進化論の実態を明らかにし、創造論を論証する講演会「科学の本質と創造論」(インターナショナルVIPクラブ主催)の第2回が5月28日、オンラインで開かれ、約60人が参加した。前回に続き、電子物性工学が専門の阿部正紀・東京工業大学名誉教授が進化論の実態を分かりやすく解説しながら、創造論との違いについて論じた。
たとえ観測で反証されても「生き延びる」
前回注目したのは、「パラダイム」という概念。もともとは科学史の用語で、「ある時代に科学者集団を支配している主要な理論と、それを支える世界観を含んだ枠組み」を指す。
「ここで重要なことは、パラダイムが世界観に支えられていること」と阿部氏。進化論やビッグバン宇宙論などの科学理論は、その根底で主観的な世界観に立脚しているため、たとえ客観的なデータで反証されても、その世界観の枠内で手直しされるか、反証事例が先送りされ、理論自体は生き延びるという。
これは、客観的な観測データと合理的な論理だけに基づくのが科学だとする一般的な理解とは全く異なる。阿部氏は、「進化論パラダイムでは、生命が化学反応によって生じたと想定する化学進化説が反証されているが、倒れず生き延びが図られている」と指摘。「証明できない作業仮説を導入し、目的を持たない化学反応が情報と生命を生み出したと信じる化学進化説と比べて、意思と目的を持つ創造主が情報と生命を創造したと信じる創造論の方がはるかに素直で受け入れやすい」と話した。
生体分子の起源という謎
今回はさらに、生命を支える最も重要な生体分子であるDNAとタンパク質、RNAの起源に注目した。DNAは、細胞の核と呼ばれる小さな器官の中に収納されている。2本のらせんで構成されており、G、C、T、Aと略称される4種類の塩基が作る2種類の塩基ペアが2本のらせんを結び付けている。それにより、いわゆる二重らせん構造を形成している。
DNA上にある遺伝情報の暗号を解読して、タンパク質が合成される。そのシステムは実に巧みだ。まず「転写」と呼ばれる作業が核の中で行われる。DNA上の塩基配列が写し取られ(「転写」され)、メッセンジャーRNAと呼ばれる一本らせんが作られる。
その後、メッセンジャーRNAが核の外に出て、「翻訳」と呼ばれる作業が行われる。RNAの塩基配列に従ってアミノ酸が配列されて結合し、タンパク質が合成される。塩基の配列で書かれていた情報が、アミノ酸の配列で書かれた情報に置き換えられる(「翻訳」される)のだ。
さらに不思議なことは、タンパク質を合成する翻訳装置がタンパク質とRNAでできており、そのRNAを合成する転写装置がタンパク質で構成されていることだ。つまり、DNAの暗号を解読するツールとなる翻訳装置と転写装置を構成しているタンパク質とRNAの設計図が、DNAに暗号化されていることになる。
まさに、金庫を開けるのに必要な暗証番号が、金庫の中に書かれているような厄介な問題を抱えているのだ。阿部氏は、「どれが最初に生じたか分からないという三つどもえのジレンマが存在します。このため、DNAとタンパク質、RNAの複雑な合成(暗号解読)システムの起源は、化学進化説(化学反応)では説明できない」と話した。
「生体分子の起源を解明しようとする研究は行われていないのか」との参加者からの質問には、「やろうとしても全く歯が立たないので諦めているのが現状」と回答。その上で、「科学がいかなる事象も取り扱えると信じる科学万能主義が現代社会を支配していますが、実はそうではない。そもそも生命の起源という非常に霊的な事柄は、対象を物質的世界に限定している自然科学では扱えないという問題がある。それを認めるパラダイムと、認めないパラダイムがあるということ」と語った。
次回はさらに、細胞の起源と中立進化説の謎について説明しながら、進化論の実態に迫る。今回の講演内容や次回の案内など、講演会に関する情報は、ホームページで随時発信していくという。