「革新的ではあるけれど、極めて伝統的な優れたサウンド」により、米国で今やマーティンをしのいで最も人気のあるアコースティック・ギターのブランド、テイラー(Taylor)。日本ではゴスペル歌手で牧師の小坂忠氏も使っている。カリフォルニア州にある同社を1974年にカート・リスタグと共に創立者したボブ・テイラーは、クリスチャンだという。
ギターの棹(さお、ネック)と胴体(ボディー)の接続部分で、脱着・調整をしやすくしたネックジョイントと、ネックやボディーの振動を捉えるピックアップ・マイクという革新的な技術。米サドルバック教会のリック・ウォレン主任牧師が作った英文サイト「Pastors.com」で、2011年に再録された記事の中で、テイラーは創造的な技術革新と信仰について、こう述べている。
「私が心から信じているのは、信仰の歩みを進めることによって、自分で未来を創造するのだということです。私はここでどのようにして私たちが技術と創造性を用いて問題を解決するのか、そしてすでに良いものをどうやって改善するのかと尋ねられました。私たちが未来を自らの手中に収めて歩むべき明るい道を創り出すことに成功して自らを褒めるとき、忘れてならないのは、それは全て信仰に関わることであって、私たちが自らの信仰を表すときに、私たちが神に従うことで私たちを祝福してくださるということ。そうやってうまくいくのです」
その信仰はどうやってギターという形になったのか。2006年に米国のギター関連サイト「Guitar International」に掲載されたインタビュー記事の中で、テイラーはこう語っている。
「今でも音楽を演奏してますよ。私の音楽歴の大半は教会がその舞台です。米国では、教会で音楽が生きているし、音楽を演奏する機会がとてつもなく多いのも教会です。私はそれを20年間やってきましたし、素晴らしいミュージシャンたちと演奏してきました。それは練習をしたり人前で演奏する機会になります。本当にすごくわくわくしますよ」
キリスト教主義大学協議会ワシントン・ジャーナリズム・センターの所長であるテリー・マッティングリー氏は、2011年6月11日に宗教と霊性に関する英文サイト「Patheos」に掲載された記事の中で、次のように記している。
「これが、彼のギターが高音と中音域のとても強い(そして電気系統とピックアップを使いやすい)主な要因の一つなのです。彼のギターは、とりわけ初期のものは、パーカッションやバックのボーカルと一緒にアコースティック音楽を演奏するために作られたのです」
つまり、「プレイズ&ワーシップ」のバンドで高音が輝くギターだと、マッティングリー氏は言う。
日本でも全国の楽器店にあるテイラーのギターから奏でられる音の背景には、創始者自身が神に従う信仰の歩みを進め、神の祝福を受けた技術革新をし、さらにそのギターを演奏してきた教会のコンテンポラリーな音楽があるということになる。
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なお、日本では、アコースティック・ギター専門の季刊誌「アコースティック・ギター・マガジン」(リットー・ミュージック刊、2007年、WINTER ISSUE Vol. 31)で、兵庫県西脇市のギター製作家でクリスチャンでもある白井忠義氏が、演奏で祈りを表現することで「安らぎを与えられるようなギターを作りたいですね」と語っている。白井氏のブログは、同年以降更新されていないが、彼の作った Shirai ギターには、Bless-3DHC、FP-3DHCAなどがあり、Bless(祝福)、FP(Faith / Praise、信仰 / 賛美)というキリスト教にちなんだ名前が付けられている。