性同一性障害と診断され、現在は女性として経済産業省に勤務する40代の職員(戸籍上は男性)が13日、女子トイレの使用や異動を、戸籍上の性別を変更しなければ認めないとした同省の対応は不当で、上司らの発言により精神的に追い詰められたとし、処遇改善と、約1650万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。性同一性障害に関係して職場の処遇改善を求める訴訟は、全国で初めてだという。時事通信などが伝えた。
時事通信によると、この職員は男性として入省した後、性同一性障害の診断を受けた。ホルモン投与などをし、2010年から女性としての勤務が認められたという。部署内では事情を説明し、女子更衣室や、職場から2階以上離れた女性トイレの使用は許可されていた。
しかしその後、異動するためには、性別適合手術を受け、戸籍上の性別の変更をしなければいけないと言われたという。また、戸籍上の性別を変更せずに異動した場合、戸籍上は男性であることを説明しないと女子トイレの使用は許可できないと言われ、事実上異動ができない状態だったという。
時事通信によると、職員は健康上の理由で手術は受けられない。人事院に不服を申し立てていたが、退けられていた。また、上司からは「手術を受けないなら、男に戻ったら」などと言われ、精神的に追い詰められ、約1年休職していたという。
性同一性障害は、心と体の性が一致しない状態の医学的な疾患名。性同一性障害特例法では、「生物学的には性別が明らかであるにもかかわらず、心理的にはそれとは別の性別(以下「他の性別」という)であるとの持続的な確信を持ち、かつ、自己を身体的及び社会的に他の性別に適合させようとする意思を有する者であって、そのことについてその診断を的確に行うために必要な知識及び経験を有する2人以上の医師の一般に認められている医学的知見に基づき行う診断が一致しているものをいう」と定義している。
戸籍上の性別の変更には家庭裁判所の審判が必要で、同法は、1)20歳以上であること、2)現に婚姻をしていないこと、3)現に未成年の子がいないこと、4)生殖腺がないことまたは生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること、5)その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること、の5つの条件を設けている。