国民のおよそ4分の1がキリスト教徒である韓国の首都ソウルには、十字架が高々と掲げられたビルが街の至るところに点在している。それは、街のあちこちにコンビニエンスストアが建設されている日本の都市事情にそっくりだ。そんな光景を見て一人の在日韓国人が思い立った。「そうだ!ビルを建ててその中に教会を建てよう。これこそ主が望んでおられることだ」。こうして、教会の開拓を希望する者たちにビルのテナントを3年間無償で貸し出すするという「教会開拓支援プロジェクト」が、06年、在日韓国人の吉本依左生(よしもといさお)さんによって始められることになった。
吉本さんは某企業の代表取締役を務める企業人であり、敬虔なクリスチャンでもある。主イエスを受け入れるようになったのは92年10月、43歳の時だった。翌93年7月に主イエスキリスト教会(大阪市北区)で同教会主任牧師の大久保みどり師から洗礼を受けた。
吉本さんが「教会開拓支援プロジェクト」を思い立ったのは94年のとき。その年に韓国のソウル市で開催されたアッセンブリーズ・オブ・ゴッド教団の世界大会に参加し、約100万人が集まった同聖会で聖霊の御業を体験した。そのときの印象が忘れられず、日本に帰国した後も「主に喜ばれることがしたい」という思いが強く湧き上がってきたという。主の御心を求めて祈り続けていたある日、「おまえが無理なく継続できるものをしなさい」という啓示が上から降った。そのとき、ソウル市内のあちらこちらのビルに十字架が点々とかかげられていた光景が思い出され、ビルを建てて教会開拓者たちにテナントを無償で貸し出すという斬新なプロジェクトを始めようと決心したという。
それから12年後の06年、長い年月を経ていよいよ教会開拓支援プロジェクトが実行される時がやってきた。大阪府内に8棟のビルを所有するようになり、その1階または2階のテナントスペースを教会堂として無償で貸し出す準備が整えられた。同プロジェクトはあくまで新規教会開拓のための初期支援であるため、無償で貸し出す期間はイエスの公生涯と同じ3年間に限定された。「皆さま方にはその間に教会を発展させ、信徒数100人を超える教会となり、もっと大きな教会堂へと移転される事を心からお祈りいたします」と吉本さんは話す。
教会開拓支援プロジェクトには教団・教派・年齢・経験を問わず、これから教会を開拓したいと願うクリスチャンなら誰でも応募することが可能だ。期間は3年間。保証金・礼金・家賃は無料だ。応募者は申請後に吉本さんと面談し、審査を受けることになる。申し込みは教会開拓支援サイト(http://www17.ocn.ne.jp/~shalom7/)ですることができる。一方、任期満了後は無条件で会堂を明け渡すことになるという。
現在貸し出しているビルのテナントは4軒。いずれもすでに募集が終了しているか、予約済みの状態だ。先日4日には、吉本さんが所有する門真市舟田町にある9階建てのマンション・シャローム門真1階にて、エリムキリスト教会(榮義之牧師)の8箇所目の枝教会として門真エリムキリスト教会の献堂式が行われている。さらに、先月3日にも堺市の一等地にある新築マンション、シャローム堺2階にて同教会の枝教会の献堂式が行われた。
吉本さんの奉仕を賞賛する榮義之師は、「開拓伝道の志を持っている者に教会堂を3年間無償で提供したいという吉本さんの申し出に、私は驚くと同時にその深い信仰に感動を覚えました」とコメントしている。
吉本さんは、自分が立てたビルの名前の頭に「シャローム(ヘブライ語で平和の意味)」の単語をつけている。日本の救いとリバイバルを願い、吉本さんは7つのテナントを教会開拓者たちに貸し出すことを目標にしている。