米国民の大半に加入を義務付ける医療保険改革法の違憲訴訟が行われ、6月28日に連邦最高裁が合憲との判断を下した。その後7月4日の独立記念日は米国で華々しく祝われた。オバマ米大統領(50)は11月の米大統領選での再選に向けて、今回の医療保険改革法合憲が国民に対する一つの進展としてアピールしていこうとしている。
同法の合憲判決に関して、翌日29日に米ギャラップによって行われた世論調査によると、米民主党支持者のうち79パーセントが最高裁判決を支持する一方、米共和党支持者の83パーセントが最高裁判決への反対の意を示したことが明らかとなった。全国民が医療保険を受けられるようになったことに対し、オバマ米大統領は「全国民の勝利だ」と称賛する一方、医療保険に全国民が強制的に加入させられる事に対する自由の侵害、医療保険を政府が負担することによる米財政赤字増大も懸念されている。
6月28日の最高裁の合憲判断は一方で多くの米国内保守派、キリスト教指導者らに対し、個人の自由と宗教の自由に関する疑問を投げかけることにもつながった。
米保守派団体米家族研究評議会(FRC)のトニー・ パーキンス氏は、最高裁の合憲判断について「米国の家族全体に深刻な悪影響を及ぼすだろう。多くの納税者が中絶を行うための資金を提供し、米家族全体に多大な納税と借金の重荷を乗せることになるだろう」と遺憾の意を表明した。
ヘリテージ財団の国家政策研究ディレクターのジェニファー・マーシャル氏は、サラ・トーレ氏と共同で「最高裁は個人の自由を保護する機会を失っただけではなく、宗教の自由を保護することにも失敗しました」との声明を発表した。
保険改革法により、米国民全員に保険加入が義務付けられ、加入しない場合は2014年以降罰金を支払わなくてはならなくなる。なお、中絶に関しては下院通過法案では、レイプや母体が危険な場合を除き、連邦からの補助金が中絶に使われることは禁止されている。
米クリスチャンポスト(CP)では、今年の独立記念日において、改めて「自由の意味」について、米ハーベストミニストリーズ福音伝道者のグレッグ・ローリー氏、米キリスト教迫害監視団体オープン・ドアーズ代表のカール・モエラー氏、および米テキサス州プレーノーのクリスチャンで元海兵隊員のニック・シューネベルゲル氏に聞いた。
米CP:米独立記念日に際して、アメリカにおける宗教の自由が多く語られていますが、これについてお考えをお聞かせください。
ローリー氏:米国はユダヤ教とキリスト教の教義に基づいて建国されました。もちろん修正論者の中には、こういう見解が間違いであると言われる方々もいらっしゃると思います。しかし私達が米国建国の祖父の精神や、米国の諸大学がどのような精神をもとに創設されたのかを思い起こすとき、アメリカがユダヤ教とキリスト教の精神基盤を下に建国されたという事実を否定することはできません。
第一回米国議会でなされた祈りは、「天の父なる主よ、王の中の王であり、主の中の主であられる方に、すべての地の上に住む人々の上に王座を据えられるお方、すべての王国を統べ治められるお方が、私達を憐れみ、主のご加護の下、抑圧する者たちから逃げ出してきた者たちが、ただあなたに依存する国となるように願っている米国を憐れんでくださるように」という内容の祈りでした。
この祈りは、物事を解決するために、神の知恵を求め、また神の知識がもっとも確かな基盤であることを示す言葉へと続いています。血まみれの戦争を経験していた米国に秩序と調和、平和が回復され、真実と正義、宗教と敬けんな精神が確立し、人々が繁栄するように、そのすべてのことがイエス・キリストの栄光のためになされるように願ったものでした。
米CP:そのような祈りが今日も行われていることを想像できますか?
モエラー氏:米国はもともと、宗教の自由のために家族や家を捨ててもかまわないという人たちが集まって建国されました。独立記念日には、信仰を共に分かち合うべきであり、また米国の自由のために共に働き、維持してきたすべての人々と今一度米国建国の精神を振り返るべき時であると思います。
米CP:今年の独立記念日は例年の独立記念日と比べて特別な重要性を帯びていると思われますか?
ローリー氏:7月4日は私達米国民が米国の独立を記念して祝う日として制定されています。一方で米国民は私達にこのような自由を授けてくださった神に対し、私達が依存するべき存在であることも改めて認識する必要のある日であると信じています。米国の建国を振り返るとき、その国民はもともとすべてがクリスチャンがあったわけではありませんでしたが、少なくとも神の言葉を尊重し、神の言葉が一種の権威ある言葉であると信じる人々で成り立っていました。ジョージ・ワシントンは「愛国者としての特徴的な人格は、クリスチャンとしてより洗練された人格を成すものとして、誉ある栄光を返すものであるべきである」と言っています。またパトリック・ヘンリーは「この国は宗教者によってではなく、クリスチャンによって建国されました。キリストの福音の土台に立って建国されました。だからこそ他の信仰者も信仰の自由が得られているのです」と述べています。
モエラー氏:今年の独立記念日はいくつかの意味で例年の独立記念日よりも重要性を帯びていると思っています。まず第一に、世界中でキリスト教が迫害されている現実がより明らかになってきています。エジプトでは来年もキリスト教徒が市民権を失うのではないかと心配しながら暮らしています。アメリカにおいては、私達が得られている自由がどれだけ貴重なものであるかを覚えて、独立記念日を祝う必要があります。
シューネベルゲル氏:米国が神によって与えられたものであり、諸政府によって与えられたものではないことが記された独立宣言の文書から始まって、これまで私達が米国史の中で享受してきた自由を覚えて祝う大切な日が独立記念日です。
しかしながら、更に重要なことは、クリスチャンがイエス・キリストの福音の力を改めて認識し、福音が政治家というよりもむしろ米国民ひとりひとりの心を変えるのに寄与していることを認識し、経済的、霊的、道徳的な混乱が生じている米国が回復していくように祈る必要があると思います。福音だけが米国を救うことができ、神のさばきは今まさに米国に下ろうとしていると信じています。
米CP:米独立記念日に際して他に黙想するべきことはありますか?
ローリー氏:アメリカにとって唯一の希望は「霊的な目覚め」にあると信じています。米国を揺り動かすリバイバルが生じるために、今一度神に帰す姿勢が必要です。
米ハーベストミニストリーズでは、「ハーベスト・アメリカ」という全米規模のアウトリーチ活動を展開しています。8月26日にはエンジェル・スタジアムで1000教会以上の教会による大々的な伝道大会が開催され、オンラインでの生中継もなされる予定です。
モエラー氏:私達の受けている自由は簡単に得られたものではありません。米国建国の祖父・祖母たちの血の代価によって買い取られたものです。ですから、ただ自由を享受して楽しむだけではなく、すべての米国の自由を実現し、これを維持するために犠牲された方々への感謝の意を示していくことが大切です。
シューネベルゲル氏:米国が次の時代にも自由の国として存在し続けられるためにも、米国のリバイバルのために祈る必要があります。米国は今、福音に立ち変える大いなる必要があると信じています。今の米国は、パウロが訪問したギリシャとトルコのような異邦の国のような状態になってはいないでしょうか。米国内において異邦人の世界観がはびこっている中にあって、福音に沿った価値観に立ち返り、福音の教えを共有する必要がある事を感じています。
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