パキスタンの大地震は過去最悪の自然災害といわれ、日本人親子を含む5万人もの貴い命が奪われた。現在も救援作業が続き、多くの人々が医療物資と食料の不足、劣悪な衛生環境と寒さの中で苦しんでいる。二次災害や冬季の到来への懸念から、迅速な救援活動が急務であることは明白だ。
日本のキリスト教会も支援を表明、多くの人々が経済的な支援と祈りを捧げているが、これら救済活動が被災者の助けとなり、生きる力となって欲しいと心から願う。
天災などを通して我々が学ぶことの1つに「苦難の意味」がある。人生には確かに自分でも避けて通れない苦難が存在する。もしかすると、人生は楽しいことよりも悲しいことが多いかもしれない。
だが、たとえ悲劇に見舞われたとしても、聖書の人物や歴史的キリスト者を通して、全てのクリスチャンは、逆説的な希望が有ることを見出せる。
人生で起こる苦難の根源を辿ると、それは罪から来ていると聖書は教える。罪は不法を行うことであり、神と人の関係が破壊された状態を意味する。神を捨てた人類の困窮と不安は深刻だ。神を知らずイエスを信じない人々の最も深刻な問題は、その人の存在の土台の喪失であり、存在の意味と目的を失って経験する不安と放浪だ。人生の中で経験する苦難の原因の一つはここにあると言える。
人が神と正しい関係を築き、神と人との関係が回復されるとき、人に降り注ぐ災いはもはや災いとなり得ない。苦難の意味を知るからである。むしろ苦難の中で、主イエスに召された者としての特権を発揮できるようになる。
使徒パウロは、苦難についての明快な解釈を後世に伝えた。
「神は、あらゆる苦難に際してわたしたちを慰めてくださるので、わたしたちも神からいただくこの慰めによって、あらゆる苦難の中にある人々を慰めることができます。キリストの苦しみが満ちあふれてわたしたちにも及んでいるのと同じように、わたしたちの受ける慰めもキリストによって満ちあふれているからです。」(コリント?1:4−5)
「わたしたちとしては死の宣告を受けた思いでした。それで、自分を頼りにすることなく、死者を復活させてくださる神を頼りにするようになりました。」(コリント?1:9)
使徒パウロは、苦難は自分に頼るためではなく、神を覚え神に頼るためにあり、苦難はすなわち神の慰めであると告白した。信仰によれば、苦難でさえ神に近づく機会となる。「危機こそ機会」という言葉のように、ときに神は人の危機的状況を反転させ、御手によって恵みの機会とされる。
「神との正しい関係」が「信仰」ならば、神の恵みを体験できる通路もまた「信仰」だ。神の慰め、愛、恵みは、自分の努力や業績の結果ではない。我々は神の前では常に罪人だ。我々は神を予め知っていて愛するのではない。神が我々より先に我々をご存知であられ、神の方から歩み寄り、我々が神を愛するより前に愛してくださったのだ。愛されているという事実を受け入れる「信仰」を通して、そのことを知るようになったのだ。その神の愛の故に、人間はその存在を完全なものとして保証される。
神との正しい関係は、とりなす方イエスを信じる信仰によって回復することができる。それは、「神の前でどのように献身できるか」ではなく、「神は私に何をなさったのか。神によって私はどう変わったのか」を思うことから始まる。「私が何かを行う」ことよりも、「神が私を通して行う」ことを考えるとき、我々の信仰は成長する。
人生の中で、理性では理解できない苦難があるかもしれない。しかし、苦難すらも飲み込む神の慰めがあることを、「信仰」を通して知ることができる。理性という「燃える川」を越えるとき、神との知識的な関係から信仰の関係(愛の関係)へと回復できるからだ。
困難や逆境の中にいる人々に多くのことを語ることが必要ではないだろうか。クリスチャンは試練にあうことを恐れてはいけない。多くのことを考え、多くのことを話し合い、この苦難の意味と犠牲の意味と理由を真剣に語って聞かせることは、それを経験した人にしかできないからだ。言葉ではなく共感が必要とされる。
クリスチャンは苦難を愛するべきだ。神を信じる者に生じる、あらゆる苦難を恐れず受け入れること、苦難をむしろ喜ぶこと、苦難の中で神の慰めを感じることができるなら、苦難に苦しむ数多くの人々を導き、生きる希望を与えることができるだろう。
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