2009年10月に拘束されて以来、イランの福音主義キリスト教牧師ユセフ・ナダルカニ氏の死刑求刑を却下し、ナダルカニ氏を解放する活動が世界中で高まりを見せている。
米宗教迫害監視団体オープン・ドアーズアドボカシー・ディレクターのリンゼイ・ベッセイ氏は、米クリスチャンポスト(CP)の取材に対し「ナダルカニ牧師への注目度合いと同じように、世界各国で生じているすべての宗教迫害問題が注目されるべき問題です。アメリカはナダルカニ氏の迫害問題に注目を当てるのと同じように、宗教解放問題に対して世界の灯となっていく必要があると信じています」と述べている。
2012年米大統領選を控え、米オープン・ドアーズは信教の自由のための大統領誓約書を数か月前に作成した。誓約書は米オープン・ドアーズとジョージタウン大学宗教学教授のトム・ファー氏が共同で作成したという。誓約書の公式サイトでは、同誓約書の目的について「すべての米国民のための信教の自由を保護し、米国の外交政策の一環として国際社会における宗教の自由を促進させていくため」であると記されている。
米大統領選共和党指名候補争い社会主義保守派のリック・サントラム元上院議員(53)は同誓約書に誓約しており、一般国民に対し、「大統領候補者として宗教の自由を保持する米国を守る」意を明確に示している。ベッセイ氏によると、誓約書を作成した大きな理由のひとつとして「米国の国際的な信教の自由を保護する役割を改善していくこと」があるという。
欧米メディアは最近イランのナダルカニ牧師への死刑判決について、注目して報道している。ナダルカニ牧師はイスラム教国のイランを福音化しようと試み、イスラム教の神を冒とくした罪に問われ死刑判決が言い渡された。
ベッセイ氏は「ナダルカニ牧師の報道に関しては、アメリカのメディアは他の諸国を圧倒して信教の自由への注目を引きつける役割を果たしました。このことを考慮し、私たちはアメリカの外交政策として公式的に表明することができる誓約書を作成したのです。しかしこの点については、まだまだ改善の余地があります。信教の自由の問題はその他の様々な問題の背景に存在しています」と述べた。
昨年、米国際宗教自由委員会(USCIRF)の運営資金がこれまでの3分の2に減少した。米国では「宗教の自由」に関してその政策の基軸が米国の政策の中から見出されにくくなってしまってきたのではないかとの懸念の声も聞かれている。
ベッセイ氏は「とりわけナダルカニ牧師のような事件の場合は、米国が『信教の自由』を保護し、さらに世界各国を導いていく役割が特に重要である」と述べている。
ナダルカニ氏が、死刑判決を下されながらも、未だに存命している背景には、このような欧米メディアの注目があることが各紙で指摘されている。ナダルカニ氏の死刑判決が発表された直後に、米ホワイトハウスと米国務省はイランの人権濫用を糾弾する声明を発表し、その後欧米メディアの注目が高まるようになった。
ベッセイ氏は「アメリカの大統領という存在は世界でもっとも人権や信教の自由について発言するにおいて言論力のある存在であると思っています。信教の自由についてアメリカの大統領が発言しなければ、世界各国政府は信教の自由の問題を軽視してしまうことにつながるのではないでしょうか」と述べている。
ナダルカニ氏の迫害問題について、世界的注目が当てられている一方、ベッセイ氏は他にも同様に注目が当てられるべき迫害問題が多数存在していると指摘、「ナダルカニ牧師の件は数千件もある迫害問題の一件に過ぎません。ナダルカニ氏の問題が連日ヘッドラインに取り上げられていることはありがたく思いますが、他にも信教の自由が深刻に濫用されており、さらにその現実を国際社会が無私してしまっている件がたくさんあります」と述べた。