人間関係やうつなどに悩む人々を対象とした無料のオンラインセミナーが9月24日と10月10日の2回にわたり行われ、カナダの精神衛生医師でクリスチャンのグラント・マレン氏が講演した。マレン氏は、心を「一新」(ローマ12:2)するための「3つの鍵」を提示し、「イエス様はあなたのもとに来られて、あなたの心を癒やしたいと招いておられます」と呼びかけた。
人道支援の活動を行うキリスト教系NGO「オペレーション・ブレッシング・ジャパン」(OBJ)が、心の支援の一環として開催。初回のセミナーには50人の定員を超える80人以上が参加し、関心の高さをうかがわせた。
セミナーの冒頭でマレン氏は、心の癒やしに向けたプロセスに入るための大切な聖句として、「心の一新によって自分を変えなさい」と勧めるローマ人への手紙12章2節を引用。「心の一新」について「自分の思考を変えること」だと説明した。
では、自分の思考を変えるためには、どうすればよいのか。マレン氏はまず、人の人格形成に影響を与える「記憶の袋」について解説した。この袋には、過去に経験した実際の出来事と、その出来事を自分がどのように解釈したかが保管されているとし、「出来事自体よりも、それをどのように解釈したかが重要になります。2人の人が同じ経験をしても、全く違う解釈をしていることがよくあります」と語った。
記憶の袋は、これまでの経験とそれに対する解釈によって、小さい荷物になることもあれば、大きな荷物になることもある。マレン氏は、「私たちは皆何らかの形で、心に苦しみや傷を受けています。私たちがこの荷物に向き合わなければ、このような姿になります」と語り、肩に背負った大きな荷物に押しつぶされそうになりながら、何とか前に進もうともがく人のイラストをスライドで示した。
「このような姿のクリスチャンに対して、悪魔はびくともしません。しかし、悪魔にとって都合が悪いのは、このような荷物を全て処理し、自分の賜物や神様から与えられた召しをしっかりと理解して歩むクリスチャンです」
マレン氏は、「この重荷にいつまでもしがみついて私たちが苦しむことは、イエス様の御心ではありません」と語り、心が癒やされるために、人を構成する身体・人格・霊という3つの領域(鍵)がそれぞれどのように取り扱われるべきか、その概要を説明した。
うつ病などの気分障害や不安障害については、「場合によっては身体の領域から問題が生じており、その対処として医学的な治療が必要な場合があります」と指摘。視力矯正のために眼鏡をかけることに例え、「脳内化学物質の不均衡が生じると、うつなどの気分障害を発症しやすくなり、自分の思考がぼやけて悪い考えを止めることができなくなってしまいます。精神薬の多くは、神経伝達物質の出方を安定させる作用を持っており、それを正しく処方することによって精神状態が安定し、思考が正常に働くようになるのです」と説明した。
目に見えない霊の領域における障害については、悪魔が記憶の袋にある心の傷や痛みを利用して、偽りの考えを信じ込ませようとすると指摘。「イエス様に自分の重荷を取り除いてもらいたいと願えば、その偽りの代わりに神様の真実が与えられ、悪魔の力は無効になります」と語った。「神のことばは生きていて、力があり」と宣言するヘブル人への手紙4章12節を引用し、「神様の御言葉と聖霊の力によって私たちの心は癒やされ、(記憶の袋にある)荷物を空っぽにすることができます」と話した。
さらに、コリント人への手紙第二10章3~5節を引用し、「さまざまの思弁と、神の知識に逆らって立つあらゆる高ぶり」(5節)を打ち砕くために必要な霊的な武器は「赦(ゆる)しと悔い改め」だと強調。「私たちが人を赦したり、悔い改めたりすると、悪魔は打ち砕かれます。自分の力で自分の心を癒やすことはできません。神様の力によって、私たちの心は癒やされるのです」と語った。
「何年も担いできた重荷からあなたが解放されることを、イエス様は願っています」とマレン氏。「その鍵は、自分の重荷をイエス様の十字架のもとに降ろして、完全に取り除いてもらうことです」と語り、イエスの招きに応答して、心の癒やしに向けたプロセスを歩み始めるように呼びかけた。
参加者との質疑の中では、赦せない人を赦すプロセスについて、「場合によっては、それを思い出すたび、苦しむたびにもう一度『赦す』と宣言する必要があります。あなたを後退させるために、悪魔がそのことを思い出させるからです。赦すことが、悪魔に対して『止まれ』という宣言になります」と語った。
仕事が長く続かず、職場で「能力がない」「評価するところがない」と言われることに対してどのように対応したらいいかとの質問に対しては、「うつなどの気分障害や不安障害があると、集中することが困難で、職場で求められるような仕事ができない可能性があります。もしそのような症状があるならば、それをまず治療する必要があります」と答えた。
その上で、「職場で言われるそのような言葉は非常につらいものです。祈りの中でイエス様に、自分をどのように思っているか尋ねる必要があります。イエス様はあなたを愛していますから、あなたについて真実を教えてくれます。しかし、私たちは他人の考えまで変えることはできません。変えることができるのは、自分の考えだけです」と話した。
マレン氏は来年6月に来日し、セミナーを開催する予定。マレン氏の著書『こころの解放』には、今回のセミナーで語られたエッセンスが詰まっており、心を解放するための「3つの鍵」についてより詳しく解説している。マレン氏の著書やDVDは、OBJのホームページで購入できる。