「多くの証人の前で私から聞いたことを、他の人にも教える力のある忠実な人たちにゆだねなさい」(2テモテ2:2)
この箇所で使徒パウロは、ある人が他の人に教え、その人がまた他の人に教えるという、キリスト信者の弟子作りのモデルを示した。聴覚障がい者のための伝道に取り組むDOORインターナショナルのロブ・マイヤーズ氏によると、このような世代を超えた宣教の拡大が現在、世界中のろう者の間で起こっているというのだ。
サンジと呼ばれるあるリーダーは、インドに来たろう者宣教師の働きによって主を知った。そこでサンジは地元のコミュニティーで福音を伝え始めた。すると別のろう者が信仰を持ち、サンジはその人を弟子として導いた。その後、その人はインドの別の地域に引っ越すことになり、そこで福音を伝え、弟子化の働きを続けた。サンジが多くの人に信仰を伝えるうちに、また別の人が主を知るようになっていった。
サンジが弟子化を進めたその4、5世代先の弟子で、今度はマシューと呼ばれる弟子が主に奮い立たされた。彼は自分のコミュニティーを超えて旅するようにと主が導いておられるのを感じた。そこで彼は南アジアの別の国に移り住んだが、そこでは当時、30万人ほどのろう者が住んでいたが、そのうちの信者はわずか20人ほどしかいなかった。彼はもう一人の兄弟と共に、この新しいコミュニティーで福音を伝え始め、さらに多くの者が信仰を持つようになり、彼らはなお次の弟子を育てる弟子化のプロセスを進んでいる。
DOORインターナショナルは現在、福音がまだ伝えられていない世界の戦略的地域を「前哨基地」と呼んで福音宣教と弟子化の計画を立てている。ろう者の宣教師がその地域に入って福音を伝え、先住民の指導者を育てるのだ。
ともすると、私たちは傲慢にも健常者の立場から、彼らろう者に一人前の働きを求めるべきではないと考えがちだ。しかし神の国の原則においては違う。神はあえて「この世の無きにひとしい者」(1コリント1:28)を選び用い、ご自身の大きな働きをなされる。それは強い者も弱い者も等しく主の前に膝をかがめ、一切の栄光が神に帰されるようにする神の知恵にかなっている。
ろう者たちを用いて、彼らの間で力強く働かれる主をあがめよう。そして私たちもその働きに勇気を受け、主の業に励もうではないか。グローバルに拡大するろう者伝道がさらに力を得て、健常者と障がい者の垣根を超えて広がるように祈っていただきたい。
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