「自分にして欲しいことを他の人にもしなさい」〈マタイ7:12〉
人が集まる所には、いつでも「いて欲しい人」「いて欲しくない人」「いてもいなくてもいい人」の三種類の人間がいます。会社においても同じ事が言えるかもしれません。
そこで「必要とされる人」となるためには、能力を伸ばす必要があります。一般にビジネスパースンに求められる能力とは次の三つです。
① 専門的技術能力
② マネジメント能力
③ 人格的能力
そして、会社での地位が上がるにつれて「人格的能力」が要求されるようになります。
扇谷正造著『トップの条件』の中に、リーダーに求められる資質として「花であること、器であること、恕(じょ)の精神を持っていること」が挙げられています。これこそ、まさに「人格的能力」といえるでしょう。
まず「花である」とは存在感があって、その人がそこにいるだけで周りがパッと明るくなるような人です。積極的・肯定的・創造的な心構えで周囲の人々を引っ張っていく人です。時々「将来の見通しが暗い」というリーダーがいますが、見通しが暗いのではなく、その人の心の中が暗いのです。
第二次世界大戦の時アメリカの大統領トルーマンは、ドイツより早く原爆を造ることを科学者たちに命令しました。しかし科学者たちの答えは「不可能」というものでした。そこで「できる」と考える科学者を集め完成させたのです。これは「マンハッタン計画」と呼ばれ、その中心人物はオッペンハイマー博士です。
次に「器である」とは、度量の広い人のことです。ゆとりをいつも感じさせ、周りの人に安心感を与える人です。リンカーン大統領が政敵とも思える人物を重要なポストに登用しようとした時、側近の者たちは皆反対しました。
その時リンカーンはこう答えました。
「大切なことは彼が私をどう評価しているかではなく、私が彼をどう評価しているかである」
何と心の大きな人物でしょうか。
最後に「恕の精神」とは、相手の立場に立って考えることのできる能力です。これは聖書が教えるゴールデン・ルールでもあります。「自分にして欲しいことを他の人にもしなさい」
「大草原の小さな家」というテレビ番組があります。父親役をしているのはマイケル・ランドンです。彼がある舞台で放浪者の役をした時、共演者の一人が彼の靴紐が弛んでいるのを見て注意してくれました。彼は「ありがとう」と言って締め直しました。しかし、いよいよ出番という時に彼は再び紐を弛めて舞台に上がりました。
この様子を見ていた人が後でその理由を聞きました。すると、マイケルはこう答えました。
「私の役は放浪者です。長い間歩いて来たので当然靴紐は弛んでいるはずです。しかし、彼の好意を無駄にしたくなかったので、その時は靴紐を締め直したのです」
彼のすばらしい演技は彼の心優しさから生まれて来たものなのです。このような人はどこにいても必要とされる人となることでしょう。
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