世界的な宣教団体「クライスト・フォー・オール・ネイションズ」(CfaN)の伝道者らによる短期集中型の伝道訓練イベント「ファイヤーキャンプ」が、2月12日から17日まで、東京・上野の教会「アウェイクニング東京」を会場に開催された。
ファイヤーキャンプはこれまで世界各国で100回以上開催されているが、日本での開催はこれが初めて。今回は、CfaNの伝道者ら10人が6カ国から来日して参加。受講者も東京だけでなく、名古屋や大阪、沖縄など日本各地から集まり、海外から来日して受講した人もいた。
一人一人の価値は神から来る
約1週間にわたるカリキュラムは、CfaNの欧州地域伝道ディレクターであるマシュー・マクラスキー氏が中心となって組み立てたもので、伝道のスキルだけでなく、伝道者の心にも焦点を当てた内容となっている。2日目の13日午前には、15年以上にわたり世界各地で牧会・伝道経験があるオーストラリア出身のアンドリュー・スカボロー氏が、「孤児の伝道者と息子の伝道者」と題して話した。
スカボロー氏は初め、世の中では一般的に、男性であれば、頭が良く、力があり、仕事などで用いられていると評価されやすく、女性であれば、美しく、子どもがおり、夫が良い職業に就いていれば評価されやすいとし、具体的な例を挙げながら説明。クリスチャンもこうした世の中の価値観に影響を受けているとし、そうではなく「私たちの価値は神様から来なければならない」と話した。
その上で、「皆さんは、神様がイエス様を愛したのと同じように、神様から愛されている」と強調。聖書に「わたしは、あなたがたをみなしごにはしておかない。あなたがたのところに戻って来る」(ヨハネ14:18)とあるように、神は一人一人を孤児のようにはせず、自らが人間の方に歩み寄ってくださると話した。また、「私たちの目標は、神の息子、娘として生きること。成功の定義は、天のお父さんと一緒に生きること」と伝えた。
スカボロー氏はかつて、米カリフォルニア州のメガチャーチで牧会スタッフをしていたが、ある日突然、解雇された経験があるという。それは非常にショックな出来事で、「壊れたような状態でオーストラリアに戻りました。ビザを無効にされ、隣人、車、友人、全てを失いました」と話した。しかし、この「拒絶」の経験により、自身のミニストリーが偶像になっていたこと、また、自身が神を父とする「息子」ではなく、父のいない「孤児」の状態にあったことに気付いたという。
「孤児の伝道者」と「息子の伝道者」の違い
その上で、「孤児の伝道者」と「息子の伝道者」の違いについて、27項目にわたって比較した一覧表を参加者に配り、それぞれの特徴を説明した。
一覧表では、「孤児の伝道者」の特徴として、▽御心を行う気持ちと自身の欲望を優先したい思いの間で葛藤がある、▽聖なる者「でなければならない」という罪悪感がある、▽強い承認欲求があり、リーダー格の目に留まるよう常に努力する、▽平安が欠如している、▽義務感で弟子訓練を受ける、などを挙げている。
これに対し、「息子の伝道者」は、▽神を愛情深い父として見ている、▽良き父であり王である神に対する完全な服従心と、そこから湧き上がる喜びがある、▽神を心から愛するが故に聖(きよ)くありたいと思う、▽内なる人が平安であることが通常、▽神への感謝と神の無条件の愛に心動かされて奉仕する、などが特徴だという。
スカボロー氏は、「孤児」の霊から解放されるには、自身のアイデンティティーを神の「息子」にする必要があると説明。スカボロー氏自身は、祈りの中で美しい十字架の幻を見せられたことで、独り子の命を与えるほどに神が自身を愛していることを、心から感じることができたと証しした。
13日午前はその後、希望する参加者一人一人が、CfaNの伝道者らから個人的に祈ってもらう時間を持った。また、キャンプ後半の2日間はそれぞれ、渋谷の路上でアウトリーチ(伝道)を実施。この中で48人がイエス・キリストを受け入れる告白をした。
10年間で2倍の「魂の収穫」目指す
ファイヤーキャンプは、CfaNが掲げるビジョン「ディケード・オブ・ダブル・ハーベスト(2倍の収穫の10年)」を目指す中で生まれた。ドイツ出身の伝道者、故ラインハルト・ボンケ氏が1974年にアフリカ南部のレソト王国で創設したCfaNは、1987年から2017年までの30年間に7500万人をキリストに導いてきた。「ディケード・オブ・ダブル・ハーベスト」は、その後の10年間で、この「魂の収穫」を2倍の1億5千万人にすることを目標としている。
この目標のため、CfaNでは伝道者の養成に力を入れており、3カ月間の短期集中伝道者養成プログラム「伝道ブートキャンプ」を2020年からスタート。その卒業生らが、CfaNの伝道者として協力しながら世界各地で伝道活動を行い、さらに、主に若者の伝道訓練の場としてファイヤーキャンプを各国で開いている。
CfaNは、こうした伝道者らが世界各地で行う伝道活動により、イエス・キリストを受け入れる決心をした人々の数をホームページやSNSで報告している。それによると、日本でファイヤーキャンプが開催されていた最中の2月15日には、累計の決心者が9千万人に到達。同11日~17日の1週間だけで、8万6千人以上が救われたという。
日本は「宣教師の墓場」ではない
今回のファイヤーキャンプのためにフィンランドから初めて来日した伝道者のニキ・マニネン氏は、「日本には『出る杭(くい)は打たれる』ということわざがあると聞きました。しかし、人々が神様の中で自由になるとき、この(聖霊の)炎は本当に拡散し、止めることができないと思います。キリスト教に未来はないと言う人がいます。また日本は何百年もの間、何人もの宣教師が送られてきたが何も起きなかったといわれます。でも、必ず変わっていくと信じています」と話した。
また、日本人の母親とオーストラリア人の父親を持つ伝道者のジェフリー・アイゼンブロック氏は、「日本人は霊的なものに飢え渇いている」と話す。アイゼンブロック氏の母親は、現在は脱会しているものの、若い頃は世界平和統一家庭連合(旧統一協会)の信者だったという。「母は神に対し飢え渇きを持っていたのですが、その母を最初に伝道したのが旧統一協会だったのです」。日本には伝統的な宗教もあるが、カルト宗教に取り込まれてしまう人も多くいるとし、「しかし、本当の神様に出会えば、人生がつくり変えられ、日本人が日本人というカテゴリーに収まらなくなると思います。それは遠くない未来だと思います。欧米では、日本は宣教の難しい国、宣教師の墓場などといわれますが、そんなことはありません」と話した。
アジアのリバイバリスト育成目指すAASM
今回のファイヤーキャンプは、CfaNとアウェイクニング東京の共催で開かれた。アウェイクニング東京は、欧州を拠点に活動する宣教団体「アウェイクニング・ヨーロッパ」から派遣された森下将光・エスター牧師夫妻が2019年に始めた。森下牧師夫妻は「アウェイクニング・アジア」の責任者でもあり、昨年9月には、アジアのリバイバリスト育成を目指す「アウェイクニング・アジア・スクール・オブ・ミニストリー」(AASM)を開校している。今回のファイヤーキャンプは、AASMのカリキュラムにも組み込まれており、学生全員が参加した。
AASMは「神との個人的で親密な関係と、福音に根差した聖書的な土台を築き、世に光をもたらすクリスチャンリーダーを育て上げ、世に送り出すこと」をビジョンに掲げており、8カ月間にわたって、国内外の多彩な講師が教える。現在、2期目の入学生を募集しており、詳細はホームページを。