多くの注目を集めた正教会聖大会議は、開催前まで全正教会会議と呼ばれていたものの、14の独立正教会のうち4つの正教会が出席を取りやめる事態になったが、正教会の一致を声高らかに主張し、また中東のキリスト教徒の保護を求めて閉会した。
何年もかけて計画されてきたこの会議は4つの正教会の不参加によって、開会前から打撃を受けた。最も大きかったのは、巨大なロシア正教会の不参加で、同正教会は事前に全ての会議項目と事前文書に署名していたにもかかわらず、会議には出席しなかった。
しかし、神学者や主教たちはこの会議が正教会世界の権威を保持し、その決定は出席していない正教会も含めて、あらゆる正教会によって考慮されることになると断言した。教書の文面は、その権限あるいはそれが開催されることにさえ反対する正教会を念頭に置きながら作成されている。神学的論調においてはかなり保守的である一方で、ローマ教皇フランシスコによって以前出された声明と同様の語句を用いて、グローバル化にまつわる問題や科学進歩と倫理的問題なども取り上げている。
正教会聖大会議の結論として出された教書には、唯一の聖なる普遍的な使徒継承教会としての正教会であるとする、断固とした主張が含まれている。そして、プロテスタント教会やカトリック教会と統合をしようとする動きを非難した教会会議をはっきりと示しつつ、全正教会が出席したわけではないが、決定した全てを権威あるものだとして受け止めている。
教書ではまた、「現代の世俗化した社会にいる神の民の再伝道と、教会の終わりなき義務として、ハリストスをまだ知らない者たちへの伝道」の必要性も語られている。
「現代の婚配(結婚)と家庭の危機的状況」について、教書では「それは、責任ある自由の危機、自己中心的な自己実現への落ち込み、個人的自己満足、自己充足、自主独立感との一体感、愛の犠牲的精神の忘却から起こる男女間の結合の機密的性質の欠如の結果である」としている。また、婚配とはただの契約関係というよりも、「愛と神の恩寵(おんちょう)という何にも比べがたい恵みの中で教会によって養われる実習(ワークショップ)」であると述べられている。
教書は「文明の発展とは相いれない保守主義と教会とを同一視することは、恣意的で不適切なものである」と主張する一方で、特に生物学や神経科学の領域においては抑制の利かない科学進歩のリスクを警告している。「人間は極端で危険な方法で自分自身の本能のまま、以前よりも集中的に実験を重ねている。人間は、生物機械、非人格的な社会単位、または制御された思考の機械的装置になってしまう危険をはらんでいる」という。
教書はさらに、グローバル化とナショナリズムの問題も取り上げている。さまざまな国々の文化的伝統が衰退し、その代わりに、経済という名で社会を破壊する「グローバル化という考え方」が台頭してきていることに対し警告を発している。
シリアのアンティオキア総主教庁は、管轄権の対立から出席を拒んだが、正教会聖大会議は中東のキリスト教徒を代表して次のように強く訴えた。「正教会は、キリスト教徒、また他の迫害されている中東の民族的、宗教的少数者たちが直面する状況について、特に懸念している。とりわけ、キリスト教発祥の地に生き残っているキリスト教徒(正教会、古代東方諸教会、また他のキリスト教徒)を守るために、その地域のさまざまな政府に対して訴える」
出席を拒んだグルジア正教会は、主に他教派とのエキュメニカルな対話に対して懸念を示していた。同会議は、こうした対話を快く思わない保守派層を意識して、「エキュメニカルな対話により、他のキリスト教派が正教会とその伝統の正統性に対して、以前よりもより親しみを持つようになっている」と述べ、エキュメニカルな動きを擁護した。一方で、「正教会は決して神学的ミニマリズムを受け入れてはいないし、その教義伝統や伝道精神が問われるなど許されることではない」と続けている。
モスクワ総主教庁対外教会関係部議長代理長司祭のニコライ・バラショフ氏は、ロシア正教会では7月に、教書を検討することになるだろうと述べた。バラショフ氏はインタファクス通信への文書で、聖大会議と呼ぶのを避けて、「ロシア正教会聖務会院は、通常7月に行われる次の会議で、クレタ島で開かれた各地の10正教会の教主および代表たちの集まりで出された文書に対するモスクワ正教会の見解を表明するために、その文書を検討している」と述べた。