プログラムは、第1部と第2部に分かれ、稲本渡氏のクラリネットと工藤真史氏のピアノのコラボレーションが行われた。同教会主管牧師の工藤弘雄氏のクリスマス・グリーティングが第1部と第2部との間に入り、最後は同教会聖歌隊によるハレルヤ・コーラスと全出席者による「きよしこの夜」の会衆讃美、そして頌栄・祝祷をもって終了した。
第1部の演奏曲は、S・ラフマニノフ「ヴォカリーズ」、J・S・バッハ「G線上のアリア」、C・サン・サース「白鳥」、ショパン「エオリアン・ハープ」などの比較的ポピュラーな作品と軽快なクリスマス・メドレー、第2部は、クラシックを中心に、A・ピアソラ「リベルタンゴ」、J・マスネ「タイスの瞑想」、J・ブラームス「ハンガリー舞曲第5番」、リスト生誕200年に寄せた「ため息」「愛の夢」のピアノ・ソロと続き、V・モンティ「チャルダッシュ」に至ってコラボレーションは最高潮に達した。
クラリネット奏者の稲本渡氏は、吹奏楽の名門大阪府立淀川工業高校吹奏部のコンサートマスターを務め、オーストリア国立グラーツではドイツクラリネットをマスター、ヨーロッパ各地で演奏活動、帰国後は様々なコラボレーションを積極的に行い、最近では佐渡裕氏常任指揮の兵庫芸術文化センター管弦楽団首席奏者として活躍している。
ピアニストの工藤真史氏は、神戸女学院大学音楽学部音楽科ピアノ専攻卒業後、同大学専攻科を経て渡独。ヴュルツブルク国立、ワイマール・リスト国立両大学院を修了。ドイツでのリサイタルが南西ドイツ放送、バイエルン放送によって収録されるなど、ドイツを中心に演奏活動を行っている。最近では日本とドイツを行き来しつつ活動している。
香登教会では、1998年からクリスマス・コンサートとしては工藤真史氏によるソロ・コンサートがしばらく続いたが、2003年以来、ジョイントコンサートへ移行し、大嶋恵里香氏のソプラノや稲本渡氏のクラリネットとピアノのコラボレーションが定着している。
同教会のクリスマス・コンサートは、音楽という広い間口を通して、あくまでも福音を広く伝達することを目的としている。最近では聖歌隊も加わり、会衆讃美に頌栄から祝祷もプログラム化され、コンサート伝道礼拝の色彩が濃くなってきている。通常のコンサートでの休憩時間を利用して、同教会主管牧師の工藤弘雄氏により、伝道説教が行われてきた。今年は、3月11日の東日本大震災の痛みと悲しみをふまえ、マタイによる福音書5章4節から「悲しみの向こうに慰めが」と題して御言葉が説き明かされた。
来会者には、コンサート・プログラム、教会案内、クリスマス諸集会案内、アンケート用紙にクリスチャン新聞福音版12月号が入った歓迎封筒が手渡されたが、工藤氏は説教の後半で同福音版に掲載された「両手両足がなくともだれかの奇跡になる」とのニック・ブイチチさんのあかしを用い、メッセージを締めくくった。
香登教会は、2001年、「古きを活かし、新しきを開く」を建築理念として礼拝堂の修復・改築、新ホールの建築という新会堂建築プロジェクトが完成した。礼拝堂は、重要文化財となっている弘前教会を建築した桜庭駒五郎氏の設計・棟梁によるもので1923年建築された。現在、明治・大正期から近代建築につなぐ「近代化遺産」にも登録されている。礼拝堂に併設して、修養会、特別集会、インフォーマルな礼拝や諸イベントが行われるゴスペル・ホールが新たに建設された。同教会のスローガンの一つは「地域に根ざし、地域に開かれた教会」であるが、クリスマス・コンサートはこの線に沿って行われてきた。今回のコンサートで、来会者の約半数である一般来会者の中から記名者としては118名、その約半数が昨年も出席したリピーターというデータから、クリスマス・コンサートが地域に根ざし、恒例化してきていることが示された。
備前市は岡山県東部に位置し、いくつかの町村を合併しても人口は約4万人。工藤牧師は、「地方における経済成長の著しい減速、超高齢化社会の加速は、様々な形で教会を取り巻く地域社会に現実となって表れて来ている。教会もその影響を免れない。そのような地域で、一口に200名を超える来会者というが、これは神のあわれみ、聖霊のお働き以外に考えられないことだ。それとともに、このことは忍耐と希望を持って地道に伝道に取り組んでいる信徒たちの誠実な信仰姿勢に対しての神様からの励ましにほかならない」と語った。
*同コンサートCDは、
〒705-0012
岡山県備前市香登本550-3
日本イエス・キリスト教団 香登教会
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