チャイルド・ファンド・ジャパン(以下、チャイルド・ファンド)は、フィリピンの台風30号による被害状況を現地調査したスタッフの報告をホームページ上に掲載し、支援が圧倒的に不足している被災地の現状を伝えている。
チャイルド・ファンドは、被災直後の11月11日から、現地の協力センターと協働で緊急支援を開始した。特に大きな被害を受けたレイテ島タナワンは、チャイルド・ファンドが1999年まで支援を行っていた地域だ。当時パートナーとして協働していた地元の団体からの支援要請を受け、被災状況の調査と緊急支援の組み立てのため、フィリピン人3人と日本人1人からなるチームをタナワンに派遣した。
現地入りしたスタッフは、文字通り、街全体が破壊されている光景をみて言葉を失った。頑丈に建てられた建物も屋根が無くなり、大きく曲がった骨組みだけが残されていた。大きな樹が、根っこからなぎ倒されていた。街のいたる所に瓦礫が積まれ、処理されないままに放置されていた。
街で出会った子どもたちは、破壊された街並みには似合わないほど明るく、元気に遊んでいるように見えた。しかし、それは子どもたちが負った心の傷が見えていないだけだった。
調査の最終日、子どもたちの心のケアもかねて、子どもたちを対象としたグループ・ディスカッションを行った。13人の子どもたちが集まり、円を作って椅子に座ると、最初はみな恥ずかしそうに笑っていた。だがディスカッションが始まると、子どもたちは被災した状況を思い出し、目に涙を浮かべながらそれぞれの体験を語り出した。
参加した子どもの一人は、家の屋根の高さまで水が押し寄せ、屋根につかまって流されないよう必死に耐えていたという体験を、涙ながらに語った。大切な人や住む家を失い、心に傷を負いながらも、子どもたちは懸命に生きていた。
いま欲しいものについてたずねると、きれいな水、学用品、海から遠い新しい家、調理用品、家具などの答えが返ってきた。タナワンでは電気が復旧しておらず、水道も止まったままで、きれいな飲み水や新鮮な食料を手に入れることも難しい状況だった。支援は圧倒的に足りていない。
グループ・ディスカッションに参加したある男の子は、「台風が来るまで、僕はあまり真面目に勉強していませんでした」と話した。だが、自宅が台風の被害を受けて学校に通えなくなったことをきっかけに、心境が変わったという。「今、奨学金を申し込んでいます。一生懸命勉強して、学校を卒業したい。大学にも進学して政治学を専攻して、この国の復興に貢献したい」と意気込んだ。
チャイルド・ファンドは、食料を含む緊急支援物資の配給や医療支援に加え、被災した子どもたちを守るための支援活動を実施している。
チャイルド・ファンドが実施する緊急・復興支援事業への寄付などの詳細は、チャイルド・ファンドのホームページ。