昨年8月末から北部オリッサ州を中心に、キリスト教徒60人以上が殺害され、5万人以上が避難を強いられるという迫害を経験したインドでは、4月中旬から5月中旬に行われることで決定された下院総選挙を前に、キリスト教徒を含む同国の宗教少数派の権利擁護を求めるとともに、各政党らに公正な国政を行うよう要求する声明を発表した。
インドの選挙管理委員会はこのほど、任期満了に伴う下院総選挙(545議席)の投票を4月16日から5月13日まで5回に分けて実施し、5月16日に開票するという選挙日程を発表した。発表に先駆けて、インドのプロテスタント、カトリックの両派の教会指導者らは共同で今回の声明を公表、声明は今後各政党に送り届けるとしている。
声明では、「すべての政党は、宗教少数派、特にキリスト教共同体の安全を、それぞれの選挙公約の上位に位置づけるべきだ」と訴え、1947年のインド独立後60年間でキリスト教徒に対するものとしては最もひどいとされた昨年の暴動を引き起こした犯人らに対し、適切な処分をするよう求めた。
声明を発表した記者会見では、一部の教会指導者が、オリッサ州でのキリスト教徒に対する迫害を起こした犯人が未だに自由の身にあることについて、彼らが政治的な保護のもとにあるからだと指摘し、政府を非難した。
また、デリーのビンセント・コンセッサオ大司教は、キリスト教徒やイスラム教徒に対する嫌がらせは、ヒンドゥー政党の支持獲得のために、現在もインドの一部で続いていると述べ、各政党やその支持者らは、このような暴力を非難し、特にキリスト教徒やイスラム教徒のために正義と人権を同国にもたらすよう訴えた。
声明ではまた、同国では貧困層に位置する場合が多いキリスト教徒の経済的な発展を促すような政策を求め、キリスト教徒に与えられている諸権利が不足しているとして、現状を評価・改善するために特別な司法委員会を設置することも求めた。また、カースト制度において下層に位置づけられているキリスト教徒の権利回復も改めて要求した。