神戸大学教授や防衛大学校長などを務め、東日本大震災や熊本地震などの復興に有識者の立場から尽力した政治学者の五百旗頭真(いおきべ・まこと)氏が6日、急性大動脈解離のため死去した。80歳だった。NHKなど複数の国内メディアが伝えた。
キリスト教所有権思想の研究などを行った経済学者の五百旗頭真治郎氏(1894~1958)を父に持ち、兵庫県西宮市で1943年、8人きょうだいの6番目として生まれた。真治郎氏は1940年、ローマ教皇庁がカトリック教会に貢献した人に贈る大聖グレゴリウス勲章を受章している。真氏自身も日本経済新聞のインタビューで、「父は神戸大学の経済学の教授で熱心なカトリック信者でした」と話している。
真氏は、イエズス会系のカトリックの中高一貫校である六甲学院中学・高校(神戸市)を卒業後、京都大学に進学。同大学院修了後、広島大学助手・助教授、ハーバード大学客員研究員、神戸大学教授、防衛大学校長、熊本県立大学理事長、兵庫県立大学理事長などを歴任した。専門は日本政治外交史。
阪神・淡路大震災で被災した経験から、震災の防災や復興にも積極的に関わった。東日本大震災では復興構想会議議長や復興推進委員会委員長を務め、熊本地震では復旧・復興有識者会議座長などを務めた。また、地元の兵庫県では10年以上にわたって、ひょうご震災記念21世紀研究機構理事長を務めていた。
阪神・淡路大震災では、神戸大学の自身のゼミ生であった森渉(わたる)さん(当時22)を亡くした。渉さんは福音歌手として活動する森祐理さんの弟で、祐理さんが出演する被災地支援コンサートに顔を出すこともあったという。祐理さんは真氏の訃報を受け読売新聞に対し、「心の痛みを持って震災後を生きた人だった」とするコメントを寄せている。
イエズス会が運営する聖三木図書館(東京都)の会報「ゆるし」(2014年7月発行)に掲載された寄稿では、東日本大震災で見られた自己犠牲をいとわない人々の姿を紹介。「いのちこそ大事である。その我がいのちを置いてでも、人や人々を助けようとする時、そこには、いのち以上に大切なものが示されているのではないか」とつづっていた。