今秋にも東京でミニストリースクール(神学校)を開校する予定の「アウェイクニング東京」が主催する3日間のカンファレンス「アイデンティティー・ブート・キャンプ」が、3日から5日まで、東京・西早稲田のキリスト教視聴覚センター(AVACO)で開催された。
8~9カ月のカリキュラムを3日間に凝縮
アウェイクニング東京は、欧州を拠点に活動する宣教団体「アウェイクニング・ヨーロッパ」から派遣された森下将光・エスター牧師夫妻が2019年から開拓している教会。カンファレンスには、ドイツにある「スクール・オブ・アウェイクニング」から来日した約20人のチームが参加し、通常は8~9カ月かけて教えるというカリキュラムの内容を3日間に凝縮して伝えた。
森下牧師によると、スクール・オブ・アウェイクニングには現在、約100人が通っている。今はスクールで学ぶ人たちが幾つかのチームに分かれて、世界各国に伝道旅行に行く時期で、院長のシメオン・ジャンセンさんを含む約20人が今回、10日間の日程で来日。東京で開校予定のミニストリースクールがどのようなものになるのかを体験してもらおうと、カンファレンスを企画した。
カンファレンスの初日である3日は、約1時間の賛美と祈りのひとときを持った後、シメオンさんがスクール・オブ・アウェイクニングのカリキュラムについて簡単に説明。▽父なる神の心、▽イエスとの親密な関係、▽聖霊とその力――の3つがカリキュラムの柱だとし、この日は1つ目の「父なる神の心」について、自らの体験を交えて話した。
神が400年余りの沈黙を破って語った言葉
旧約聖書最後の書であるマラキ書と、新約聖書最初の書であるマタイによる福音書は、聖書ではそれぞれ隣り合わせにあるが、各書が記された時代の間には400年余りもの年月がある。預言者マラキの口を通して語られた神は、それを最後に長きにわたって沈黙を通されたのだった。
マラキ書の中には、旧約聖書の大預言者エリヤの再来とされる人物が預言されているが、マタイによる福音書の冒頭には、その人物とされる洗礼者ヨハネが登場し、イエスに洗礼を授ける。この場面で、400年余りの沈黙を破って語られた神の言葉が、イエスに向けられた「これはわたしの愛する子」だった。それからイエスは、この父なる神の愛に応えるかのように、公生涯と呼ばれる十字架までの歩みを始めることになる。
シメオンさんはこの一連の流れから、まず初めに父なる神の愛が、神の子であるイエスに向けられていることを強調。そして、イエスと同じように、クリスチャンは「神の子」とされた驚くべき存在だとし、一人一人がどれほど大きな愛を父なる神から受けているかを伝えた。
全身で感じた「父なる神の愛」の体験
カンファレンスでは情熱的に、父なる神の心、またその愛を語ったシメオンさんだが、以前は何事も頭で考えるタイプで、心を深く閉ざして生きてきたという。「どんな討論にも勝つ自信がありました」と当時の姿を振り返る。しかし、米国の神学校で学ぶ中で、父なる神の愛を語る1冊の本に出会い、自身もその愛を体験することを心から欲するようになった。
父なる神の愛に触れる体験を求めて日々を送る中、その日は予期せぬ形で訪れた。数人でスポーツクライミングをする機会があり、そこで互いに励ましの言葉を掛け合う時間が持たれた。ある大柄の黒人男性が、シメオンさんに言葉を掛ける順番になったとき、その男性は「あなたはすごく謙遜な心を持っている」と言ってくれた。それまでのシメオンさんを知っている人であれば、話してくれることのないような言葉であったため、シメオンさんは「ありがとう」と返したという。すると、その男性は、その大きな体でハグをして応答してくれた。
直前まで何か特別に意識することはなかったものの、しかしこれが、シメオンさんにとって、父なる神の愛を心から感じる決定的な機会となった。
「その時、今まで求め続けていた父なる神の愛が降りてきたのです。超自然的な愛を感じたのです。温かい液体のようなものが、頭の上から体中に落ちていくように。心まで来て、体全体を通っていくように。それは、小さく、気恥ずかしい愛ではなく、とても強烈な愛でした」
「今まであった、自分には何か足りないのではないかという思いや、恐れ、恥、自責の念も全て流してくれました。愛があまりにも力強くて、これまで信じていたうそ(の自分の姿)が大したことのないように思えました。その時に気付いたのです。他の誰も自分を定義することはないのだと。天の父だけが私を定義するのだと。神学のようなもので、自分を定義する必要はないのだと分かったのです」
シメオンさんは、その強烈な愛に感動し、食事も喉を通らずにしばらく泣いてばかりいたが、涙は次第に笑いに変わっていったという。それは、父なる神の愛を土台とした、本当の意味での自由を体験したからだった。神学校の仲間に証しをするとまた涙が出たが、「父なる神の愛を頭で理解したのではない、心で感じたのだ」という確かな思いが与えられ、その日はまさに「人生最高の一日」だったと話した。
自分の価値を定めるのは他者ではなく父なる神
シメオンさんの次のセッションでは、スクール・オブ・アウェイクニングで学ぶリリー・フェラウアーさんと、ベネディクト・ロスさんが、それぞれ20分から30分にわたり、同じく自身の体験を交えつつ語った。
周囲から物静か過ぎると言われ、自殺願望さえ抱くことのあったリリーさんは、洗礼を受けたことで大きく人生が変わったという。しかし、洗礼を受けた後も、自身が依然として罪にとらわれているという思いに陥ることがあったと話し、そういう時にこそ、イエスが十字架上でなされたことを思い出すべきだと強調。自身の価値は、家族や周囲の人々によってではなく、父なる神によって定められるのだと伝えた。
ベネディクトさんは、「天の父のことを知りたければ、イエスを見る必要があります。イエスは完全に父の姿を表しています」と言い、イエスの中に父なる神の姿が完全に表れていることを話した。また、シメオンさんの体験に触れ、「父なる神の愛は日々体験していくものなのです。あなたが何年間クリスチャンをしているかにかかわらず、あなたは父なる神の子なのです。自分の力で生きる必要はないのです。神様は皆さんの『お父さん』であることを知ってほしいと思います」と伝えた。
カンファレンス後に公園や駅前でアウトリーチ
アウェイクニング東京は、礼拝やカンファレンスに参加して終わりではなく、クリスチャンが日常的に福音を伝えることを励ましている。最近は、新会堂予定地の近くにある上野公園で週3回のアウトリーチ(伝道)を行っており、毎回10人以上が集まり、スピーカーとマイクを持参して大胆に福音を伝えている。この日も、カンファレンスが終わった後、参加者のうち30人以上が、近隣の戸山公園とJR高田馬場駅前まで徒歩で移動し、トラクトを配るなどしてアウトリーチを行った。
カンファレンスを終え、森下牧師は次のように語った。
「神は、日本とアジアに魂の大収穫をもたらします。そしてそれは、一つの教会や数人のリーダー、または海外の宣教師によってなされることではありません。神は日本から霊的リーダーを立ち上げ、アジアで福音を伝え、世に光をもたらす者として送り出すことを私たちは信じています」
9月開校、国内外の多彩なリーダーたちが講師に
アウェイクニング東京は現在、JR上野駅近郊の建物の2フロアを契約するため手続きを進めている。契約を結べば、新会堂とするとともに、9月にはそこで「アウェイクニング・アジア・スクール・オブ・ミニストリー」を開校する計画だ。
スクールのビジョンは、「神との個人的で親密な関係と、福音に根差した聖書的な土台を築き、世に光をもたらすクリスチャンリーダーを育て上げ、世に送り出すこと」。初年度は、今年9月から来年4月までの8カ月間に、日本語と英語の2カ国語で授業を展開する。
講師は、森下牧師夫妻だけでなく、中国の「家の教会」を導いた『天国の人』の著者として知られるブラザー・ユン氏や、アウェイクニング・ヨーロッパの創設者であるベン・フィッツジェラルド牧師ら、海外の宣教の最前線で活躍するリーダーたちをはじめ、国内からもホープチャーチ(千葉県船橋市)の創設者であるスティーブン・ケイラー牧師ら、多彩なリーダーたちを迎える予定だ。
森下牧師は、「『神の愛を知り、神との個人的で親密な関係を築きたい』『霊的に幼いままではなく、クリスチャンとして成熟した者として土台を築きたい』『神が与える個人的な使命を知り、それに向かって歩みたい』『福音を携え、世の中に変革をもたらすリーダーとして用いられたい』など、このような思いを持っている人はぜひ、私たちのスクールに申し込むことを、祈りつつ、また所属教会の牧師やリーダーと相談してご検討ください」と呼びかけている。
スクールに関する告知などは、今後、アウェイクニング東京のインスタグラム(@awakeningasia)で行っていく。詳細については、メール([email protected])で問い合わせを受け付けている。