桜美林大学(obirin Univ.)の元人気講師、申鉉錫(シン・ヒョンソク)牧師のコラム第11回目です。 このコラムは、韓国オーマイニュース(http://ohmynews.com/)に掲載され、当時大きな反響を呼びました。在日韓国人牧師という立場から、同師が日本宣教への夢を語ります。
◆ はじめに
聖書に「喜ぶ者と共に喜び、泣く者と共に泣きなさい」(ローマ人への手紙12:15)という御言葉がある。この御言葉は実行しやすいようで実はむずかしい。「喜ぶものと共に喜ぶ」ということは実行しやすいようであるが、人間は妬み深い者であるからとてもむずかしい。他方「泣く者と共に泣く」ことはもっとむずかしい。
◆1.日本の教会の内なる苦しみ
1教師激減の問題
キリスト新聞2004年11月27日号に掲載された「宣教師激減が顕著に」という記事は、その内容から見て今日の日本の教会の苦しみを表しているのではないか。
記事の内容は「キリスト教年鑑編集部の調査によると、2004年9月現在の日本のキリスト者数は信徒、教職を含めて113万8752人(信徒112万7363人、教職1万1389人)で、前年度より6408人増加している、しかし教職者数は362人減となり、教職の高齢化が進み無牧の教会増加が懸念される結果となった」と分析している。そして日本で宣教していた外国の宣教団体の多くが解散し、それに伴い宣教師は宣教活動を終え(筆者は挫折と考える)帰国した宣教師の数は多く、昨年(2004年)は200人にのぼるという。従って憂慮せざるを得ないのは、教会の数は若干増えたにせよ内容的には「教会数は、プロテスタント25教会増、カトリック3教会増、しかし教師数はプロテスタント286人減、カトリック76人減となっている。・・・・・・司祭の平均年齢61才、その内70代が最も多く、年令が若くなるほど人数が減少傾向にある。これはプロテスタントも同様で教職不足の深刻な状況を表している」という。
2社会に対して無力なるが故の苦しみ
日本のキリスト教は、明治時代にキリスト教会への弾圧が激しかった時にも、多くのキリスト者が毅然とした態度で信仰の戦いを戦ってきたことを知っている。二つ三つの主な出来事を挙げれば、内村鑑三先生の国旗拝礼に対する不敬事件、矢内原忠雄元東京大学総長の学者としてまたキリスト者として国の政策に抵抗して解任された事件、ホーリネス教団の若干の牧師の天皇を神とすることへの抵抗、そして投獄等、厳しい弾圧の下、体を張って戦い、地の塩、世の光となったことは周知の通りである。ゆえにその時代にはキリスト者の発言が、この世に多大なる影響を及ぼしてきたと信じている。
それゆえに今でも「ほとんどの日本人はキリスト教をいい宗教だと思っているんですよ」と国会議員土肥隆一氏は韓国人の牧師たちの前で述べられた。
ところが今日は、キリスト教への弾圧もないし、自由に宣教する事ができる時代であるのだが、日本のほとんどの国民はキリスト教に対して無関心であることが伝道を難しくする。日本国民の1%にも満たないクリスチャン人口をもってしては、この国に対して力ある影響力を及ぼすことは無理である。今やキリスト教の影響は益々薄くなり、ほとんどの日本の国民は、西洋からのキリスト教抜きの世俗的文化のみを輸入しているように見える。犯罪は日増しに増え続け、治安の行き届いた過去の良き社会は影を薄め、どこにも救いを求めるどころか見えない世の中になってしまっていると痛感する今日である。その上に、近ごろは日本全国にまたがって強い地震が起こり、大勢の人々が苦難に遭い苦しみに悶えている。
以上は日本の社会の暗い面の一部であるが、日本のキリスト教会はこのような社会を正しい方向へ導いていく力を持ち合わせているであろうか。
また日本の教会が一人で苦しむ問題であろうか。韓国の教会は苦しんでいる日本の教会に対して何が出来るのか。
◆2.隣人である韓国教会の責務
今の日本は「韓流ブーム」の中にある。日本と韓国との歴史的経緯から見て、起こりえない現象が起こっている。このような関係が一時的なブームに終わることなく、韓国と日本の友好の為に末長く持続してくれることを望んでいる。日本の教会も「韓流ブーム」の中にいるのだろうか。日本の一部の教会は確かに「韓流ブーム」の中にあるように見える。
韓国人の俳優が日本の国に「韓流ブーム」を起こしたとすれば、韓国の教会は日本の教会と社会にいかなるブームを起こしているであろうか。
筆者の見るところ、4000万人の韓国の国民の中に25%がキリスト者であるとか、一万人を越える大教会がざらに存在し、韓国の国会に200人に近いクリスチャン議員がいるとか、韓国教会のすばらしい面は一応認めるとして、今日の韓国社会が、キリスト者の影響によって浄化され、犯罪が少なくなったとか、より良い社会になったという事を残念ながら聞く事がない。かえって非難の声ばかりが聞こえてくる。このことは韓国教会の反省する点であろう。
他方韓国の教会はよき伝統と共に先人たちの信仰による底力を持っている。韓国の教会も日本の教会のように、苦しみの質は違うけれども苦しみの中に置かれている。その訳は次号に述べることにして、韓国教会から派遣されてきた在日宣教師たちの活動を紹介する事にしよう。
◆3.聖市化運動東京本部
一昨年、韓国の聖市化運動本部の要請を受けて東京に聖市化運動本部を創立した。2005年1月16日をもって2周年になるのだが、その間毎月第1と第4の週の火曜日に日本の為、また東京の聖市化のために早朝の祈祷会を続けている。
決まった日に20人前後の牧師・宣教師が集い、日本の教会のリバイバルのため、犯罪都市となりつつある東京の聖市化及び日本全国のために祈っているのである。
◆おわりに
去る2004年12月7日の早天祈祷会において、韓国から派遣されて来られた趙泳相宣教師は、説教の中で、日本のキリスト教会の教師激減の問題に触れて、今や日本の教会の教師(牧師)激減の状況の中で「私たち韓国人宣教師たちの使命は甚だ大きい」と力説された。果たして在日韓国人宣教師たちは、日本の教会と共に苦しみ得ることができるだろうか。