世界教会協議会(WCC)のチームがイラク北部の宗教指導者や地域社会の人たちと会い、自称「イスラム国」(IS)の武装集団の攻撃による暴力や立ち退きの高まりという状況について評価を行った。WCCが4日、公式サイトで伝えた。
WCCは今回の訪問について、「(訪問)グループは、何千人もの人たちが死んだまま、そして何十万人以上もの人たちが自らの住居や地域社会から追い立てられたままという、暴力の深刻さ、激しさ、またその突然さに深く心を動かされて帰ってきた。緊急に人道上必要なものがまだ満たされていないことは明らかであった」と伝えた。
そのため、WCCは世界中の345の加盟教会に対し、ACTアライアンスといった協力団体や他の責任ある援助組織を通じて、この人道危機にすぐに対応するよう訴えている。
WCCのオラフ・フィクセ・トゥヴェイト総幹事は同日、スイス・ジュネーブにあるWCCオフィスで、「国際社会はその責任を果たして、この地域にいるキリスト教徒や他宗教の共同体の人々を含む、これらの極端に脆弱な人たちを守らなければならない」と語った。
「これは、全ての責任ある宗教・社会的指導者たちが共に立ち、この残虐行為を非難してこの状況に取り組むべき状況だ」「正義と平和のために祈り続け、私たちに何ができるかを問うてみよう」と、トゥヴェイト氏は訴えた。
「私たちはイラクにいるキリスト教徒の姉妹兄弟たちや他の宗教共同体のことを深く憂慮している」「だから、WCCの職員が今回、教会や他の宗教指導者たちとこの連帯の訪問をしたことは重要だ」と語った。
今回の訪問のリーダーを務めたWCC国際問題教会委員会(CCIA)のピーター・プローブ局長によると、「『イスラム国』が代弁していると主張するもの以外の宗教集団はすべて、キリスト教徒やヤジディ教徒に加えて、他のイスラム教団体も含めて、ISに狙われてきている。ヤジディ教徒たちは、大虐殺作戦にも等しいとりわけひどい暴虐な扱いを受けてきている」という。
プローブ氏は、地元の援助機関によれば、20パーセント未満の国内避難民(IDP)は十分な緊急支援で最低限のものを受け取っていると報告した。この数値に対して、トゥヴェイト氏は、この地域の気温が冬が近づくにつれ下がり、暴力を逃れてきた多数の人々が十分な援助もないままであることから、人道的対応を急速に増大させなければならないと述べた。
同時にトゥヴェイト氏は、「イラク政府にはその市民を守る責任があり、もしそれができないのであればその時は国際社会が立ち入って、故郷から容赦なく追いだされた人々の安全を確保しなければならない」と指摘した。
また、「この地域における国際的な軍事力の適用がもしあれば、国連安全保障理事会の権限の下に行われるべきだ」と主張。「この地域における国際的な軍事介入が持つ最近の歴史や、とりわけ近年におけるイラク国民と社会への悲劇的な影響からすれば、そのような軍事力の適用には非常に注意しなければならないことの理由は、あまりにも自明なことだ」と語った。
これまでに起きた暴力によってすでに住居を追われた膨大な数の人々に加え、一部の推計によれば、60万人を超える人々が最近の攻撃によって住居を追われた。
イラン北部のクルド人自治区では、地域政府が困難な状況にあっても、住居を追われた人々に避難場所や支援を提供することで、格別な人道的対応を示してきたと、プローブ氏は報告した。
同自治区にあるほぼ全ての地域の教会も、多くの国内避難民を教会や教会の建物、土地やその他の地所で受け入れている。ACTアライアンスの加盟団体は、直接または、クリスチャン・エイド・プログラム・ノハドラ・イラク(CAPNI)やREACHのような地元にある援助機関の協力団体を通じて、この地域に関与しつつある。
プローブ氏によると、大きな懸念事項は冬が近づいていること。国内避難民のほとんどが着の身着のままで逃げてきたため、冬を耐えられる衣服を持っていない。国際的な人道的対応のための支援を急激に増大させる緊急の必要性があると、同氏は述べた。
トゥヴェイト氏は、WCCはすでに対応している加盟教会や専門の奉仕団体に感謝するとともに、全ての加盟教会と多くのACTアライアンス加盟団体に対し、この暴力によって苦しんでいる全ての人たちに応えて関与するよう呼び掛けると述べた。
イラクを訪問したチームには、WCC職員のカーラ・キジョイアン氏が含まれていた。