈りをさえぎり」と表現しなければならない経験だったのです。参照詩篇55篇1節。

このような経験の中から、哀歌の詩人は神の民の一員として悔い改めつつ祈るのです。それは、まさに「主よ。私は深い穴から御名を呼びました」(55節)と言い表さざるを得ない類の祈りです。

(3)46~54節
46節から54節までの箇所では、敵の仕打ちとそれに対する哀歌の詩人の応答を繰り返し言い表し、語るべきメッセージを強調しています。

A)敵の仕打ち(46、47節)
B)哀歌の詩人の応答、激しい涙をもって(48~51節)
A)敵の仕打ち(52、53節)
B)哀歌の詩人の応答、ことばをもって(54節)

46、47節に描かれている敵の仕打ちは、2章15、16節で見たように、周囲の国々や敵による「ことばのつぶて」なのです。

この事態を前にして、哀歌の詩人の悲しみの激しさは、その流す涙についての描写(参照詩篇119篇136節)をもって表されています。それは、預言者エレミヤのことばを思い起こさせるものです。

「ああ、私の頭が水であったなら、私の目が涙の泉であったなら、私は昼も夜も、私の娘、私の民の殺された者のために泣こうものを」(エレミヤ9章1節)

52、53節において、敵の仕打ちは、さらに激しくなっています。

「わけもないのに、私の敵となった者」とは、詩篇の記者が、「ゆえなく私を憎む者」(詩篇35篇19節、69篇4節)と呼ぶ場合を参照。

「穴に入れて殺そう」(53節)とは、エレミヤの経験した迫害(エレミヤ38章6節以下)と同じです。その激しさは、エレミヤの場合を上回るほどのもので、53節に見る石と54節の水の両方による、激しい攻撃です。

[3]「私は深い穴から御名を呼びました」(3章55~66節)

54節に見た絶望的な状態の中から、哀歌の詩人は祈るのです。「私は深い穴から御名を呼びました」と。

この箇所では、敵についての訴えが続きます。その際、哀歌の詩人は、与えられている恵み(A)に立って、さらに祈り求めること(B)を繰り返し、哀歌の詩人は絶望しないのです。

A)「あなたは私の声を聞かれました」(56節)
↓
B)「救いを求める私の叫びに耳を閉じないでください」(56節)

A)「私があなたに呼ばわるとき、あなたは近づいて、『恐れるな』と仰せられました」(57、58、59節前半)
↓
B)「どうか、私の訴えを正しくさばいてください」(59節)

A)「・・・ご覧になりました」(60節)
「・・・聞かれました」(61節)
↓
B)63~66節の訴え

ここに、哀歌の詩人の実に深い信仰を見ます。

[4]結び

私たちも、様々な困難な立場に立たされます。哀歌の詩人のように、悲しみを味わうことも少なくありません。そうした中で、主なる神のよくしてくださったことを忘れずに(詩篇103篇2節)、私たちの現実を主なる神に訴え、執り成すのです。

◇


宮村武夫(みやむら・たけお)

1939年東京生まれ。日本クリスチャン・カレッジ、ゴードン神学院、ハーバード大学(新約聖書学)、上智大学神学部修了(組織神学)。現在、日本センド派遣会総主事。

主な著訳書に、編著『存在の喜び―もみの木の十年』真文舎、『申命記 新聖書講解シリーズ旧約4』、『コリント人への手紙 第一 新聖書注解 新約2』、『テサロニケ人への手紙 第一、二 新聖書注解 新約3』、『ガラテヤ人への手紙 新実用聖書注解』以上いのちのことば社、F・F・ブルース『ヘブル人への手紙』聖書図書刊行会、他。




※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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