長崎出身のカトリック信徒が巨額の私財を投じて製作した伝説の無声映画「殉教血史 日本二十六聖人」が2日、カトリック浦上教会(長崎市)で上映された。角川文化振興財団による「バチカンと日本100年プロジェクト」の一環。約90年前の公開時と同じく、上映中に内容を解説する活動弁士、また楽団の生演奏付きで上映され、約200人が鑑賞した。
「殉教血史 日本二十六聖人」は、長崎出身で、当時、日本の統治下にあった朝鮮の京城(現ソウル)で牧畜事業を営んでいたカトリック信徒・平山政十(まさじゅう、1880~1958)が製作。平山は映画の製作に6億円もの私財を投じており、日本のカトリック教会関係者も多数協力したとされている。
豊臣秀吉の命令で、1597年に長崎市の「西坂の丘」で処刑され、その後1862年にカトリック教会から列聖された日本二十六聖人を史実に沿って描いたもので、上映時間は152分。日本では1931年に公開され、その後、米国や欧州でも上映された。米カトリック誌「ランプ」は、「米国で初めて公開された日本映画」として紹介しており、全米約200カ所で上映され、約15万人が観賞したという。
浦上教会で行われた上映イベントでは、活動弁士の澤登翠(さわと・みどり)さんが語り、無声映画専属楽団「カラード・モノトーン・デュオ」の湯浅ジョウイチさん(ギター)と鈴木真紀子さん(フルート)が演奏した。
10日には、「バチカンと日本100年プロジェクト」のメインプログラムである公開シンポジウム「バチカンに眠る日本の記憶」が、長崎ブリックホール(長崎市)で開催される。シンポジウムは昨年11月にも東京で開催されているが、長崎ではさらにプログラムを充実化。昭和天皇とバチカンの関係を示す文書の発掘、日本二十六聖人の列福成立をひもとく研究、バチカンと核兵器問題など、長崎とバチカンに関わる貴重な研究成果も多く盛り込まれている。シンポジウムの詳細は公式サイトを。