トルコ最大都市イスタンブールで今月初め、国連科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産にも登録されている、旧ビザンツ時代の「コーラ聖救世主教会」がイスラム教のモスク(礼拝所)に改装され、モスクとしての開所式が行われた。教会はオスマン帝国時代にモスクに改装された歴史があるが、近年は博物館として使用されていた。
この変更は、2020年に東方正教会のシンボル的大聖堂で、同じく近年は博物館として使用されていた「アヤソフィア」がモスクに改装されたのを含め、近年トルコで相次いでいる教会のモスク化の一環。東方正教会が優勢な隣国のギリシャをはじめ、国際社会はこの政策を批判している。
コーラ聖救世主教会は、イスタンブールの旧市街があるファティ地区に位置する。古代の城壁の近くに立ち、地元ではカーリエと呼ばれている。11~12世紀にまでさかのぼるとされる複雑なモザイク画やフレスコ画で知られている。
東方正教会の今年の復活祭は5月5日で、これまで博物館として使用されていたコーラ聖救世主教会がモスクとして開所したのはその翌日。そのため、ギリシャ外務省は声高に批判し、声明(英語)で次のように述べた。
「トルコ当局がコーラ聖救世主教会をイスラム教のモスクとして運営を開始するという決定は、人類に属するユネスコの世界遺産の性格を歪め、その性質に影響を与えるものであり、国際社会に対する挑発行為である」
「遺跡の普遍的な性格を維持し、宗教的・文化的遺産の保護のための国際基準を遵守することは、全ての国が従うべき明確な国際的義務である」
コーラ聖救世主教会は4世紀初頭、ローマ帝国の皇帝コンスタンティヌス1世によって建てられた。その後、1453年にオスマン帝国に征服されると、それから約50年後にモスクに改装され、以来長らく「カーリエ・ジャーミイ」(ジャーミイは大規模なモスクの意)となった。1945年になって、トルコ政府が博物館に指定。米国の美術史家らの支援でモザイク画が修復され、58年から一般公開されるようになっていた。
コーラ聖救世主教会のモスク化は、トルコのレジェプ・タイイップ・エルドアン大統領が2020年に発表していた(関連記事:アヤソフィアに続き別の歴史的教会もモスクへ トルコ)。
AP通信(英語)によると、エルドアン氏は、モスクとしての開所を記念する式典に首都アンカラからリモートで参加。式典では、最近修復された他の幾つかの建造物の開所も合わせて記念した。
エルドアン氏は全国に向けた放送で「幸運がもたらされますように」と述べた。式典では、地元の参拝者による祈祷も行われた。
カトリック系のCNA通信(英語)によると、式典はトルコ財団総局が主催し、多くの地域住民が参加。イスタンブールのイスラム法学者であるサフィ・アルパグシュ氏がスピーチを行った。
エルドアン氏は2020年、オスマン帝国時代にモスクとして使用されていたアヤソフィアを再びモスクに改装した際も、86年ぶりに行われたイスラム教の礼拝に数百人の参拝者と共に参加した。
米国務省はトルコ政府の動きに懸念を表明し、遺産の「多様な歴史」を尊重するよう促している。ギリシャのカシメリニ紙(英語)によると、米国務省の報道官は、ギリシャ国営アテネ・マケドニア通信に対し次のように述べた。
「われわれは、世界遺産であるコーラ博物館(コーラ聖救世主教会)がモスクとして再開されたことを承知しており、詳細についてトルコ政府に照会する予定である。われわれはトルコ政府に対し、異なる宗教共同体を受け入れてきた場所や建物を、その多様な歴史を尊重する形で保存し、アクセスを確保するよう求める」