「日本の信徒発見」とは、1865年3月17日、長崎の浦上に潜伏していたキリシタン十数名が、大浦天主堂のフランス人宣教師ベルナール・プティジャン神父に信仰告白した、キリシタンの復活ともいわれる出来事。この「信徒発見」から今年で150年。この節目の年、女子パウロ会では、殉教に至るほどの迫害の中、司祭不在で信仰を守り抜いたキリシタンたちの思いを受け継いでいくことを願い、小冊子『祈り』を出版した。この出版を記念して、写真撮影した峰脇英樹氏の写真展が、東京・銀座の教文館にて開催されている。
峰脇氏は、長崎県五島列島出身のフリーカメラマン。これまでも五島列島を中心に、教会の建物や、カトリック信徒の信仰生活について写真を撮り続けてきた。今回の展示会では、小冊子『祈り』の写真の他にも、教会の建物や聖母像、山や海の風景、祈る人々などの姿が展示され、美しい祈りの世界が広がっている。
「教会の中の空間が復活の物語になっている」と、峰脇氏は本展示会のメッセージの中で述べている。峰脇氏が撮った教会の写真を見ると、教会内の八角形の柱や、天井板を支える梁、椿の花びら、究極的には、浦上天主堂の屋根にそびえる十字架にさえもハートの形を見ることができる。
これについて峰脇氏は、「教会の全てに神の御心が現れている」と言う。さらに、「教会堂に飾られているいばらの冠さえもイエスの復活のために作られている」と力説し、教会を撮影することを通して、殉教ではなく、復活を伝えたいという思いを語った。
写真を撮るとき、峰脇氏は「天にいる神」「地にいる神」ということが思い浮ぶと明かす。展示されている写真を見ると、神様から与えられた自然現象と、神様の被造物である人間が美しくつながっていることを感じさせてくれる。また、昔の人はこの場所で何を感じて、どういうことを思いながら信仰を守ってきたのか想像しながら写真を撮っているとも言う。
展示の中に、聖金曜日(受難日)に小さな子どもが無邪気に祈る写真がある。峰脇氏は、子どもが当たり前に祈って生活できることが、過疎化によって危ぶまれていることにも言及した。現在、五島では信徒が15%だという。政府が目指す、「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」への世界文化遺産登録についても、登録することで観光客は増えるかもしれないが、それが信仰の継承へつながるかは未知数だと懸念する。
その一方で、峰脇氏は、人数的に見たら少数派である弱い立場の信徒たちが、どのように信仰を日常生活の中で守っていくのか、「長崎の信徒発見」から「日本の信徒発見」となる3月17日から長崎の教会がどう変わっていくのか、こういったことを見据えながら今後も写真を撮り続けたいと静かに語った。
カトリック長崎教区の高見三明大司教は、「この(信徒発見の)出来事は、長崎の信徒だけの出来事ではなく、ザビエルから始まって成長と殉教と潜伏の歴史を通して、歴史を育み伝えてきた日本の教会の『信仰の原体験』です」と、昨年の年頭教書で述べている。今年から3月17日は、教皇庁により日本の教会に固有の「日本の信徒発見の聖母の祝日」として許可され、特に記念すべき年となった。
峰脇英樹氏の写真展は、22日まで銀座・教文館(午前10時~午後8時、日曜は午後1時から)で開催されている。その後、東京カテドラルのスペースセントポールでも開催される予定。