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ケーテ・コルヴィッツの生涯

労働者の母―ケーテ・コルヴィッツの生涯(19)連作版画『戦争』

2022年11月1日10時25分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
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労働者の母―ケーテ・コルヴィッツの生涯(1)ふみにじられたもの+
ケーテ・コルヴィッツ(1867〜1945、写真:Philipp Kester)

1922年末。ケーテは連作版画『戦争』を完成させた。この作品に彼女は世界中の母親の悲しみを投入した。彼女は実に、母の心をもって戦争の悲惨さを訴えたのであった。

<いけにえ><志願兵><寡婦><母たち><ひとびと>という5枚続きの絵は、世界に大きな衝撃を与えた。戦争はまさに死と背中合わせだったので、彼女は続いて死をテーマにした『一人の女をとらえる死』『死との対話』を制作した。

1923年。ケーテは夫カールと共にアカデミーに出展した自分の作品を見に行った。会場を出ると、各地から集まった人たちがコルヴィッツ夫妻のもとに押し寄せてきて叫んだ。

「貧しい者の味方! 子どもたちの保護者!」そして2人に祝福の言葉をかけるのだった。「ありがとう、皆さん!」ケーテは夫に助けられて、会場入り口の少し高い石段の上に立って彼らに語った。

「ここにいるのは戦争によって息子を奪われた一人の母。そして皆さんと同じように明日のパンをどうやって得ようかと考えている貧しい労働者です。

労働者は長い間不当に搾取されてきました。さらに戦争によって家も家族も失わなくてはならなかったのです。でも、私たちには残されたものがあります。それは、人間としての誇りです。私たちは、いかに圧迫され、搾取され、全てを失っても立派に人間としての務めを果たすことができるのです。

私の愛する2番目の息子は戦死しました。戦地に行って初めてよこした手紙に、彼はこんなことを書いてきました。

『ほとんど希望のない毎日ですが、ちょうどお父さんとお母さんがあの労働者街の診療所でともしびを掲げたように、心に希望を与えてくれる瞬間があります。敵国フランスの陣営の中でフランス兵が負傷したドイツ兵をいたわり、兵舎の中で手当てをしてやったということを聞きました。またフランスの村落に侵入した際、ドイツ兵が戸口に<いたわってやれ――ここには老人が住んでいる><ここには妊婦がいる。それと子どものみだ>と書いた張り紙をしているのを目撃しました。心がすがすがしい思いになって、涙が出てたまりませんでした』

皆さん、ペーターは戦争で何の手柄をたてることもなく犬死にしました。でも、彼はかけがえのないものを残してくれたのです。それは、世界いずれの国にあっても、人間は人間であることを忘れてはならない――ということです。

そして、人間たるわれわれが命を懸けて伝えていかねばならないことは、最も小さな、弱い者に対してなされた愛の行為は無限の価値を持つということであります。これこそ人間の尊厳であり、人間の誇り、人が神の似姿として造られた証拠なのです」

詰めかけた群衆はどよめき、大きな拍手が鳴り響き、それはやまなかった。ケーテは思わず空を仰いだ。そこに愛する祖父ユリウス・ルップがいて、じっと自分を見つめているような気がした。

(おじいさん)彼女は心の中で語りかけた。(やっと今、あなたが生涯をかけて伝えようとしていたメッセージが分かりました)

その年の冬。ケーテはめっきり弱ってきた足を引きずるようにしながら、ベルリン郊外の「救護院」を訪ねた。入り口を入ると、むっとするような空気の中で、まるで芋を洗うように多くの人々が長いテーブルについてガツガツとスープをすすっていた。

と、そこへ施設の職員が一人のひげづらの男を手押し車に乗せてやってきた。戦争で心身が傷つき、廃人のようになって戻ってきたのだという。男はよだれを垂らし、何かわけの分からないことをつぶやいていたが、ケーテの前に来かかったとき、突然彼女に目を据え、泣きじゃくりながら言った。

「お母さん・・・いませんよ・・・どこを捜しても・・・ピティがいないんです・・・」

ケーテは衝撃のあまり、よろよろと手押し車にすがりついた。それは、一度も家に帰ってくることなく戦争の間も消息の知れなかった養子のゲオルクの変わり果てた姿だったのである。

「ゲオルク」。ケーテは彼の耳にささやいた。「ピティはね、こんな地獄みたいな世界ではなく、天国で幸せに暮らしているわ」。男の目が据わった。それから、彼は小さな子どものように泣き叫んだ。「お母さん・・・やっぱりいないよ・・・ピティを捜して。・・・ピティはどこ?・・・」

職員はケーテに一礼すると、車を押して彼を建物の中へと運んで行った。ケーテはようやくもう一人の息子と再会し、そして永遠に失ったのだった。それから2週間後、ゲオルク・グレイトーアが「救護院」で死んだという通知がコルヴィッツ夫妻のもとに届いた。

*

<あとがき>

ケーテは連作版画『戦争』の中に、世界中の母親の悲しみを投入しました。そして、戦争はまさに死と背中合わせなので、死をテーマにした2つの作品をも完成させたのです。

そして、彼女は夫カールと共に自分の作品を展示したアカデミーへと向かいます。そこで彼女は集まった人々を前にして、長い間搾取された上、戦争によって全てを失わねばならなかった自分たち貧しい階層に残されたものは人間の誇りであり、いかに社会が変化しても失ってはならないと語るのでした。

そして彼女は、戦死したペーターが最後によこした手紙を紹介します。それには敵対し合う兵士の間にもやさしい思いやりや、弱い者に対するいたわりを見たことが記されていたのでした。彼女は今また亡き祖父が残してくれたメッセージ「弱い者に対する愛の行為は無限の価値を持つ」という言葉を思うのでした。

この後、ケーテには悲しい再会が待っていました。それは戦争によって心身に深い傷を受け、廃人となったゲオルクとの再会でした。

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◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。80〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、82〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、90年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)刊行。また、猫のファンタジーを書き始め、2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で日本動物児童文学奨励賞を受賞。15年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝のWeb連載を始める。20年『ジーザス ラブズ ミー 日本を愛したJ・ヘボンの生涯』(一粒社)刊行。現在もキリスト教書、伝記、ファンタジーの分野で執筆を続けている。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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