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貧民救済に命賭けて

貧民救済に命賭けて―山室軍平の生涯(6) 売られる少女、捨てられる子ども

2015年5月1日17時08分 執筆者 : 栗栖ひろみ
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関連タグ:山室軍平救世軍石井十次植村正久

明治24年(1891年)10月のことである。岐阜から愛知にまたがる濃尾地方に大きな地震があり、家は残らず倒れ、火事が発生、辺りは焼け野原になった。死体が累々と横たわり、幼い子どもは泣くことも忘れたように茫然(ぼうぜん)と肉親の傍に立ちつくしていた。その悲惨なさまは多くの人の心を動かし、各地で孤児救済の運動が始まった。

そんな時、軍平は忘れ得ぬ友、石井十次から援助を依頼され、岡山孤児院に駆けつけた。そして、友人、知人の間を回って古着、シャツ、古足袋(たび)、その他不用品を集めてきた。石井は各地で孤児を見つけては連れてきたが、その数は40人ほどになった。孤児が施設に引き取られるのを見て、人々は外国に売られるのだろうとか、見世物にされるのだろうとかいろいろな噂を流した。軍平たちはこうした一般の誤った考えを取り除き、この事業が神と人の前において正しく、愛をもって始められたことを証明しなくてはならなかった。

ちょうど名古屋の白壁町に鉛筆製造所のために建てられた家があったので譲ってもらおうと交渉すると、200円ということだった。2人はその資金繰りに奔走した。

そのうちに新年を迎え、軍平は築地の新栄教会から招かれたので、その場で岡山孤児院のことを話して協力を求めた。たまたまそのときの説教が「幼な子を拒むな」という題であったので、人々は心を動かされ、牧師の貴山幸次郎(きやま・こうじろう)をはじめ、中川嘉兵衛(なかがわ・かへえ)といった人たちが、合わせて100円を寄付してくれたのだった。

さらに、植村正久(うえむら・まさひさ)が牧していた一番町教会と横浜の連合初週祈祷会とがそれぞれ2、30円の寄付をしてくれた。また、東京各地を回って講演をすると、ある人は2円、ある人は5円というようにお金をささげた。それから、あの懐かしい築地福音教会に寄ると、伝道学校に行くためにお金を出してくれた山中孝之助が喜んで迎えてくれた。そして彼の働きを祝福し、協力してくれたのである。また、サマリタン会の北島剛医師も祈ってくれて2円の寄付をしてくれた。

これらの人々の献金を全て合わせると、185円になった。それを大切に懐に入れて岡山に戻ってみると、石井は20円ほど集めていたので、早速白壁町の家を買い取り、そこに孤児院の基礎を固めたのだった。

その頃、ひとつの問題が日本に起こっていた。それは、人身売買であった。貧しさ故に、あるいは家庭の事情から、娘たちが売られ、多くが娼妓(しょうぎ)として吉原やその他の遊郭でいかがわしい商売を強いられていたのである。

ある日、奉仕の期間が過ぎて軍平が孤児院を出ようとしたとき、入口でただならぬ騒ぎがした。驚いて飛び出していくと、一人の少女を後ろにかばって、石井が見知らぬ男と押し問答をしていたのである。

「いやです! どうしても行くのはいやです」
少女は髪をふり乱して石井にしがみつく。
「ふざけるんじゃねえよ。おまえのおっ母さんに貸しがあるんだ。13円でおまえを買ったんだからな」
男は少女の手首をつかむと無理に引きずって行こうとした。それを見かねて、軍平は男の袖をつかんだ。
「私がこの人の借金を返しましょう。13円くらいでこういう若い娘の人生がむちゃくちゃになるなんて本当に情けない」
そして彼は借用書を書き、自分の住所を教えた。
「逃げも隠れもしませんから、1週間たったら取りに来てください」
男はようやく納得して、娘を放して引き上げて行った。

その娘は孤児院で働きながら、そこで生活することになった。軍平は同志社に帰ると、早速友人たちに呼びかけ、気の毒な少女の話をしてから募金を集めた。彼の話には説得力があったとみえ、たちまち13円の金がそろった。それを男に払ってしばらくすると、石井から感謝の手紙が来て、すっかり少女は孤児院の生活に馴れたことを書いてきた。

この頃から、軍平は社会の底辺で苦しむ者に、ただ福音だけ語っても救えないことを感じ始めていた。空腹にさいなまれている人にまず必要なのは、一杯の温かいご飯なのである。彼は伝道者として立つよりも、社会事業家として底辺の人々に仕える決意をした。

そして祈りつつ、そのような道が開ける時を待ちながら、宮城県茶臼原(ちゃうすばる)にある孤児院で奉仕をしていた。すると程なくして、石井が良い知らせを持ってきた。それは、英国から救世軍の一隊がやってきて第1回の集会を東京で開くというのである。

「あなたにとって、きっと良い道が開けますよ」と、石井は言った。(続く:救世軍に身を投じる)

■ 貧民救済に命懸けて:(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)(9)(最終回)

◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。派遣や請負で働きながら執筆活動を始める。1980〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、1982〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、1990年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)、2003年『愛の看護人―聖カミロの生涯』(サンパウロ)など刊行。動物愛護を主眼とする童話も手がけ、2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で、日本動物児童文学奨励賞を受賞する。2015年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝の連載を始める。編集協力として、荘明義著『わが人生と味の道』(イーグレープ、2015年4月)がある。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:山室軍平救世軍石井十次植村正久
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