会議に参加した北米諸教会代表者らは、教派を超えて、異宗教間パートナーらとともに「生態系と経済に対する正義を示す活動」を行う重要性を訴えている。同協議会では、WCC自体に対し世界の社会問題を改めて認識し、「加盟諸教会、提携組織があるべき世界の姿を分かち合う」事が目的にされた。その他にも北米諸教会では、「二酸化炭素を排出するエネルギーから再生可能なエネルギーに移行させていくための実践的な取り組み法」や「貧困者と富裕層のギャップを埋めるための取り組み」についても議論された。
会議の参加者らは、各国政府が国際金融構造において新たな枠組みを制定し、国際通貨基金(IMF)、世界銀行、世界貿易機関(WTO)が具体的な行動を起こすための呼びかけを行うことについても話し合った。
会議では以下のような文書が発表された(一部略)。
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告白
私たちはすべての創造物は主がおつくりになられたと信じます。主は私たちの創造主であり、私たちは主を愛し、すべての創造物を愛し、そして互いに愛し合っています。
主は世界がすべての創造物にとって住みよい世界であることを願っておられます。しかし、北米ではそのように愛の中に生きることができない世界が生じてしまっています。
愛の中に生きることができないでいる中にあって、企業は暴力的な発展を続け、空気や土壌、水が汚されました。土地は干上がり、人権は濫用され、戦争が勃発する状況をつくり上げてしまいました。
愛の中に生きることができない中にあって、IMFや世銀、WTOのような国際金融機関は負債の多い国に更なる負債を負わせ、人々と地球のために生きるのではなく、借
金に追われながら生きる道を余儀なくしてしまいました。
個人や国家による富や権力を追い求める飽くなき欲求によって、私たちは共に天然資源を略奪する市場システムに国境を超えて人々と共謀して参画するようになりました。
一時的に外国人労働者たちが私たちの子供たちや祖父母たちのケアをしたり、農作業をすることで低賃金で長時間働かされています。労働環境は厳しく、人権が濫用されています。これらの労働は「北米人は誰もしたがらない仕事」として知られています。
私たちが当然しなければならなかった仕事をしないままに放置してしまっています。そしてするべきではなかったことをしてしまっています。
企業が埋立て地を選択し、化学廃棄物をその土地に廃棄するとき、近隣の人々の生活を害しています。また米国、カナダ企業が他国から天然資源を搾取し、また天然資源を搾取する作業のために労働者を危険な環境で作業させています。そのための賃金も公正な価格で支払われてはいません。
また地球温暖化の影響を最も与えずに生きている沿岸の土着民族の方々が、気候変動で真っ先に被害を受けています。そして他国での温暖化ガス削減要求ばかりに目を向け、自分たちに対する注意の眼をおろそかにしていました。
国益のための軍事活動をより強化し、国内企業の利益を追い求めることで、他国で移民が生じ得ない状況を作り出すようになりました。長い間、言葉ではたくさんの事を発してきたものの、実際に成してきたことはわずかでしかありませんでした。
空気・水を汚染し、生態系を破壊し、地域の人々の文化を退廃させ、わずかな富裕層の生活だけを富ませ、世界の私たちの家族の中で多くの貧困者を生み出してしまいました。
富める者は貧しい者に対して生態系の負債を追っています。地球の悲鳴と貧困者の悲鳴に対して負債を負っています。
知識
―「御使いはまた、私に水晶のように光るいのちの水の川を見せた。それは神と子羊との御座から出て、都の大通りの中央を流れていた。川の両岸には、いのちの木があって、12種の実がなり、毎月、実ができた。また、その木の葉は諸国の民をいやした(黙示録22・1~2)。―
私たちはこの御言葉のビジョンによって世界の貧困、生態系の問題に対する希望を得ることができました。地球に対する新たなビジョンであり、その地球に住むすべての人々に対するビジョンです。
偉大なる木、創世記から始まるエデンの園のいのちの水の川が広がっていくそのイメージが、ただひとつの木ではなく、広大な森があらゆる種類の実を実らせていることを想起させます。このようにしていのちの木が全ての神の民のために実りをもたらすでしょう。この創造物が贖われた世界のビジョンがひとつの健全な地球のあり方、国々にいやしをもたらす地球のあり方の様に感じられます。
私たちは労働者、科学者、私たちの祖先、偉大なる木、いのちの水の川のビジョンから知識を得てきました。そして主がすべての創造物を作られ、私たちにいやしをもたらすための知識も聞いてきました。
新たな世界が作られようとしています。あなたが創られた地球を回復するためにあなたの民を用いようとされておられます。私たちはすべての創造物を配慮し、互いに互いを配慮しなければなりません。あなたは贖いの主であり、破壊の主ではなく、私たちも同様に贖いの活動に参加することを願われておられます。
いやし
創造主よ、あなたはすべての創造物に権威を与えられました。しかし今日においても、創造物は主がお望みになられた在り方で存在できてはいません。私たちは毒に満ちたプールの中におり、地球を傷つけています。
世界平均気温の上昇は、地球の生態系を永久的に変化させてしまうでしょう。気候変動が私たちの生活している時代において、現実として生じており、その被害が深刻になってきています。
私たちはごくわずかな人々によって握られている富が、ごくわずかな人々たちだけの間で増加するシステムの中にいます。そしてそのことが原因で生じる貧困は、創造物の権威を奪い去っています。
私たちは自分たちが作った金や銀、高級品、市場経済や技術といった偶像により頼むようになってしまっています。
主よ、あなたの創造物が回復できるためのビジョンを与えてください。私たちの傷ついた生活や共同体をいやしてください。贖いの主よ、私たちを欲望から救いだしてください。
ルカの福音書で「預けなかったものを取り立て、蒔かなかったものを刈り取る(ルカ19・22)」とありますが、すでに私たちは地球が提供できるもの以上のものを奪い取っており、地球が吸収できる以上のものを排出している状態にあります。
私たちを、あなたの福音のメッセージの核心であるすべての民のための正義と希望を無視し、ただ「繁栄せよ」とだけ伝えるだけの福音の罠からお救いください。贖い主よ、あなたの創造物を回復する勇気を私たちに与えてください。私たちの傷ついた生活と共同体をいやしてください。
聖霊よ、早く来てください。私たちは貧しいですが、富んでいます。圧迫を受けているようで圧迫を与えている者でもあります。私たちが互いに和解し、また地球と和解することができますように。諸教会が和解の使者として用いられ、共同体に配慮する中心地として用いられますように。そして将来の私たちの共同体のあり方、倫理のあり方のモデルを示す場所となりますように。私たちを公正と平和、結束のための情熱で照らしてください。
聖霊よ、私たちが共に働き、あなたの創造物を回復するための情熱が得られるようにその息吹を吹きかけてください。
ビジョンと活動
「幻を板の上に書いて確認せよ。これを読む者が急使として走るために(ハバクク2・2~3))」
私たちは喜びの時、新たな世界の始まりを見ようとしています。もはや地球温暖化がいのちを脅かすことなく、二酸化炭素に依存した経済活動が再生可能な資源に移り変わり、もはや子供たちの将来について憂うことのない世界を見ようとしています。持続できない経済発展が終焉を遂げ、持続可能な共同体が形成されるようになります。地球が神様がノアとともにされたような再生産を行う時が来ようとしています。
―「私の兄弟たち。だれかが自分には信仰があると言っても、その人に行いがないなら何の役に立ちましょう(ヤコブ2・14)」―
私たちは主が創造された資源を平等に人々の間で共有することに務め、カーボンフットプリントを削減し、気候変動問題の対策活動を強化し、経済取引に対して正しい関係を構築できる道を模索し続けます。
世界諸教会、異宗教のパートナー、そしてすべての良心のある人たちに、共にこれらのことのために働くことを呼びかけます。
すべての北米諸教会の人々に対し、再生可能なエネルギーへと転換し、貧富の差を縮小し、気候変動による難民への責任を自覚し、倫理的な側面を配慮した投資を行い、またそのような配慮ができる投資マネジャーに投資を任せるようにする活動をされることを呼びかけます。
またビジネス産業関係者の皆さまが人権規約に則った企業産業活動を行い、二酸化炭素依存エネルギーから迅速に再生可能エネルギー使用へ転換して下さることを呼びかけます。また貧富の差を減少させ、公正な賃金を支払い、全ての人々にとって公正な税金をかけるためのリーダーシップを取って下さることを願います。
また各国政府が一致した活動を行い、各国企業が最高水準の環境規約・労働規約を守って活動することを促進し、過剰な国益を追い求めることを禁止し、生態系の負債を負っている人々がその補償ができるような国際金融システムを構築し、軍事予算の割り当てを再検討し、死の循環システムから抜け出し、いのちあふれる循環システムが促されるように、新たな金融枠組みの下で労働することができ、商業銀行が投資銀行から明確に分離されていくことができるように願います。
―もう11時です。私たちは急ぐ必要があります。地球の叫び声と貧困者の叫び声はひとつです。