東京都内や近県の諸教会・団体が協力して開催する「首都圏イースターのつどい」が16日、ウェスレアン・ホーリネス教団淀橋教会(東京都新宿区)で開かれた。1963年に新宿の伊勢丹デパート屋上で開催したのが始まりで、今年は節目となる第60回。ウクライナ出身のオペラ歌手オクサーナ・ステパニュックさんが、音楽ゲストとして賛美を歌い、キリスト者学生会(KGK)で20年以上にわたり学生伝道に携わってきた大嶋重徳牧師(鳩ヶ谷福音自由教会)が、聖書からメッセージを伝えた。
首都圏イースターのつどいは、80余りの教会・団体が協力する歴史ある伝道集会で、毎年イースターに近いこの時期に開催されてきた。しかし、2020年は新型コロナウイルスの影響で、半世紀を超える歴史の中で初めて開催ができなかった。21年、22年は開催にこぎ着けたものの、当時の感染状況や入場制限などにより、参加者はいずれも80~100人程度にとどまった。
これに対し、新型コロナウイルスに関するさまざまな制限が緩和される中で開催された今年は、参加者が大幅に回復し、昨年の3倍以上となる約310人が参加。毎年演奏を行っていた救世軍ジャパン・スタッフ・バンドも、4年ぶりに生演奏で賛美を届けた。また、今年は初めて会場前で野外演奏も行い、通りを行き交う人々にイースターの音色を届けるとともに、集会を知らせるチラシの配布や呼び込みを行った。
集会では、「カルバリのキリスト(アニーローリー)」や「重い荷をにない」(新生讃美歌537番)などを演奏。救世軍ジャパン・スタッフ・バンドによる演奏の後には、参加者全員で「いざひとよ」(聖歌168番)を会衆賛美として歌い、淀橋教会のインマヌエル聖歌隊が「主は今、生きておられる」を歌った。
オクサーナさんはこの日、ウクライナ国旗の色柄のリボンを右手に着けて登壇。「この声は神様から頂いたものです」と話す、ソプラノの中でも高音域のコロラトゥーラと呼ばれる歌声で、「主の祈り」など3曲を披露した。
曲の間に語った言葉は全て日本語で話し、イースターを祝うとともに、母国ウクライナの状況にも言及。「私の故郷は今、まだ大変な状況が続いています。皆さん、ウクライナのことを応援してください、祈ってください」と求め、自身が取り組む芸術活動や慈善活動を通して、この世界を美しい場所にしていきたいと話した。
その後、メッセージのために講壇に立った大嶋牧師は、「今、私たちの思いは一つだと思います」と言い、オクサーナさんの言葉に応答するように、ウクライナのための祈りを会場の参加者と共にささげた。「親が戦地にいる不安の中で涙する子どもたちの上に、オクサーナさんの祈りの中にある家族や友人たちの上に、一刻も早く平和が、安心が与えられる、そのようなイースターを迎えることができますように」。大嶋牧師はそのように述べ、神が戦争を止め、平和をもたらしてくださるように祈り求めた。
メッセージは、ヨハネの福音書4章3~29節から、「生き直すことのできる命の水」と題して語った。この箇所には、井戸に水をくみに来たサマリア人の女性とイエス・キリストの対話が記録されている。当時のユダヤ人は、異民族とユダヤ人の混血によって生まれたサマリア人をひどく嫌っていた。そのため女性は、ユダヤ人であったイエスが話しかけてきたこと自体に驚いた。
また、女性は他人には知られたくない罪深い過去を抱え、それを隠すようにして生きていたが、イエスは初めて会ったのにもかかわらず、その過去を正確に言い当てる。そして女性は、イエスとさらに深い対話を重ねた後、町に戻ってイエスを証しし、多くのサマリア人をイエスの元に導くことになる。
大嶋牧師は、この女性と自分たちの姿を重ね、イエスは、自分たちが他人には隠している闇の部分にもしっかりと触れた上で、出会おうとされると指摘。罪を暴露するのではなく、それぞれの中にある罪の問題に向き合った上で出会われる方であることを伝えた。
また、「水を飲ませてください」と話しかけることで、女性と対話を始め、自身が「永遠のいのちへの水」を与える存在であることを伝えたイエスが、十字架上で「わたしは渇く」と話されたことに言及。一人一人が出会わなければならないのは、この十字架で死なれ、復活されたイエスだと伝えた。
その上で、イエスの復活を祝うイースターは、「人生をもう一度やり直すことができる命の日」だと強調。イエスと出会い、人生が大きく変えられたこの女性のように、イエスを受け入れれば、その人生には「永遠のいのちへの水」が湧き出で、どれだけの罪深さがあったとしても、人生をもう一度やり直すことができると伝えた。
メッセージの後には、大嶋牧師が招きの祈りをささげ、救世軍のスティーブン・モーリス司令官が、会場に集った一人一人のために神の祝福を求める祈りをささげた。