1. 判決言渡しの実現力
「被告人を懲役3年に処する」。刑事裁判で裁判官がこう判決を言い渡す。そうすると、被告人は否応なしに刑務所に入れられ、そこで3年間働かなければならない。
「被告は原告に対し金2千万円を支払え」。民事裁判で裁判官がこう判決を言い渡す。そうすると、被告はその金額を原告に支払わなければならない。支払わなければ、裁判所の命令で強制的に取り立てが行われる。
このように裁判官の判決言渡しには、言い渡した言葉の通りに物事を国家権力をもって実現させる力がある。
2 神の言葉の実現力
聖書によれば、言葉には実現する力がある。神は言葉によって宇宙万物を創造した(創世記1:3~2:2、ヨハネ1:1~3、へブル1:2、3)。神が語った言葉は、むなしくは神に帰らない。神の言葉通りのことを実現して神に帰ってくる(イザヤ55:11)。聖書におびただしい数々の預言が書かれているが、それらは驚くべき確率で実現しているといわれている。
神の御子なるイエス・キリストは、その語る言葉により、死人をよみがえらせ、病人を癒やし、悪霊を追い出し、イチジクの木を枯らせ、ペテロに水の上を歩かせ、嵐や波を静めた(4つの福音書)。
3. 人の言葉の実現力
神の子である人間の言葉にも物事を実現する力がある。神を信じれば、目の前にある山に向かって動いて海に入れと言い、その言った言葉が必ず実現すると心に疑わないで信じるなら、その通りになると聖書に書かれている(マルコ11:22、23)。このように、人の言葉には驚くほどの実現力がある。
4. 言葉の使い方
言葉には物事を実現する力があるとすれば、言葉の使い方に気を付けなければならない。言葉には創造する力もあれば破壊する力もあるからだ。声に出して語る言葉だけでなく、文字にして見せる言葉も実現する力がある。聖書は神の言葉が書かれた書物であるが、読む人をその言葉通りに変えていく。
言葉は人の内面の意思を具体化して外面に表示する力である。言葉に込められた内面の意思が外面に形となって表れるのである。広い意味では、音楽も芸術も映像も一種の言葉である。だから「何を言うか」「何を書くか」「何を表現するか」が重要である。また「何を聞くか」「何を読むか」「何を見るか」によって大きな影響を受ける。
5. 一言の力
ドナルド・トランプ前米大統領が少年の頃、ある預言者がトランプ家を訪れた。そして、ドナルドを見て「主は言われる。あなたは将来米国の大統領になる」と預言した。本人も家族も信じなかった。しかし、彼はビジネスマンとして成功し、晩年に大統領になった。預言が実現した。
吉田茂元首相が野党議員の質問に怒り、思わず「バカヤロー!」と言った一言が原因で国会が解散になった。有名な「バカヤロー解散」である。
仕事のミスにより上司から口汚く非難されたため、部下の心が折れてしまい、最後は自殺に追い込まれた。婚約者の心無い一言で相手が傷ついて、結婚が破談になった。長らく病に伏せっていたが、友達の励ましの一言で元気になった。このようなことが日常的に起きている。
だから今日あなたが話す一言一言が大切である。クリスチャンはいつも信仰と希望と愛をもって語るよう心がけるべきである。
「悪いことばを、いっさい口から出してはいけません。ただ、必要なとき、人の徳を養うのに役に立つことばを話し、聞く人に恵みを与えなさい」(エペソ4:29)
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