米コロラド州にあるメガチャーチニューライフ教会の牧師であるブレイディ・ボイド氏は、現代の米メガチャーチにおける問題として、教会の礼拝への出席者数の増加ばかり視野に入れ、教会員の霊的成長が見過ごされているのではないかと指摘した。米クリスチャンポスト(CP)が報じた。
CPによるとボイド氏は同氏のブログにて「私達米国人牧師たちは、私たちが羊飼いとして召された使命を放棄し、知らず知らずのうちにファーストフードチェーン店の経営者のようになり、教会ではなくある種の宗教ビジネスの店長を務めているような姿に変質してはいないだろうか?」と指摘し、教会発展のファーストフード店化傾向を警告した。
さらにボイド氏は、教会の成長を考えるとき、教会の牧師たちはまず第一に教会で行われる礼拝への出席者数の増加に焦点を置こうとするが、それよりも指導者間の対話を密にし、教会成長に関して心からの議論を行っていくべきだとし「教会員の数はスポーツジムの会員数と同じように考えられるべきではありません。教会は罪人たちの聖なる集いの場所であり、まさに恵みによって聖人に変えられる場所として機能していかなくてはなりません」と指摘した。
教会のリーダーシップに再度焦点を当てるために、ボイド氏は、「教会にマーケティング手法を用いるのは間違いではないだろうか?」「私たちが本当にしたいことは何だろうか?」「私たちは人々の現状を本当に知っていると言えるだろうか?」という3つの問題を提示した。
最初の問いに対し、ボイド氏は教会指導者たちが世俗的な考え方によらず、教会が建てられた真実の意味を見失わない限りは「マーケティング」という考え方それ自体が悪であり世俗的なものであるというわけではないと指摘した。ボイド氏は教会の成長が世俗の店舗の成長と違う点について「祈りによって生み出される聖霊による目に見えない働きによって、失われた羊たちを集めることになる」点を挙げた。ボイド氏は一方でバナーを掲げたり、メディアを利用したりして目に見える方法で教会の成長のための働きをすることも大事であると指摘した。
同氏は、教会が新しい人々を導くにおいて、教会指導者たちがただ礼拝出席者数の増加だけに注目し、既存の教会員の霊的成長を置き去りにしていないかが懸念されると指摘しており、「ほとんどの教会の指導者たちはこの問いを投げかければ、失われた羊を集め、傷ついた心を癒してキリストの弟子を形成していきたいと答えると思います。しかし現実問題として私が他の教会指導者たちとの会話の中で聞くのは、教会の礼拝への出席者数の話ばかりです。私は教会指導者たちが礼拝出席者数ばかりに注目して、どれだけの教会員が霊的に成長しているかが見過ごされているのではないかと懸念しています」と述べた。
ボイド氏によると、ニューライフ教会では1年半前から週末の礼拝出席者数の増加に焦点を置くことから視点を変化させたという。礼拝出席者数の目標数を設定することで重圧を課されるよりも、同氏の教会指導者たちは新しい人をケアする既に洗礼を受けた人々の数、宣教旅行に参加する教会員の数、小グループ活動に参加する教会員の数、および各奉仕チームのリーダーとして奉仕する教会員の数により焦点を当てるようにしたという。その結果、他の教会と礼拝出席者数の増加率について競い合う誘惑から解放され、教会員の質的成長のために奉仕する自由を得るようになったという。
ボイド氏は、信徒らに礼拝出席者数の増加についての努力ではなく、信徒それぞれの「罪の贖い・癒し・回復・救い」のストーリーについて証ししてくれることを望んでいるという。同氏は牧師として、礼拝に何人出席するかよりも、どれだけの教会員が霊的成長に取り組んでいるかの方が重要であるとし、「近隣のレストランではゆったりとした時間の中で、お互いのストーリーを語り合いながら食事をしています。一方ファーストフードチェーン店では効率と卓越性を求めています。そこでは時間が支配者であり、私たちは時間の奴隷となります。ファーストフード店の店員は次の客に最短時間で対応するのに急いで仕事を行っています。メニューは良く書かれていますが、それに対する説明はなるべく短く済ませようとします」と指摘した。
この2000年間の教会史を振り返り、ボイド氏は教会指導者たちは信徒らに対し「キリストの姿を覚え、迫害の中にあっても喜べる人々の話を祝えるように導いていくべきだ」と述べた。同氏は、教会は神によって召された者たちの集いの場であり、教会指導者たちが望む潜在的な顧客が集う場所ではないことを指摘した。
同氏は確かにファーストフードチェーン店が目指すような卓越性と効率性も大切ではあるが、教会の焦点は教会員同士の関係性の深化やそれぞれの信仰のストーリーに置かれるべきであると指摘し、「私たちは信仰の話を語り、互いに深い関係性を築いていかなければなりません」と述べた。
現在ニュー・ライフ教会では「これが私のストーリーです」と題した6週間にわたるイベントに取り組んでいる。同イベントでは聖書教師・ベストセラー作家として活躍する米牧師ジミー・エヴァンス氏が個人の信仰の証を行うなど、世界中の牧師や教会指導者らそれぞれの信仰の体験を分かち合うことを目的としている。