ドニカは、ほとんどの人が経験したことのない形で救いを理解した。彼女はアルバニアでエジプト人として育ち、極めて少数派の一員として過ごしてきた。家族はイスラム教の伝統を持っていたが、すでに信仰心を失っていた。
彼女の家族は神について話したり信じたりすることはなかった。それはアルバニアが共産主義独裁政権時代、宗教の実践を許していなかったためである。彼女は言う。「『私の両親、つまりあんたにとっての祖父母は、神について話すのを恐れていたんだよ』と母が話してくれました。そして母は私にこう言いました。『神なんていないんだよ』と」
ドニカは子どもの頃、命の危険に関わる事故に巻き込まれた。「家が火事になり、その中に閉じ込められてしまったんです。子どもながらに命の危険を感じました。でも母が家に入り、私を救い出してくれたのです。私は彼女がどうしてそんなことができたのか不思議で、いつもそのことを考えていました」
ドニカの村では、女の子が教育を受けることは珍しかった。しかしドニカの場合、彼女は学校に通うことができた。ドニカは両親に従順で、家族に迷惑をかけることはなかった。彼女は学校を卒業すると、ボマニという男性と結婚し、5人の子どもをもうけたのだ。
1990年、アルバニアで共産主義が崩壊すると、信教の自由が認められるようになった。「その後、私の家族はイスラム教を信仰するようになりました。私たち家族の信仰的背景がイスラムだったからです。私は家族と一緒にモスクに行き、アッラーに祈ろうとしました。でも、何も感じませんでした。アッラーは私にとって遠い存在でした。それで私は、モスクに行くのをやめたのです」
その頃、ドニカの家族は経済的な問題に直面していた。「子どもたちが成人すると、彼らはアルバニアを離れ、より良い機会を求めて欧州の他の地域に出て行ってしまったのです。夫のボマニと私はとても貧しかったので、古い物を路上で売ってお金を稼ぐことを始めました」(続く)
■ アルバニアの宗教人口
イスラム 80・3%
プロテスタント 10・8%
カトリック 3・1%
儒教 0・9%
仏教 0・4%
ヒンズー教 1・3%
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