今年のノーベル平和賞が、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)に授与されることが決まったことを受け、キリスト教界や日本の宗教界から歓迎の声が上がった。
世界教会協議会
世界350以上のキリスト教団が加盟する世界教会協議会(WCC)は、日本被団協の受賞決定が伝えられた11日当日に歓迎する声明(英語)を発表。被爆者の草の根の運動である日本被団協の活動は、「私たちの世界における核兵器の存在に対する道徳的受容を変える手助けをしてきた」と述べた。
また、WCCは1948年の創立総会で、核兵器を用いた戦争を「神に対する罪であり、人間の堕落」と宣言して以来、核兵器に反対する声を上げ続けてきたと説明。WCC国際問題教会委員会(CCIA)のピーター・プローブ局長は、核兵器が安全でないことはこれまでの歴史から明らかだとし、「存在し続ける限り永久に不安を残すだけ」だと強調。今後も、加盟教団の核兵器廃絶に向けた活動を支援していくと表明した。
日本カトリック司教協議会会長
日本カトリック司教協議会会長で、6日に日本人7人目の枢機卿に任命されたばかりの菊地功大司教(東京大司教区)は12日、米カトリック系メディア「クラックス」(英語)の取材に応じ、日本被団協のたゆまぬ努力が認められたとして、受賞決定を歓迎。自らの体験に基づいた被爆者の核兵器廃絶に向けた呼びかけは「平和の実現に大きな影響力を持っている」と語った。
一方、被爆者による核兵器廃絶を求める強い声がある中、核兵器の保有者の中には、それらを放棄する意志がない人々もいると指摘。被爆国でありながら、核兵器禁止条約への署名を拒否している日本にも言及し、「日本被団協のノーベル平和賞受賞を機に、日本政府が核兵器廃絶に向けた信頼醸成の議論を主導する意欲を持つことを期待します」と話した。
その上で、カトリック教会が核兵器廃絶を支持する立場は明確だとし、「日本のカトリック教会は、平和を求める全ての人々と協力し、世界の指導者たちに対し、核兵器を放棄し、恒久平和を確立するよう呼びかけていきます」と述べた。
世界宗教者平和会議日本委員会
世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会は12日、日本被団協の受賞決定を歓迎する戸松義晴理事長の談話を発表した。
戸松氏は、日本被団協の受賞は「核兵器廃絶に向け非常に大きな前進をもたらし、その実現を目指す人々に多大な勇気を与えるもの」だとし、創設以来「核兵器なき世界」の実現を求めてきたWCRPにとっても大きな喜びだとした。その上で、改めて被爆者の切実な訴えを心に刻み、一日も早い「核兵器なき世界」の実現に力を尽くす決意を新たにすると述べた。
被爆者の証言が「核のタブー」形成に貢献
ノルウェー・ノーベル委員会はノーベル平和賞の受賞者発表(英語)で、「核兵器のない世界を実現するための努力と、核兵器は二度と使用されてはならないことを、証言を通じて示してきた」と授賞理由を説明。1945年の広島・長崎への原爆投下以降、核兵器がもたらす壊滅的な人道的影響が世界的に認識され、「核のタブー」が形成されるために、被爆者の証言が大きく貢献したとし、日本被団協の活動を評価した。
今年のノーベル平和賞は、推薦があった計286候補(個人197、団体89)の中から選ばれた。授賞式は12月10日にノルウェーの首都オスロの市庁舎で行われ、日本被団協には1100万スウェーデンクローナ(約1億6千万円)の賞金が贈られる。