英国国教会の財産管理機関「教会委員会」はこのほど、最新の年次報告書(英語)を発表し、投資による利回りが2021年は13・3%と、20年の10・4%に比べ大幅に増加したことを明らかにした。投資資産の総額は、この1年間で92億ポンド(約1兆5000億円)から101億ポンド(約1兆6500億円)に増加。そのため、2023年から25年までの3年間に、投資で得た収益から12億ポンド(約1960億円)を宣教支援に充てるという。
投資収益から充てられる宣教支援のための資金は、今期(20~22年)も9・3億ポンド(約1520億円)に上る。これが投資の成功でさらに増え、次期(23~25年)はそれから約3割も増えることになる。教会委員会はさらに、その後の2期6年についても同じレベルを維持できるよう目指しており、実現すれば23~32年の3期9年間に計36億ポンド(約5700億円)もの資金を宣教支援に充てることができる。
これらの資金は、各地域の最前線で行う奉仕活動や、新しい信仰コミュニティーの成長など、さまざまな働きのために用いられることになる。また、英国国教会が掲げる30年までのカーボンニュートラル実現や、学校運営や教育など若者向けの取り組みは、資金を集中的に用いる具体的な分野として挙げられている。
英国国教会の主席聖職者であるカンタベリー大主教ジャスティン・ウェルビーは、年次報告書の発表を受けた記者会見で、この資金は30年までに教会内の子どもや青年の数を倍増させるという教会の目標を支援するものであり、「教会の最も得意とすること、すなわち神の愛をすべての人に知らせることができるように、小教区のシステムを支援するもの」だと語った。また、英国国教会にとって「歴史的な機会」であるとし、「これはイエス・キリストを宣(の)べ伝え、英国の一人一人に仕えるための、神への奉仕における大胆な投資です」と語った。
次席聖職者であるヨーク大主教スティーブン・コットレルは、英国国教会は新しいことに挑戦し、小教区内に新しいキリスト教コミュニティーを築き上げることで、「より若く、より多様な」教会へと成長する必要があるとして、次のように述べた。
「私たちは長い間、衰退の一途をたどってきました。それが、私たちがこの会話をしている背景なのです。しかし、今回の資金は、新しいことを試し、互いに学び合い、この国のより多くの人々がキリストを知るようになるのを見る機会を与えてくれるものですから、喜んで受け入れようではありませんか」
資金は、小教区や地域社会を活性化させるためのプロジェクトに対し、各教会が利用を申請できる「ボトムアップ型」で運用される。ウェルビー大主教は、以前よりもシンプルな仕組みになるとし、各地域の優先順位が何よりも重要になると述べた。
「各教区には、それぞれ特有の優先事項があります。ロンドン教区はドンカスター教区ではないし、ドンカスター教区はトゥルーロ教区ではないのです」
コットレル大主教は、これまでの仕組みが中央集権的であったことを認め、現在は過去の失敗から学び、小教区や教区とのより一層の協働を進めていると述べた。
「私たちは、中央集権的方法から離れ、小教区や教区とより密接に協力していきたいと考えています」
ウェルビー大主教はまた、これまでは資金の分配が大都市圏に集中していたが、今後は地方の小教区も対象になると付け加えた。
「英国国教会は、国内のすべての地域社会に奉仕し、生活を変え、神の呼びかけに応える存在となるよう求められています。今回の資金提供は、地域の小教区やチャプレンが神の呼びかけに応え、すべての人がイエス・キリストの福音を聞くことができるよう、宣教を支援するものです」