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さくら時計

さくら時計(8)目まい 星野ひかり

2022年1月6日22時41分 コラムニスト : 星野ひかり
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さくら時計(1)プロローグ 星野ひかり+

私は大みそかも働いておりました。大みそかと言ったら、家族や親族が集い合い、和気あいあいと歌番組でも見て、ぜいたくな料理をつつき合い、日付の変わる頃には年越しそばと除夜の鐘、そんなにぎやかな日でしょうか。幼い頃から、母は大みそかも変わらずに働きに出ておりましたし、そのうち母が男の人と暮らし始めてからはなおさら遠慮して、その家にはほとんど行くことがありませんでした。ですから大みそかは、この国中の家族が楽しげに過ごしていることを感じながら、寂しく過ごすつらい日でした。いつからか、できることなら大みそかにも仕事を入れて、忙しく過ごす癖がついていました。病院の清掃人という仕事でも、人が入りたがらない大みそかにシフトを入れると、それはありがたがられました。大みそかと三が日は、特別手当も出るのです。私のかき入れ時とでも言いましょうか。

病院には、長く病を患って、ずっとここで暮らしているような人もおりました。まるで自分の家のように、仲間を作って楽しげにリビングでテーブルゲームをして、看護師さんや私にも家族のように接してくれます。そんな人たちも、今日ばかりはどこかしら、寂し気でありました。

‘大みそかも働くあの人は、きっと独り身なのだろう’ 患者さんさえ、そんなふうに察したかもしれません。病院には、大みそかにも家に帰れない者同士の、痛みを分かり合うような優しさがあふれていました。独り身の女には、まだまだ風当たりの冷たい時代でありましたが、優しさやあわれみもまたあったのです。

長く酒席で働いてきたことを隠すように、私は化粧もせずに、髪も地味に編みました。しかしそれでも隠し切れない何かはあったのではないでしょうか。しかし、誰もが気付かぬふりをしてくれる優しさが、この職場にはありました。私はいつからか、自分の家のようにこの病院を愛し始めておりました。

患者さんから洗濯物を預かって、晴れた日の屋上で干していると、また、洗濯室の畳のあがりで畳んでいると、まるで愛する家族のために働く母のような気持ちになりました。家族を持つ幸せの片りんを感じておりました。それを一人一人に返しに行って、声を掛けて部屋の掃除もします。長くここにいる人たちは、まるで自分の部屋のように小さな仕切りの空間に、好きなものを寄せ集めて暮らしていました。それを大切に扱って、掃除をします。「甘いジュースの飲み過ぎじゃない? 体を悪くしてしまうわよ」。ゴミ箱にたまったジュースの缶を袋に詰めながらそんなふうに声をかけると、「許してよ、それしか楽しみがないんだから」。気恥ずかしそうに答えてくれます。そんなささやかなやりとりが、幸せでした。病のある人たちは、神様に砕かれた人のように、弱さを認めざるを得ず、だからこそ優しく、憐(あわ)れみ深い人が多かったと思います。

そして日曜日は礼拝に行きました。そうです、私は教会に通っていたのです。

さくら時計がゆっくりと針を回す中で、私はイエス様を見上げました。「私はね、教会がなかなか好きになれなかったわ。皆立派な人のように思ったの」。イエス様はうなずいて「そうだったね」と言いました。「そして、人をうらやんで苦しかったわ」。イエス様は優しくじっと見つめてくださいました。

やきもちは怖いものでした。自分に与えられた神様の恵みを見えなくさせ、他人が受けている ‘よいもの’ ばかりに目が行くのですから。神様はおっしゃいました。「わたしの恵みはあなたに対して十分である。わたしの力は弱いところに完全にあらわれる」と(2コリント12:9)。幸せな家庭や素敵なおうち、安定した仕事に健康や財力、私には ‘あったほうがよい’ と思われるものがたくさんありました。しかし、欠乏の中にこそ主は働かれ、その欠乏の中にこそ主の力が満ちあふれるというのです。そして、あなたに対して十分なものはもはや与えている、そう主は言われるのです。それは、どんな時もであるのでしょう。例えば、私が一番欠乏を感じていたときでさえ、主は「十分であった」と言われるのでしょう。それでも私は「足りない!」と叫んでばかりいたのです。

また、私の心には母への怒りがちりちりと、くすぶっておりました。私は胸に火を抱え、やけどの痛みに苦しみました。イエス様を、神様を愛していると言いながらも、その愛が私の痛みのすべてを覆おうとしていても、私は胸に火を抱え、その愛が染み渡ることを自ら拒否していたのです。それは ‘あなたの愛は十分ではなかった’ と、神様に言っているのと同じことであったのですから。私が、「わたしの力は弱いところにこそあらわれるのだ」と言われた神様の言葉を本当に分かるには、長い月日がかかりました。

掃除人として働き、教会に通い、私は目まいがするほどのまぶしさを感じておりました。ずっと暗闇を好んで、もっと暗いほうへと足を進めてきた人生でした。そのような中で私は少しずつ、明るいほうへと歩き出していたのです。ですから、一歩一歩行くごとに、光のまぶしさに目まいを起こし、倒れそうになることもありました。しかしその光は、‘イエス様のまばゆさ’ でしかなかったのです。

ある日、雲一つないほどに晴れた日のことでした。私は病院の屋上で、かご3つ分の洗濯物を干しておりました。青空に包まれて汗をかき、石鹸の甘い匂いを嗅ぎながら洗濯物を干していると、「自分はなんて幸せなのだ」と思いました。その日の帰り道、道端の野花たちがほほ笑みかけているように思いました。帰ったら、ミルクのたっぷり入ったアイスティーを入れて、賛美歌を流そうと思いました。聖書は「ヨハネの福音書の17章」を読みましょう、そしてイエス様の愛を蜜のように飲み干しましょう。そう思って、幸せでした。

しかしなぜでしょう。家に帰った私は、アイスティーも入れず、賛美歌も流さず、聖書の棚の文具入れからカッターナイフを取り出すと、自分の腕を傷つけていたのです。

床にへたり込んで、血のにじむ腕を見つめました。この痛みの中にこそ、私の故郷がある気がしました。‘痛み’ はなつかしい景色を見せてくれます。泣き叫んだあの日、路上にうずくまったあの日、帰る家もなかった夜、誰にも届かない叫び…。私はつつと涙を流しながら、‘久しぶりにタバコを吸いたい’ と思いました。

まぶし過ぎる。そう思って目まいがするとき、私は袖で隠れる腕の上のほうを、傷つけていたのです。そして安心していたのです。そう、この痛みこそ私の道であったのだ、と。それは忘れがたいほどに痛みうずき、癒やされるにはまだまだ月日が必要でした。

その時は気付いていませんでした。私が自分を傷つけるたびに、イエス様も共に傷ついていたのだということに。イエス様は私たちと共に泣き、共に傷つくお方です。私はどれほど、あなたを傷つけてきたでしょうか。十字架につけてもなお足りず、あなたを傷つけ続ける私とは、一体何者なのでしょうか。

イエス様は、傷だらけの神様です。この世にもろい肉の体を持って生まれてきて、その命が絶え果てるまで私たちに傷つけられ、今もなお、私たちと共に傷つかれ、そのすべてを負われる神様です。

それでも私たちを愛するという、この方は、一体何というお方でしょうか。(つづく)

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◇

星野ひかり(ほしの・ひかり)

千葉県在住。2013年、友人の導きで信仰を持つ。2018年4月1日イースターにバプテスマを受け、バプテスト教会に通っている。

■ 星野ひかりフェイスブックページ

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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