【CJC=東京】教皇フランシスコは8日、婚姻無効裁判の効率化を促す2件の自発教令を発布した。バチカン放送(日本語電子版)などが報じた。
カトリック教徒が結婚の事実を取り消す「婚姻無効」の手続きを改正するもの。寛容な教会を目指す改革の一環と見られる。
カトリック教会は伝統的に民法上の離婚を認めず、教会裁判所が特別な場合のみ、婚姻無効を宣言してきた。この手続きを経ずに離婚して再婚した場合は姦淫(かんいん)の罪を犯したとみなされ、一部の儀式に出ることを禁じられる。
教皇はかねて、婚姻無効の手続きには数年にも及ぶ期間と多額の費用がかかることを指摘し、「あきらめてしまう人も多い」と懸念を示していた。
自発教令は、「ミティス・ユデックス・ドミヌス・イエズス」と、「ミティス・エト・ミゼリコルス・イエズス」の2件。「温和な裁判官、主イエス」の意味を持つ前者はラテン教会法に、「温和で慈しみ深きイエス」の意味を持つ後者は、東方教会法に対応して記された。
教皇は教令の前文で、キリスト教的家庭の基盤・原点である婚姻の、信仰と教えにおける一致を保護することは教会の課題であると強調した。
一方で、多数の信者たちが婚姻問題に関する自分の良心に対処することを望みながらも、教会の裁判システムへの物理的・精神的距離から、それを諦めていることが多いとも指摘した。
教皇は、2014年10月に開かれた前回のシノドス(世界代表司教会議)でも、婚姻無効裁判の迅速化と近づきやすさを望む意見が司教たちから上がったことを踏まえ、婚姻の無効を促進するためではなく、裁判の迅速性を図る意味でこの教令を記したと述べている。
婚姻無効裁判は、婚姻の「無効」(本来の無効性)を審理するもので、有効な婚姻を「無効化」するためのものではないと再確認した上で、今回の改革の主な要点を示している。
婚姻の無効が宣言されるためには、これまでは同一の判決が二つ必要とされていたが、ただ一つの判決で十分と変えられた。
また、この改革では、婚姻無効裁判の中心を司教に置いている。各教区司教は教区の裁判所を設け、その長は常に1人の聖職者でなくてはならない。裁判官団が構成できない場合は、聖職者であるただ1人の裁判官でよい。
さらに、教令は、裁判の無償性を述べている。裁判所の人員への適切で尊厳ある報酬の他は、裁判の進行にかかる費用の無償を保証するよう求めている。
AFP通信は、バチカン(ローマ教皇庁)の専門家らが、これまで1年にわたって検討してきたと報じている。
「婚姻の無効化に関する検討委員会」を率いてきたピオ・ビト・ピント枢機卿は記者団に、今回の改革は18世紀半ば以来最大のものと述べた。
手続きを簡素化したことで、今後手続きの申請増加が見込まれるが、ピント枢機卿は、この書簡は婚姻無効化が認められる特別な条件を改めるものではないと述べ、今回の改革が事実上、教会による離婚の承認につながるのではという見方を払拭(ふっしょく)したとAFP通信。