女性の人権、環境汚染、子どもの貧困、保育園問題、TPP、安全保障、経済・・・など、さまざまな政治課題を女性たちが話し合う「未来をこの手に!大討論会 ~私たちは諦めない!~」が15日、東京都千代田区の参議院議員会館で行われた。関東近県を中心に女性たち約90人が参加した。話し合いに参加することはできないが、オブザーバーという形で一部男性の姿もあった。
春らしい装いに身を包んだ女性たちは、討論会開始前から続々と会場に詰め掛け、殺風景だった会場に花が咲いたようだった。主催者の1人で、カトリック信徒の芦澤礼子さんに話を聞いた。
企画は今年1月、「全日本おばちゃん党」の新年会時に持ち上がった。同党は2012年、ヒューマンライツ・ナウに所属する大阪国際大学准教授の谷口真由美さんが発足させた市民団体だ。フェイスブックを中心に呼び掛け、主な議論はフェイスブック上でなされる。性自認が男性である場合は参加できない「女性」の団体だ。
「オッサン政治に、われわれから提言していくことが必要だ!」ということで、今回の大討論会をきっかけに、女性目線の「マニフェスト」の作成を目指すのだという。企画段階から関わったメンバーは、約15人。子育て中の女性も多く、話し合いは、主にフェイスブックを使用した。初めて参議院議員会館に入るといった人も多かったが、皆で勇気を出し合ってまずは国会内を回り、趣旨に賛同してくれる女性議員に協力をお願いした。
「女性が声を上げて、その声を国会に届けることは大切。昨秋の安保法強行採決の場でも、国会内に外で声を上げる人たちの声が届いていたと聞いた。私たちは、諦めず声を上げ続ける」と芦沢さんは話す。
「私は、聖書にもあるように『隅の親石』となって、女性たちの活躍を支えたい。キリスト教の教えは、平和をつくること。私なりに活動をしていきたい」と話した。
集会は、2人の有識者によるミニ講演会から始まった。現在、国会で審議中のTPPについて、NPO法人アジア太平洋資料センター(PARC)事務局長・理事の内田聖子さんから話があった。
「TPPは、深刻、かつ重要な問題。さまざまな政治課題があるが、TPPはそのどれともつながっている。農家の人たちだけが関係あるか・・といったら、そうではなく、日本に住む誰もが関わる問題といってよい。関心を持ち続け、周知に努めていきたい。安保法制の時のような強行採決は、絶対に許してはいけない」と話した。
ミニ講演会のもう一つの課題として、「沖縄米軍基地と日本外交のリアルな実態」と題した15分の講演会が行われた。講師は、弁護士で「新外交イニシアティブ」事務局長の猿田佐世さん。
「日本政府は、沖縄の声は聞かないが、アメリカには耳を傾ける。アメリカが風邪を引けば、日本は肺炎になると言われるほど、日本にとって、アメリカの影響は大きい。よく『アメリカがこう言っているのだから・・』と『アメリカの声』を利用する外交が見られる。しかし、『アメリカの声』とはいったい誰の声なのか? アメリカの有識者か? オバマ現大統領か? 『アメリカの声』とされるモノの中には、日本の政治家や企業がワシントンに出向き、『ワシントン発』の声として伝えることで、政府を動かすことがある。これを『ワシントン拡声器』と呼んでいる。このようなことも考えつつ、今後の沖縄問題、日本外交を考えていくきっかけになれば」と話した。
大討論会は、それぞれ六つのテーマに分かれる「ワールドカフェ形式」で行われ、それぞれのテーブルには有識者がファシリテーターとして席についた。「クォータ制・人権」では、NPO法人エンパワメントかながわ事務局長の池畑博美さん、「環境汚染・原発・エネルギー」では、東京電力株主代表訴訟原告団事務局長の木村結さん、「格差・貧困・雇用・子育て・教育」では、しんぐるまざぁーず・ふぉーらむ理事長の赤石千衣子さん、「TPP・医療・食」では、ミニ講演会を行った内田聖子さん、「安保・基地・外交政策」では、同じく講演を行った猿田佐世さん、「アベノミクス・経済」では、大田区議会議員・市民アナリストの奈須りえさんがファシリテーターを務めた。
「安保法制が可決、施行された今、本当に自衛隊が戦地に派遣されるようなことがあるのか?」などといった防衛問題から、子育て世代の女性に身近な保育園問題まで、熱い議論が交わされた。
それぞれのテーブルには、女性の区議会議員、県議会議員や国会議員の姿もあった。超党派の集会だったため、与党自民党、民進党などの各野党からも参加する議員の姿が見られた。
クリスチャンの主婦(神奈川県在住)は、「教会に行けば、スリッパをきれいに拭く人、並べる人、賛美の演奏をする人、教会学校の子どもたちに聖書の言葉を伝える人など、さまざまな役割がある。女性にも女性の役割があって、私たちからこのような課題について考え、提言することはとても重要なことだと思う」と話した。