ルーテル世界連盟(LWF)と世界教会協議会(WCC)は、昨年南アフリカダーバンで行われた第17回気候変動枠組条約締約国会議(COP17)と同時並行で、現地で2週間にわたって「生態系の正義」に関する政治学、神学トレーニングの講座をクリスチャンの若者向けに開催した。同プログラムによって啓発された米アイオワ州ルーテル大学の女子学生クリスティ・ホルムバーグさんは、「気候変動の正義キャンペーン」を立ち上げ、4月22日の「アースデイ(地球の日)」に同キャンペーンが成功裏に終結した。同キャンペーンには米アイオワ州のルーテル大学の学生、教職員らが参加した。
WCCコミュニケーションズとのインタビューを通し、彼女が展開したキャンペーンの効果と気候変動問題における青年クリスチャンの役割についての見解が伝えられた。
WCC:あなたの展開された「気候変動の正義キャンペーン」はどのような運動であり、どのようなことを目的としているのでしょうか?
アイオワ州ルーテル大学の学生、教職員の皆様と共に、4月22日地球の日までの期限で気候変動の正義キャンペーンを企画しました。このプロジェクトは、気候変動問題が平和と正義に関する問題であることを人々に啓発させることが目的です。このキャンペーンを通して、私たちは持続可能な社会と未来に向けた集約的なビジョンを提示していきました。さらに私たちは世界の指導者たちに対して「リオ+20」までに草の根レベルの運動を広げていくように呼びかけました。
キャンペーンの最初の一週間は、「持続可能な生活」に焦点を当て、学生たちが持続可能なライフスタイルを選択する誓約書を集め、持続可能な生活を促進する「シンプルに生きる生き方―気候変動、社会正義、持続可能な生活」に関する映画の上映、座談会なども開催しました。この映画は私の夏期研究プロジェクトとして制作したもので、持続可能なライフスタイルを他者に示していきたい人たちのあり方を再現した内容となっています。
キャンペーンの二週間目は、気候変動問題に対する政治的な取り組みの動機付けに焦点を置きました。ルーテル大学の次期学長に対し、ルーテル大学が持続可能な生活のためのコミットメントを継続するように求める350人の学生の嘆願書を集め、大学でプレゼンテーションを行いました。
ルーテル大学によって開催される年次平和週間の期間においては、様々なグローバル化する諸問題に関心を持つ学生団体が集まって「私たちの願う未来」をテーマに「リオ+20」のイニシアチブに沿った演説がなされました。
そしてキャンペーン最終日となった4月22日「アースデイ」には、「ヒューマン・モザイク・セレブレーションズ」を行いました。大学キャンパスの敷地内で私たち全員が持続可能な生活と未来を望んでいる集約的なビジョンを表現するために私たちの大学のロゴでもある「木」の形を学生全員で表現しました。その様子を上空から撮影した写真を、「リオ+20」のアドボカシー運動に使っていく予定です。
WCC:あなたの展開されているキャンペーンの重要性と、青年クリスチャンの気候変動イニシアチブにおける役割について、あなたのお考えをお聞かせください。
ルーテル大学では近年持続可能な社会に関する認識を全国的に広めるための活動を展開しています。私のプロジェクトも、なぜ私たちが風力発電を行い、リサイクルするだけでは十分ではないのかを認識する活動を行ってきました。気候変動問題においては個人的な責任とともに、国家レベルの責任を持って取り組むことが必要になってきます。
私たちのキャンペーンでは諸団体、個人活動家がひとつになってグローバル問題に関わって行くことを促進しています。私の願いとしては、人々が気候変動の問題を平和と正義というレンズを通して見つめていただけるようになること、また具体的な活動を行うように啓発され、ルーテル大学の集約的なアドボカシー活動が継続的に行われていくことにあります。
ダーバンで開催されたトレーニングに参加して、平和と正義に関する諸問題の解決において、若者たちの発する声がとても重要であるという印象が与えられました。COP17の会議の座席に座っている人々以上に、私たち若者にとって気候変動問題は深刻に影響してくる問題であるといえます。社会が冷笑に満ちた雰囲気に支配されている中にあって、個人的にもこのような声を上げていく必要性、またこのような声を取り上げていただける機関を模索し、奮闘してきました。
このプロジェクトを通して、私のような学生たちがもっと市民運動に取り組み、持続可能な社会と未来を提唱し、社会全体として、気候変動問題に対する思慮深く謙遜でありながら情熱的な声を伝えていくことがでできたらと願っています。
このキャンペーンには私たちの草の根レベルの運動、嘆願書、大学全体を動機付けする活動が含まれており、さらにアースデイネットワークによって国際的な世界諸大学の学生を結びつける役割も果たしています。ルーテル大学の学生たちは、世界中の青年たちとともに、「リオ+20」に向けた「10億人のグリーン・アクト」に向けた活動に取り組んでいます。
WCC:なぜ気候変動が正義に関わる問題だと思われますか?気候変動問題に関わることは、諸教会の青年クリスチャンたちにとってどれほど大切なものなのでしょうか?
「気候変動の正義」という言葉においては、気候変動問題が平和と正義に関する問題であることを強調しています。海面上昇や干ばつ、地球温暖化などの環境問題が深刻化するにつれて、気候変動問題の影響は世界でもっとも脆弱な人々により深刻な影響を与え、さらにはジェンダー問題、人種・階級差別問題にも影響を与えてくるものであることが明確になってきています。そしてこれまでも存在していた社会経済学的な世界に蔓延している食糧問題・水資源問題・土地利用権等に関する不正の問題がさらに悪化することも懸念されています。
ダーバンにおいては、信仰共同体がこの問題に対して正義と共感の価値観を提唱していけることを認識することができました。さらにキリスト教徒のイエスの弟子としての生き方が、ひとつの持続可能な生き方の表現方法であることにも気づくことができました。
若者たちがこれまでの世代の間違った価値観をそのまま受け継ごうとしている中にあって、私たちは新たな生き方や思考法をこれからの世代に取り入れていかなければならない課題に直面しています。イエスの弟子としての倫理的な視点が求められています。諸教会が私たち若者の世代が直面する気候変動問題により関わっていくためにも、諸教会が気候変動問題に対応していくことは避けては通れない課題であると思います。
WCC:昨年ダーバンで行われた青年クリスチャン向けのエコ神学のトレーニングは、どのようにあなたのプロジェクトに影響を与えたのでしょうか?
ダーバンのトレーニングに参加して、個人的に参加者の方々との交わりの中から気候変動問題がどれだけ持続可能な社会と未来のビジョンに影響を与えているかを知ることができました。そして正義と被造物に対する神学的、倫理的な視点が深まりました。さらに国連による会議と同時に開催されたことで、国連の会議開催場所と同じ場所で草の根レベルの運動に参加することができたことが大きな思い出として心に残りました。
ダーバンでは「気候変動の正義」を国連とデズモンド・ツツ大主教に呼びかけるための宗教指導者、若者たちによる20万通の請願書を届ける運動にも加わりました。また2万人もの人々とともに行進を行いました。私は「アフリカの叫び」という部分の行進に加わりましたが、これがとても深く心に残りました。このような集団による行動に参加したことが、私のプロジェクトを立ち上げていくきっかけになりました。このような様々な経験が私の活動を支え、声を上げていく土壌を養ってきたと思います。
WCCとLWFは相互に関わりながら国際的な多様性を示しており、気候変動の正義や様々な世界の青年たちを結びつけ協働するきっかけをつくっていく役割を成していると思います。気候変動問題はグローバルで複雑な問題であり、一国の責任、一社会団体の責任を超えた問題です。ですからWCCとLWFによる世界的な多様性に富む人々の結びつきの強化は、持続可能な社会と未来のためにとても重要だと思います。
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