カナダで教会への放火および焼き討ち事件が頻発している。7月14日時点で、未遂で終わった件も含めて、少なくとも45の教会が被害に遭っている。被害に遭った教会は、いずれも先住民の土地にあるカトリック教会がほとんどで、17の教会が燃やされ、中には全焼してしまったものもある。
事件の引き金となったのは、先住民の子どもたちが在籍していた全寮制の寄宿学校の跡地から、身元の分からない大量の遺骨が発見されたことによる。これまで発見された遺体はおよそ1000体におよび、推定3歳の子どものものまであった。これらの寄宿学校は、カナダ政府による先住民同化政策の一環として進められたもので、1883年から1996年まで132校が運営され、そのうち6割がカトリック教会による運営だった。先住民の子どもたちは、親元から引き離されて、これに入学することが義務付けられ、収容された総数は15万人にも及ぶ。この学校制度は、先住民の言語や文化の根絶を目的として意図されたのだ。
カナダ政府は2008年に「真実と和解の委員会」を設立し、7千人の当事者から6年かけて1500時間にも及ぶ聞き取りをし、2015年に328ページにおよぶ報告書にまとめた。委員会は、15万人の生徒のうち約6千人が学校にいる間に死亡したと推定している。
大量の遺骨発見は、当時の差別や虐待を裏付けるもので、今回、教会の焼き討ちという形で批判者らの怒りが噴出したのだ。トルドーカナダ首相は、教会の焼き討ちという暴力的手段による抗議を容認しないとする一方で、カトリック教会の関係施設内での遺骨発見という由々しき事態に対して、教皇のカナダ訪問と謝罪とを、バチカンに強く要求した。
ある時代の残した負の遺産と傷跡によって苦しんでいる当事者が、今も多数生存している。このような傷を癒やし、和解の橋を架けるキリスト教会の役割は決して小さくはない。しかも今案件に関しては、教会に関係のある機関が当事者として関わっている。
教会が暴力抗議から守られることと、被害を受けた先住民らが主の打ち傷と福音の和解の働きによって癒やされ、先住民も入植者も福音にあって一つとなり前進するよう祈っていただきたい。
■ カナダの宗教人口
プロテスタント 10・1%
カトリック 40・1%
イスラム 2・9%