キリスト教徒の信仰を置くキーストーンともなる祝祭日が近づくにつれ、キリスト教の教義の確信「十字架と復活」に関して、挑戦状が突きつけられている。神学者らによってもともとは対して重要でないと見なされていたグノーシス主義の見方でイエスとユダについて述べられいると見なされた『ユダの福音書』がそれである。
この『ユダの福音書』と呼ばれる書物はもともと1970年に発見されて、最近英国地理学協会によって英語に翻訳された。
この福音書では、キリスト教の教義の核心となるユダのイエスに対する裏切りやイエスの十字架刑と復活という肝心なところが省かれており、そのためイエスがこの地にこられた目的を語っているマタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの4福音書に比べ、権威の劣るものであると見なされた。
テネシー州ジャクソンのユニオン大学キリスト教学教授のジョージ・ガザリー氏は、4月10日に発表された声明文で、
「ユダの福音書では私たちが新約聖書で解する内容とは全く異なった宇宙論、神学理論を提示しています」と述べたという。
ガザリー氏はキリスト教大学のその他のキリスト教研究者と同様この『ユダの福音書』と呼ばれる書物はイエスの生涯における出来事に関して『当てにならない』文献であり、『異端であるグノーシス主義』を促進しているという。
ユニオンキリスト教大学学長のグレッグ・ソーンベリー氏は、「この『ユダの福音書』はあらゆる意味でイエスとユダの現実の関係を描いたものとして信用できうる書物の形態ではありません」と述べた。
『ユダの福音書』が実際に言及されたのは2世紀の神学者エイレナイオスによってであり、当時この福音書をエイレナイオスは異端であると断言した。
ビオラ大学新約聖書学科長クリントン・E・アーノルド教授は、
「エイレナイオスはグノーシス主義者らは多くの異なる福音書や書物を書き表しており、エイレナイオスは2世紀から4世紀までのほかの全ての教会指導者同様、これらの書物を大いにイエスの生涯を語る福音書の真実を歪曲するものであると明示しています」と述べた。
グノーシス主義は初代教会時代にキリスト教教会によって異端であると非難された考え方である。グノーシス主義では救いは「グノーシス」を通して行われると主張している。"gnosis"という単語の意味は"知識"である。この考えは一世紀後半に明るみになり、4世紀まで人気のある考え方であった。
ガザリー教授は、「グノーシス主義は宇宙の神秘のインサイダーになることについて説明してます。たとえば、イエスとイスカリオテのユダとの関係を見ても、『来なさい、私はあなたに誰も未だかつて聞いた事のない神秘を教えよう』などと書かれており、イエスはまたユダにユダがイエスを犠牲にして、イエスに着物を着せる役割をすることから、ユダは他の全ての弟子たちを超越するものになるだろうと述べています。つまりイエスに対するユダの裏切りはイエス自身の要求であったとのべているのです」と説明した。
アーノルド教授は、
「『ユダの福音書』と呼ばれる書物は明らかにグノーシス主義者によってかかれた物です。その言語、考え、理論そしてその書物の中に指摘されている名前のすべてによって、熱烈なグノーシス主義提唱者によって書かれた物であることが伺えます」と述べた。
ユニオン大学のソーンベリー氏は、この書物をグノーシス主義のプロパガンダであるとし、
「言い換えてみれば、この新たに『福音書』として発見された書物はグノーシス主義者によってもたらされた数あるグノーシス主義プロパガンダの一つに過ぎません。グノーシス主義者らはイエスの肉体の復活の真実をどうにかして否定したい人々の集まりです」と述べた。
グノーシス主義では真実の神と邪悪なる神の二元性を主張している。邪悪なる神が行った悪い行いの一つはこの世を創ったことであるという。この邪悪なる神は創世記一章を通して見られる旧約聖書の神と似ている一方で、もう一つの隠された知られていない神が光の王国に存在していると主張している。グノーシス主義ではこの未知の神を明示する方法を探し、イエスは天からこの未知なる神の奥義を人々に知らせに来た存在であると信じているという。
アーノルド教授は、
「グノーシス主義者の信じるイエスは聖書で明らかにされているイエスとは全く異なっています。グノーシス主義によるイエスは世の罪の贖いのために十字架に架けられ、黄泉から肉体をもってよみがえられたとは見なされておりません。イエスは未知なる神の存在に関する高尚な知識を明らかにするためにこの世にこられ、全ての人々は彼らの内にこの神による「聖なる生気」が宿っていると主張します。この「聖なる生気」が私たちの肉に囚われており、私たちの肉から解放されて光の王国の未知なる神と再び結合することを望んでいると主張するのです」と説明した。
新約聖書教授のアーノルド氏はさらに、グノーシス主義の主張するイエスの死が重要である唯一の理由はイエスはグノーシス主義者らが悪であるとみなしている肉体から解放され自由となったことであると説明した。
サザンバプテスト神学校学長のR・アルバート・モエラー氏はユダの福音書について最初に言及した神学者であるが、モエラー氏は、ユダの福音書は実に興味深い文書であり、キリスト教共同体を理解するもう一つの選択肢を与える異端と呼ばれる宗派に関する深い洞察を提供してくれるものであると述べた。
モエラー氏はよくCNNのラリー・キング・ライブや"Dateline NBC"のようなテレビ番組にキリスト教徒の代表として出演依頼が寄せられている。モエラー氏はさらにグノーシス主義の特長について指摘し、
「『ユダの福音書は』2000年の歴史をもつ新約聖書の権威を侵害するようなものではありません。福音の真理とキリスト教徒は新約聖書、特にマタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの福音書の権威を確信し保持し続けるべきです」と結論付けた。