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ジョン・バンヤンの生涯

天国への旅―ジョン・バンヤンの生涯(1)鋳掛屋の子

2023年1月11日16時13分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
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天国への旅―ジョン・バンヤンの生涯(1)鋳掛屋の子+
ジョン・バンヤン(1628〜88)の肖像画(英国立肖像画美術館所蔵)

英国中部地方ベッドフォードシャー州の寒村、エルストゥに貧しい鋳掛(いかけ)屋とその家族が住んでいた。今日も店主のトマス・バンヤンは、店の奥の仕事台で、鉄くずで真っ黒になった手をごしごしと前かけで拭きながら、鍋や釜の修理をしていた。

(やれやれ、手間のかかる割にはいくらも修理代がもらえない仕事だからなあ)彼は、鍋の縁を指ではじいてつぶやいた。

そのうち昼になり、家族そろってテーブルについたが、長男ジョンの姿が見えない。そのあたりの悪童たちと遊び回っているに違いなかった。「しょうのないやつだ」。トマス・バンヤンは舌打ちした。母親もため息をついた。

「あたし、お兄ちゃんがどこにいるか知っているわ」。8歳になる妹のマーガレットは、こう言って飛び出していった。彼女より2つ上の長男ジョンは、そのあたりの子どもたちと町に出て、通行人に悪態をついたり、けんかを売ったりして騒いでいた。

そのうち、彼は丘の上の教会の鐘楼に登り、でたらめなリズムでガンガン鐘を打ち鳴らし始めた。この「教会の鐘たたき」はスリルとわくわくするような面白さがあり、子どもたちに一番人気のある遊びだった。仲間の悪童たちは手をたたき、やんやとはやし立てた。

「こらっ! いいかげんにしないか!」その時、この教会に住み込んでいる門番がやってきて、大声で叱りつけた。子どもたちは、わっと声を上げて逃げていったが、ジョンは悪びれることなく、今度は品のない歌を歌ったり、神を冒瀆(ぼうとく)するような言葉を吐き散らした。そのうち、ようやくジョンは鐘楼から降りてきた。

門番は、彼の首筋をつかむと脅した。「おい、おまえ! いいか、神様を冒瀆する言葉を吐く者が死後どんな目にあうか分かるか? 神様の審判を受けたあと、まっさかさまに地獄に落とされるんだぞ」

地獄と聞いて、ジョンはひるんだ。「地獄がどういう場所か知ってるか?」彼は首を横に振った。「そこはな、いつでも火が燃えていて、落ちた者はじわじわと焼かれるんだ。あんた、罪人の火刑見たことがあるか? 地獄の罰はあんななまやさしいものじゃない。焼けた石炭が山のように積んであって足を焼かれ、それから溶けた硫黄がぶくぶくと沸いている池があってその中につけられるんだ」

ジョンは終わりまで聞かずに泣き出した。そして、耳をふさぐと駆け去っていった。

教会の後ろの大きなニレの木陰で、妹のマーガレットが彼を待っていた。「お兄ちゃん、ご飯よ。みんな待ってるわ」。ジョンは手の甲で涙を拭くと、妹の髪をそっとなでた。彼はこの妹がかわいくてたまらなかった。この妹の前では、なぜか毒づいたり、荒々しい言葉を吐いたりできなかった。2人は手をつないで店の中に入った。

その夜遅く、子どもたちが寝たかどうか見回っていた母親は、ジョンの寝床が空になっていることに気付いた。「ジョン?」呼んでも返事がない。外に出てみると、彼は納屋の入り口で、両手で膝を抱えてうずくまっていた。

「どうしたの? ジョン」。母はびっくりして、そばに駆け寄った。「眠るのが怖いんだ、お母さん」。彼はガタガタ震えながら言った。「眠ろうとすると、すごく怖い夢を見て・・・ゆうべも、その前の晩もそうだよ」

母は、人一倍感じやすいこの子の性格をよく知っていた。普段はおどけたり、ひどいいたずらをしたりするが、本当は繊細で感じやすい、壊れもののような心を持っているのだ。

「大丈夫よ、ジョン。お母さんがあんたのためにお祈りしてあげるからね。あんたの罪が消えて天国に行けますようにって、毎日お祈りしてあげる。だから、心配いらないよ」。ジョンはため息をつくと、母に手を取られて寝床に戻っていった。

その時代は、まさに悪魔が飛び回っているような、あらゆるものが恐怖に彩られた時代だった。飢えた者が一切れのパンを盗んだだけで家族もろとも広場で絞首刑にされた。国王の定めた宗教に帰依せず別の宗教を信じる者は火刑に処せられた。囚人はありとあらゆる拷問にかけられ、さらしものにされた。

世の親たちは公開処刑のむごたらしい場面を子どもたちに見せまいとしたが、そうした光景は悪夢となって、感じやすい者たち――特に子どもたちの心に忍び入り、魂をおびやかしていたのであった。

*

<あとがき>

今月から、いよいよ世界的名作『天路歴程』を書いたジョン・バンヤンの生涯について紹介できるのはこの上もない喜びです。この作品は、英国文学史上まれに見る美しい文体をもっており、シェイクスピアやディケンズと並んでもひけをとらない高度な作品として世界的に高く評価されています。

しかしながら、この作品を書いたのは、最低限の教育すら受けたことがなく、読み書きも十分にできなかった貧しい鋳掛屋であることを知って、世界は驚きました。神様は、地獄の恐怖におびえ続けている少年に素晴らしい天国の都を見せ、どんな罪びとでもイエス・キリストの御名を呼び求めれば救われるという信仰に導き、やがては地獄から天国へと旅ができる望みを世界に送るメッセンジャーとして立てられたのでした。

バンヤンの作品の基調をなすものは「罪びとに注がれる神の恩寵(おんちょう)」であり、彼が生涯口にしていた「誰でも天国に行ける」ということの証明そのものだったのです。

次回へ>>

◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。80〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、82〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、90年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)刊行。また、猫のファンタジーを書き始め、2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で日本動物児童文学奨励賞を受賞。15年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝のWeb連載を始める。20年『ジーザス ラブズ ミー 日本を愛したJ・ヘボンの生涯』(一粒社)刊行。現在もキリスト教書、伝記、ファンタジーの分野で執筆を続けている。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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