【CJC=東京】教皇ベネディクト16世は11月6日朝8時30分、ローマ市郊外のフィウミチーノ空港を出発、11時30分にスペインのサンチャゴ・デ・コンポステラ空港に到着、スペイン司牧訪問を開始した。空港で、教皇はフェリペ皇太子夫妻に迎えられた。
教皇は、「人間は常に真理を求める歩みの中にある」と空港での歓迎式典で述べながら、サンチャゴ・デ・コンポステーラの聖年を機会に、自分はキリストへの愛を胸に歩む「巡礼者」としてこの地を訪れたと語った。教皇は、市内を巡礼、市民と共にミサを捧げた。
ガリシア州の州都サンチャゴ・デ・コンポステーラは、キリストの十二使徒の1人、聖ヤコブの墓の上に立てられた大聖堂を中心とした街で、エルサレム、ローマに並ぶキリスト教の重要巡礼地。
同地は、現在「聖ヤコブ年」と呼ばれる「聖年」が祝われている。教皇は大勢の巡礼者たちに迎えられ、大聖堂に入った。
聖ヤコブの墓前で深い祈りを捧げた教皇は、大聖堂に集まった人々への挨拶で、「巡礼とは単にある場所を訪ね、その自然や美術や歴史に接するだけではなく、何よりも自分自身から抜け出し、神に会いに行くこと」が大切と語った。
教皇は、聖ヤコブを訪ねるその歩みを通して信仰のうちに自分自身を変容させていった数知れない巡礼者たちの群れを想起し、ここで養われた文化、祈り、憐れみ、回心が、教会や病院、宿や修道院という形で具現化されていったことを指摘した。
さらに教皇は、イグナチオ・デ・ロヨラ、アビラの聖テレジア、十字架の聖ヨハネ、フランシスコ・ザビエルなど、偉大な聖人を輩出し、現代も様々な新しいグループや活動が盛んなスペインの教会に励ましをおくると共に、この豊かな精神遺産に刺激され、スペインはじめヨーロッパが人間の正真の真理・自由・正義に基づいた、物質的追求にとどまらない倫理や社会に配慮した未来を築くことを強く要望した。
同日夕、オブラドイロ広場で行われたミサで教皇は、今日のヨーロッパに広がる世俗主義に警告を発した。
教皇は、神が人間と自由の敵であるという考えに対し、「神が愛していないのならば、神はこれらすべてを創造されただろうか」「神が人間を守ろうとしないのならば、なぜ神はご自分を啓示されたのか」と問いながら、人間は神という光のない闇の中に生きられないと強調。ヨーロッパの人々が喜びをもって神を取り戻すように、と要望した。
7日、教皇はバルセロナに移動、『サグラダ・ファミリア』の献堂ミサを行った。
ミサには、フアン・カルロス1世国王夫妻始め約30万人が参加した。教皇は、祭壇の聖別をはじめとする献堂儀式を行い、『サグラダ・ファミリア』を「バシリカ」(重要な教会の称号)と宣言した。
『サグラダ・ファミリア』は、カタルーニャ出身の建築家、アントニオ・ガウディの設計で知られる。1882年の着工から130年近く経った今も工事が続けられ、その完成は2026年を目標にしているともいわれる。
ミサの説教で教皇は、ガウディを「天才建築家」であると同時に「尊厳ある厳格な生活をおくり、信仰の灯を最後まで保った言動一致のキリスト者」と想起した。また教皇は、誕生からその自然な死に至るまでの人間の生活の基礎にある「家庭」の大切さと、愛と祈りの学び舎であるその役割を強調、今日の社会において家庭を支え、保護する必要を訴えた。スペイン政府が同性間の結合を容認したことを念頭においてのものと見られる。ただ今回はあくまで司牧訪問であることから、政治的な問題に深く立ち入ることはなかった。