イスラム教で昼間に断食を行うラマダーン(断食月)が7月20日から8月18日までもたれた。ラマダーンが始まった直後の7月22日には、イラク国内でイスラム教シーア派とスンニ派の対立による一連の爆破事件が起こり100人以上の死者が生じた。18日、米クリスチャンポスト(CP)が報じた。
キリスト教少数派に対する暴力も継続的に生じている最中、米キリスト教迫害監視団体オープン・ドアーズCEOのカール・モエラー氏はイラク国内で生じているテロリストによる攻撃について注意を呼び掛けている。16日にはイラク国内の爆撃と銃弾によって20人以上が殺される事件が起きている。
フセイン政権崩壊後のイラクを米軍が占領したことによって、イラク国内の暴動が高まり、少数派のキリスト教徒やイスラム教少数派、その他宗教少数派に対する迫害が高まるようになった。
イラクモースルに住む5万人のキリスト教徒は2003年以来シリアやトルコ、ヨルダンなどの近隣諸国に退避せざるを得ない状況に追いやられた。
モエラー氏は米CPに対し、モースルで生じている暴力は「ここ数年間生じている甚大な人権の侵害です。シリア、ナイジェリア、アフガニスタンそして昨年12月の米軍撤退後のイラクなどのスポットライトが置かれている地点の中でも、イラクは最近スポットライトの後ろ側に置かれがちになっています。しかし世界のキリスト者は継続的にイラクに住むクリスチャンの兄弟姉妹のために祈り続けなければなりません。もし私達がイラクのクリスチャンのために祈り、アドボカシー活動をしていかないのであれば、イラク国内ではクリスチャンが誰もいなくなる危機的状態に直面しています」と述べた。
最近シリアのクリスチャンはシリア史上最悪の紛争の最中で深刻な迫害を受けている。
モエラー氏によると、シリアに住むクリスチャンの一部は、当初迫害から逃れるためにイラクに亡命したという。しかし、亡命先のイラクがシリアよりもさらにキリスト教徒への迫害が厳しいことに気づくという残酷な事態に陥っているという。一方でイラクからシリアに亡命したクリスチャンも同様に再びシリアで暴力に巻き込まれてしまう状態になっているという。
近年になってイラクモースルにおけるキリスト教徒への迫害は高まりを見せているという。2008年にはモースル地域で40人のキリスト教徒がテロリストによる攻撃で殺害され、1万人のキリスト教徒が同地域から避難せざるを得ない状況となった。2012年5月にはモースル地域に住む20世帯のキリスト教家庭が同地域から去るようにとの脅迫文を受け取ったことが報告されている。
オープン・ドアーズの報告によると、イラクに残るキリスト教徒は現在34万5千人ほど存在しているものの、毎月イラク国内クリスチャン人口は減少する傾向にあるという。イラクは2012年ワールド・ウォッチ・リストで世界第9位のキリスト教迫害国に位置付けられている。
モエラー氏は米CPに対し「イラクのキリスト教とに対する迫害について何かを成す必要があります。一方イラク国内の米軍が撤退してしまったため、国務省に報告してもなかなかイラク国内のキリスト教徒迫害に対する政府声明が出されにくい状態にあります。オープン・ドアーズではイラクのキリスト教共同体にとって必要な基本的物資を提供し、霊的な支援や聖書その他キリスト教関係の書物も提供しています。しかしイラク国内のキリスト教徒が最も必要としていることは自身や自身の家族が直面した恐ろしい暴力を受けたことによるトラウマから癒されるためのカウンセリングにあります」と述べている。